東日本大震災と、その後の原発事故により大きな被害を受けた福島県・浜通り。一度は失われてしまった暮らしや文化は今、再び輝きを放ち始めています。ただ元に戻るだけではない、新しいカルチャーが生まれる浜通りをめぐります。今回は双葉エリアの現在の風景と暮らしをお伝えします。
浜通りとは?
福島県東部、太平洋に面した地域と山間地域にある13市町村を指す通称で、雪が少なく一年を通じて温暖な気候が特徴。北部の相馬、中部の双葉、南部のいわきの3エリアに大きく分かれる。東日本大震災および東京電力福島第一原子力発電所の事故により、双葉エリアの8町村と飯舘村、南相馬市の一部を中心に多くの人が避難生活を余儀なくされた。
双葉エリア 川内村
復興するだけでは間に合わない。新しい魅力を模索し続ける人々
福島県浜通り。2011年3月11日のあの日から、私たちは何度その地名を耳にしてきただろう。
浜通りは福島県の東側にある13市町村を指す通称。東北地方の中では雪が少なく、海と山の幸に恵まれた豊かな地域だ。その美しい場所は、震災とその後の東京電力福島第一原子力発電所の事故により一変。
原発から近い双葉エリアの8町村では全住民が避難を余儀なくされた。「復興」の文脈で語られることが多いその土地には今、どんな風景と暮らしがあるのだろうか。自分の目で確かめてみたくて、秋の浜通りを旅した。
「10年経ってやっとここまできました」。
愛おしそうにブドウに触れる遠藤一美さん。阿武隈高地の中央部に位置する川内村の役場に勤め、復興事業の一環としてワイン造りを統括してきた。
震災後、約1年の全村民避難を経て、15年にブドウ栽培用の圃場を選定。翌年、約2000本のブドウの苗木を植えた。21年には醸造所〈かわうちワイナリー〉が完成し、ワイン造りを開始。国内のワインコンクールで高い評価を得るまでになった。
「震災後、村の過疎化速度は10倍ほどになりました。復興、つまり元通りにするのでは間に合わない。魅力ある場所として生まれ変わらなければ村は消滅してしまう。そんな危機感からワインに賭ける気持ちが生まれました」と遠藤さん。ワイナリーにはワインを求めて地元の人々が次々とやってくる。
「福島は酒といえば日本酒。ワインに馴染みがなかった村の方が地元のワインを愛してくださることが嬉しいですし、大切なこと。近年は移住者も増え、活気が出てきました」
かわうちワイナリー
福島県双葉郡川内村大字上川内字大平2-1
電話0240-25-8868
営業時間:9時~17時
定休日:木・土・日