朝鮮半島や中国にルーツのある人たちを名指しして攻撃する差別コラムが「週刊新潮」に掲載された問題への批判がやまない。新潮社を巡っては、クルド人をテーマとした新書について交流サイト(SNS)で紹介した書店が差別助長の恐れを理由に謝罪し、投稿を削除する事態も起きた。 書店に並ぶ「ヘイト本」は、これまでも問題とされてきた。売れさえすれば良いのか。出版界の社会的責任が問われている。(太田理英子、山田雄之、安藤恭子)

外国にルーツのある人への差別的なコラムが「週刊新潮」に掲載されたとして新潮社に抗議し、謝罪を求めた作家の深沢潮さんが、同社との出版に関する契約を解消することが27日、分かった。深沢さんは「社として差別や人権侵害への認識に向き合わないことに、絶望しました」とコメントした。 深沢さんは2013年に「ハンサラン愛する人びと」(後に「縁を結うひと」に改題)で新潮社からデビュー。「伴侶の偏差値」などを同社から刊行している。 問題のコラムは作家高山正之さんの連載「変見自在」の今年7月31日号掲載分で朝鮮半島にルーツのある深沢さんらを「日本名を使うな」などと攻撃した。同社は8月4日、公式サイトで深沢さんに「多大な精神的苦痛」を負わせたとして謝罪。連載は8月28日号で終了した。 深沢さんの代理人によると、同社は12日付の文書で、人権侵害に当たるようなコラムを掲載する考えはなかったと釈明。深沢さん側がコラム
「週刊新潮」が掲載したコラム「変見自在」で、作家の深沢潮さんらが「日本名を使うな」などと名指しで差別を受けた問題で、深沢さんの代理人弁護士は27日、「新潮社が最後まで向き合おうとしなかった」として、…
書き手に寄り添い良い作品を共に生み出すことは私たちの重要な責務であると考えております。今回、深沢潮様の心を傷つけ、多大な精神的苦痛を負わせてしまったことをたいへん申し訳なく思っております。深くお詫び申し上げます。 いただいた様々なご批判、ご指摘は重く受け止めており、今回の出来事につきましては、出版社として自らの力量不足と責任を痛感しております。 「言論や表現の自由」は極めて重要ですが、その自由の領域は、題材や社会状況によって異なり、また時代とともに変化していくものと認識しております。 まずは私たちの編集現場がそれを常にアップデートしていかなければなりません。そのうえで、そうした変化を筆者の皆様と考えていくことも出版社の役割です。 今後は執筆の依頼をする時点および原稿を頂戴した時点で、必ず世論の変化や社会の要請について筆者に詳しくお伝えしていく所存でおります。また、人権デューデリジェンスの観
日本の漫画が世界的に人気を集める中、これまで海外で紹介される機会が少なかった日本の青年漫画を広く知ってもらおうと、大手出版社が、アメリカで青年漫画誌の増刊号を刊行し、配布することになりました。 刊行されるのは講談社の青年漫画誌の増刊号となる「ヤングマガジンUSA」です。 日本では高い年齢層の読者を想定した青年漫画が広く読まれていますが、アニメ化されるなどして人気の少年漫画に比べて年齢制限もあり、海外ではこれまであまり知られていませんでした。 刊行される雑誌はおよそ1000ページで、表紙は「攻殻機動隊」の作者、士郎正宗さんが手がけ、「頭文字D」で知られるしげの秀一さんの新作など、現地で好まれる「SF」や「ダークファンタジー」のほか、「LGBTQ」をテーマとした社会派のものなど合わせて20作品が掲載されています。 専門のチームがおよそ2か月かけて翻訳や校閲にあたったということで、青年漫画誌の海
王谷晶の『ババヤガの夜』(河出書房新社)の英訳「The Night of Baba Yaga」(サム・ベット訳)が英国推理作家協会(CWA)のダガー賞翻訳部門を受賞した! 王谷晶さん、サム・ベットさん、おめでとうございます。 なんと胸のすく受賞だろう。 しかも日本からのもう1作の候補作、柚木麻子の『BUTTER』の英訳(ポリー・バートン訳)も僅差で競ったようだ。イギリス最高峰の翻訳ミステリーの賞レースを日本の、女性作家の、犯罪小説が席巻したと思うと心が躍る。2作とも女性同士の関係やきずなを描いたクライムノベルだ。本当に、本当に、ほんの10年前には考えられなかった展開だろう。 それぐらいこの10年間で英語圏の翻訳文学事情は一変した。このことについては後述する。 さて、刊行時からの「ババヤガ」ファンとしては心から嬉しい。さらに翻訳者もノリにのっているサム・ベット、翻訳の腕前はもとより、英米出版
