猫はなぜ人間に完全には懐かないのか?家畜化の歴史をたどるとわかった意外な理由写真はイメージです Photo:PIXTA

犬は飼い主に従順だが、猫はどこかツンデレなところがある。この差は、単なる犬猫の性格の違いではない。猫が家畜化されてきた歴史をたどっていくと、人と一定の距離を保ち続けてきた理由が見えてきた。猫と人間の奇妙な関係に迫る。※本稿は、動物行動学博士のサラ・ブラウン著、清水由貴子訳『ネコの言葉を科学する』(草思社)の一部を抜粋・編集したものです。

いま飼われているイエネコは
すべてヤマネコから進化した

 猫はいったいどこで生まれたのだろうか。

 こんにちのイエネコの祖先が明らかになったのは、ここ20年ほどのことだ。それ以前は、およそ3500年前の古代エジプトの墓や神殿に描かれた美しい猫の絵から、当時、猫と特別な関係が築かれていたということしかわからなかった。

 椅子の下や人間の膝に座っている様子によって、最初に猫を飼いならしたのは古代エジプト人だったという仮説が成り立つ。だが、彼らはどの「猫」を飼っていたのか。猫の家畜化が行われていたのは古代エジプトだけだったのか。

 こうした疑問に答えるための第一歩は2007年に踏み出された。すべてのネコ科の動物のDNA解析が行われ、8系統に分類されることが判明したのだ。いずれも共通の祖先であるプセウダエルルスから分岐したものだが、その時期は異なる。

 最初は1000万年以上前に生まれたヒョウ系統(ライオンやトラなど)で、最後に誕生したのが、さまざまな種類の小型のヤマネコを含むネコ系統だった。DNA解析の結果、イエネコはこのネコ系統に属することが明らかになった。

 イエネコはこのヤマネコの1種もしくは複数の種から進化したものと思われていた。それを特定したのが、オックスフォード大学のカルロス・ドリスコルを中心とする研究チームだ。