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「逃げることも勇気」TikTokが届ける、不登校生たちの心の声

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2025.09.12

PR by TikTok Japan
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TikTok Japanが主催する「不登校生動画甲子園」は、不登校を経験した若者たちが、自らの思いや価値観をショート動画という形で社会に届けるプロジェクト。2025年で3年目を迎え、多くの参加者が動画制作を通じて自己を見つめ直し、自信を取り戻し、他者とつながるきっかけをつかんでいる。不登校は「問題」ではなく、「ひとつの選択肢」。そのことを多くの人に知ってもらうための挑戦が今、大きなうねりになろうとしている。

たった1分間に込める若者たちの思い

「自分の気持ちを伝えるためにすごく頑張って作った動画なので、受賞して本当にうれしいです」。最優秀作品賞を受賞し、壇上で喜びを語る中学3年生・15歳のひなさん(写真上)に温かい拍手が降り注いだ。

夏休み終盤に差し掛かる824日、神奈川県・横浜市開港記念会館講堂にて「不登校生動画甲子園 2025」の表彰式が開催された。2023年にスタートし、3回目を迎えた本大会。今年2025年は「不登校で見つけたこと」をテーマとし、不登校を1日でも経験したことのある13歳以上20歳未満の個人またはグループを対象に1分以内の動画を募った。

その結果、昨年の2倍近くに相当する432本の作品が集まり、会場では最終選考に残った8作品がスクリーンに映し出された。上映作品の制作者、不登校の当事者や経験者、その家族らをはじめ、オンライン参加を含む100名を超える参加者が、8名それぞれの思いを1分間に詰め込んだショート動画に熱い視線を送った。

最優秀作品賞を受賞したひなさんの作品は、同級生から受けた容姿を罵られるなどのいじめが原因で不登校や自暴自棄に陥るも、大好きな「絵を描くこと」に逃避することで幸せを見出せた、という実体験を伝える内容。多彩な映像と音楽を重ね合わせる表現の巧みさが際立つ一方、本人の語りとテロップによる「何気ない一言で人は飛び降りるかもしれない」「相手は責任なんて取らないんでしょ」という痛切なメッセージが胸を突き刺す。

<ひなさんの動画作品はこちら>

動画プラットフォームが持つ子どもたちの「出番」としての可能性

文部科学省が20241031日に発表した「令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」によると、2023年度の小・中学校の不登校児童生徒数は約346000人に上り、11年連続で過去最多を更新している。

「不登校の児童が増えている原因は3つあると考えられます」。そう話すのは、不登校ジャーナリストの石井しこうさん。中学2年生から不登校となった自身の経験を活かし、不登校の子どもや若者、親など400名以上に取材を行う不登校問題のエキスパートであり、「不登校生動画甲子園」発起人の一人だ。

不登校生動画甲子園の表彰式で講評する石井しこうさん

石井さんが挙げた原因の1つ目は「コロナ禍」。生活様式・学習環境の変化が子どもたちにストレスを与え、その影響は今なお続いているという。2つ目が「不登校の認知度向上」。無理に通学・復学を勧めて子どもを追い詰めることのないよう、配慮する保護者が増えたという比較的ポジティブな要因だ。

3つ目が「生きづらさの低年齢化」。先述した文科省「児童生徒の問題行動・不登校」調査の結果における「学年別いじめの認知件数」を見ると、最もいじめの認知件数が多いのは小学2年生の116234件で、トップ3を小13の小学校低学年が独占している。いじめの問題に加え、昨今では英語やプログラミング教育の早期化により、小学校入学前後の段階から勉強につまづく子どもも多いことから、不登校になる低学年の児童が増加傾向にあるとされている。

こうした不登校問題の実態を調べるために当事者へのインタビューを重ねる中で、石井さんは「不登校の子どもたちが健全に学び育つ環境に必要なのは、居場所と出番ではないか」と考えるようになる。