英語版『The Night of Baba Yaga』 日本時間7月4日(金)早朝、英国推理作家協会(CWA:The Crime Writers’ Association)は、2025年のダガー賞〈翻訳部門〉(Dagger for Crime Fiction in Translation)の受賞作として、王谷晶『ババヤガの夜』英訳版(The Night of Baba Yaga)を発表した。 翻訳はサム・ベット、出版社はFaber & Faber(2024年9月刊)。本賞は、世界で最も権威あるミステリー文学賞のひとつであり、今回の王谷の受賞は日本人として史上初、アジアの作家としても史上2人目の快挙となる。 本作は、2020年「文藝」秋季号の特集「覚醒するシスターフッド」にて全文発表され、同年10月に単行本化、2023年5月に文庫化された。日本国内の部数は、単行本/文庫/電子書籍累計で3万8
漫画家に限らずですが、若く忙しく仕事をしてた時代がいつだったら 幸せだったのかというのは簡単に言い切れるもんではないですね。 私の場合で言いますとピークで仕事をしていたのが1990年代だったことは結構な幸運であったと思います。 とにかく本が出る。紙の本が当たり前の時代、自作が単行本化されるというのは職業漫画家にとって収入はもちろんですがそれ以上の多幸感があったことは確かです。 漫画というのは他者に読まれてなんぼ、つまり印刷されてなんぼ。前回の生原稿絡みでも書きましたが、原稿というのは不完全な状態なんです。 90年代、私はまだキャリアも浅い身でありながら自作の単行本化に恵まれました。それが当たり前くらいの気持ちでしたし部数もそれなりの数が出ていました。すでにバブル崩壊と言われた時代になってましたが出版界はまだ好景気の余韻が残っていた印象でした。 そして単行本が発行されると作家に献本として何冊
公正取引委員会の看板。公正取引委員会などが入る中央合同庁舎第6号館B・C棟で=東京都千代田区霞が関で2019年、本橋和夫撮影 フリーランスで働くライターやカメラマンらに仕事を委託する際、取引条件を書面で明示しなかったり、報酬を法定の期日までに支払わなかったりしたとして、公正取引委員会は17日、「小学館」(東京都千代田区)と「光文社」(同文京区)の大手総合出版2社のフリーランス取引適正化法違反を認定し、再発防止を求める勧告をした。 公取委による同法違反の勧告は初めて。同法は企業や団体と雇用関係になく、取引上の立場が弱いとされる個人事業主(フリーランス)を保護するため、2024年11月に施行された。
大手出版社の「小学館」と「光文社」が、業務を委託していたフリーランスのライターなどに報酬の額などの取り引き条件を明示しなかったとして、公正取引委員会は再発防止などを求める勧告を行いました。去年11月にフリーランスを保護する法律が施行されてから勧告が出されるのは初めてです。 フリーランスで働く人が安心して働ける環境を作るため、去年11月、新たな法律が施行され、業務を委託した事業者に対して書面などで報酬額や支払い期日といった取り引き条件を直ちに明示することが義務づけられたほか、業務委託の期間が1か月以上の場合は通常よりも報酬を著しく低くする「買いたたき」などの行為が禁止されました。 公正取引委員会によりますと、「小学館」は、去年12月の1か月間、月刊誌や週刊誌の原稿の作成や写真撮影を委託しているフリーランスのライターやカメラマンなど191の事業者に対し、報酬の額などを書面やメールで明示しません
古藤日子『ぼっちのアリは死ぬ――昆虫研究の最前線』(ちくま新書) 孤立したアリが、なぜ早死にするのかに迫った1冊の新書が発売となり、話題を集めている。国立研究開発法人産業技術総合研究所で、アリの社会性研究を進める古藤日子氏による『ぼっちのアリは死ぬ――昆虫研究の最前線』(ちくま新書)だ。 ミツバチやシロアリなどと同様、集団を作り社会的構造を備えながら分業を行って生活している社会性昆虫のアリ。本書は、孤立したアリの「すみっこ行動」の謎を、実際の写真や図解を差し込みながら紐解いていく。 2010年に東京大学大学院博士課程を終了後、2011年から13年までスイスのローザンヌ大学に留学し、“アリ”と出会った古藤氏。実は「予定していた研究テーマがうまくいかなくて」始めたテーマだったとか。それが今や「宝箱みたいな生き物です」と語る古藤氏に話を聞いた。 古藤日子氏 ――「群れから離されたアリが死ぬ」こと
