「或る地位に就くべき人」を定める方法としては、古来から合議と多数決という二つの方法があった。社会の対立を前提として、そこから「全体的に説得的な結論」を導いて社会の統一をもたらすために、合議は対立の解決より共同体の維持を優先することを「全体的に説得的な結論」とし、多数決は多数が支持していることをもって「全体的に説得的な結論」として対立から統一へと進める。この両方の手法を補い合う形で近代の「選挙」は発展してきた。 江戸時代まで村落の代表者を初めとして地位ある人の選出手法は合議(神判など含め)中心であった日本でも近代化の過程で選挙制度が導入されていくことになるが、選挙制度の導入の歴史は裏を返せば選挙違反の歴史ともなる。本書は選挙違反の歴史を通して近代日本社会の変容を俯瞰する一冊である。 衆議院議員選挙の違反者数の推移の変化を元に、本書では以下の五つの時期に分類している。 一期:第一~九回(189
