建設中の大間原発(青森県大間町)の建設差し止めなどを市民が求めた訴訟で、控訴審の口頭弁論が29日、札幌高裁であった。終了後に、原告の1人で、2月に76歳で亡くなった「大間原発訴訟の会」代表の竹田とし子さんを追悼する会が行われた。原告らは、穏やかながら、原告団をまとめる芯の強さを持った竹田さんの人柄をしのんだ。

 竹田さんは1986年のチェルノブイリ原発事故を機に原発問題に取り組んだ。大間原発建設地の30キロ圏内に市域の一部が入る北海道函館市で2006年に訴訟準備会が発足すると、代表に推された。10年7月に函館地裁に提訴してから、計6回法廷に立ち、意見陳述した。

 追悼会では、にこやかな竹田さんの写真が置かれた。

 北海道大学名誉教授の小野有五さんは「声を荒立てることなく『大間原発は大まちがい』と静かに訴え、たくさんの人を仲間にしてきた」とたたえた。リコーダー仲間でもあった函館市の加納栄利子さん(75)も「私がかっとなっても、いつもなだめてくれた。でも『断固やる』という一言を内に秘めていた」と振り返った。

 弁護団共同代表の河合弘之弁護士は「彼女がつくってきた運動の強さは、彼女の死で崩壊するようなものではない。この裁判は平穏に生活していく権利を守る大事な闘いだ」と勝訴を誓った。

 弁論では、原告の1人で、東京電力福島第一原発事故で被災した福島市の小池光一さんが意見陳述。「20年にわたって有機無農薬で耕してきた農園の安心安全は、降ってきた放射性物質により一瞬にして消滅してしまった」と訴えた。弁護団は、司法が福島第一原発事故を防げなかったとして、「国民の生命や身体の安全を守るため、今度こそ厳格な司法判断を行って、次の福島事故を防がなければならない」と求めた。(野田一郎)