(CNN) 今年7月に大災難が起きるという漫画の「予言」を根拠として、日本行きをキャンセルしたり延期したりする外国人観光客が急増している。 地震予知は事実上不可能とされている。日本は相当大きな地震にも持ちこたえてきた実績があり、国民は大地震が起きるかもしれないという前提の下で暮らしている。 しかし大地震への恐怖をあおる投稿がSNSで拡散する中、特に東アジアの観光客の間で不安が増大した。 きっかけは、たつき諒さんの1999年の漫画「私が見た未来」。同作品は、2011年3月の大災害を「予言」して、実際に同月、東日本大震災が発生した。 21年に出版された同作品の「完全版」は、「本当の大災難は2025年7月にやってくる」と主張する。 同時に日本と香港の風水師が同じような発言をしたことで、ネット上で根拠のないパニックが広がり、訪日客のキャンセルが相次いだ。 香港の旅行会社WWPKGによると、4月のイ
23日午後3時現在の三笠書房のホームページ。書影の肩書が「心理カウンセラー」に変更されている=スクリーンショットより 発達障害の当事者を動物のイラストで表現して「職場の困った人」として取り上げ、発売前にSNS(交流サイト)上で批判が殺到した書籍「職場の『困った人』をうまく動かす心理術」(三笠書房)について、出版社が著者の肩書を修正した。24日にも通販サイトなどで発売される。 この書籍を巡っては、12日に著者の神田裕子氏が書籍見本をX(ツイッター)上に投稿したことをきっかけに、批判が噴出した。表紙や目次などで、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)の当事者を職場の「困った人」と表現し、ナマケモノなどの動物のイラストで記載している。当事者団体が「差別的表現が含まれている」として抗議声明を発表。発売差し止めを求める署名活動も起きている。 毎日新聞が18日までに入手した発売前
発達障害を扱った書籍が大炎上 SNSを中心に、ここ2-3日の間、発達障害を扱ったある書籍が発売前だというのに大炎上している。それは、著者が宣伝のためにSNSに上げた写真やオンラインショッピングサイトなどで、書影や書籍の一部が見られるようになっており、そのタイトル、帯の文句、書籍の一部や目次などに問題のある記述が山積していたからだ。私自身もそれを見て、驚愕した。 SNSには批判コメントがあふれかえり、一般のSNSユーザーだけでなく、メンタルヘルスの専門家、発達障害の当事者団体、専門書を扱う出版社なども軒並み批判コメントをしている。 何が問題なのか あえて書名や著者名を出すことは控えるが、当該書籍の何が問題なのかを挙げてみる。まず、この本は発達障害に限らず、愛着障害、トラウマ障害、その他の疾患などを抱えた人々を「職場にはびこる困った人」と一括りにし、「イライラ、モヤモヤさせられる困ったさん」に
神田裕子著の『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』(三笠書房)について ブログ2025.04.18 2025年4月18日 一般社団法人 日本自閉症協会 会長 市川 宏伸 4月22日発売予定の新刊「職場の『困った人』をうまく動かす心理術」(三笠書房)は障害に対する誤解を生み、差別や偏見、分断を助長するものと判断します。このような本を、90年を超える歴史がある三笠書房が発刊されることは誠に残念です。 現在、この本は表紙と帯、および目次をネット上で見ることができますが、それでも差別や偏見を助長すると判断する理由は以下の通りです。 ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如多動症)の発達障害を一方的に「困った人」として扱っていることは誤解を生みます。障害名を人のタイプに結び付けているために障害に対する誤解を生むとともに、表現されている特徴を有する人を障害者とする偏見をも生みます。ASDの
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