天国の扉はときどき開いている。目覚めるたびにそう思う。今日も開いていないようだ。おれは薄暗い一人きりのオフィスで、遺伝子組み換えの小麦を使った、添加物まみれのメロンパンをブラックコーヒーで流し込む。オールドメディアの紙の新聞を読む。そして、椅子に深く腰掛けて、昨日の依頼人のことを思い出す。 「もうこれ以上耐えられないのです、探偵さん。こんなディープステートに操られたグローバリズム社会を、子供や孫の世代に残せるっていうんですか? 探偵さん、あなたは気づいた人のように見える。私たちの仲間になれる。だから、この国の国益のために、外国資本による昆虫食の陰謀を暴いてほしいんだ!」 一介の探偵になにができるというのか。虫くらい食ってもいいだろう。しかし、依頼金はほしい。すでに前払いでけっこうな半金でもらってしまった。いつまで経っても政治家は減税しないし、消費税廃止もしない。あいつらは利権のことばかり考