「居場所」とは、安心してありのままでいられる自宅以外の場所のこと。その役割は通信制高校やオンラインフリースクールなどが担っている。一方の「出番」について、石井さんは「社会の中での役割・仕事など自分にしかできないこと」と定義。この不登校児童にとっての「出番」の少なさが、「不登校生動画甲子園」を立ち上げるきっかけになったようだ。

「幸せを感じられるかどうかは、社会の中で出番があることがカギになります。不登校の子たちは出番があまりなく、これまで学校に戻ることくらいでしか得られませんでした。そこで、不登校を一つの個性と捉え、その個性を活かせる出番を作りたいと考えて『不登校生動画甲子園』を企画したわけです」

では、なぜ個性を発揮する場に動画プラットフォームを選んだのか?--石井さんは「今の10代にとって動画プラットフォームは可能性の塊なんです」と続ける。スマホ一台あれば自分を自由に表現でき、似た境遇の同世代と交流したり、悩みを分かち合ったりすることもできる。それによって自分が生きている価値を知り、『この世に存在していいんだ』と自己肯定につながる可能性があると説く。また、大会を開催するにあたり、数あるプラットフォームの中で「TikTokが良いと思っていた」とのこと。その理由とは。

「まずは多様な表現ができる点がいいですね。絵を描く子はその様子を映すだけでも動画になるし、音楽やショートドラマを表現することにも適している。それに、誰もが持っているスマホで手軽に映像を制作できることも魅力だと思います。入り口のハードルが低いのに奥行きがあり、どんどん自分の考えやアイデアを打ち出していける。そんな動画プラットフォームとしての特性が、不登校生動画甲子園にぴったりだと感じました」

TikTokだから実現できる多様性理解のための場

石井さんの思いにTikTok Japanも呼応する。TikTok2017年に日本でのサービスを開始以来、多種多様なコンテンツが投稿され、動画プラットフォームとして成長し続けている中で、TikTokが社会の中で担う役割も変わってきたと、TikTok日本広報責任者のサーカー壽梨さんは話す。

取材に応じるTikTok日本広報責任者のサーカー壽梨(じゅり)さん

「サービスが拡大して以前と比べ多くの方に知っていただけている今、TikTokでは動画プラットフォームとしての責任をあらためて自覚し、『私たちにできる社会貢献は何なのか』を考えて様々な施策を展開しています。たとえば、20229月~10月には「世界メンタルヘルスデー」に合わせて自殺予防・メンタルヘルス啓発キャンペーン、202410月には選挙における偽・誤情報への対策をテーマにした啓発TikTok LIVEなどを実施しています。『不登校生動画甲子園』もそういった取り組みの一つです。不登校を経験した児童生徒の方たちが安心・安全に自己表現できる場所を提供したいという思いから、石井さんたちと連携し、大会を運営しています」

大会の表彰式は3年連続で8月の後半に開催。子どもたちにとっては長かった夏休みの終わりが近づく物憂げな時期だ。このタイミングで行うのには明確な理由があるという。

「厚生労働省発表の『自殺対策白書』によれば、18歳以下の日別自殺者数が最も多いのは91日とされています。また、夏休み明けは新たに不登校になる生徒が多いとも言われています。こうした現状を踏まえ、大会の参加者やそのご家族はもちろん、学生をはじめとしたユーザーの方たちにも不登校の子どもたちが届けたいメッセージを見てもらい、少しでも勇気や気付きを与えられたらと考えて毎年夏休みが明ける直前に開催するようにしています」

変わらないこともあれば、今年から始めたこともある。それが「特別審査委員制度」だ。年齢的にエントリー条件外の不登校経験者や当事者、その関係者などが気軽に大会にかかわれる方法はないかと考えた結果、実現したという同制度。実際に募集をかけたところ、想定の100名を超える120名が集まり、そのうちの有志70名は表彰式に先立ちオンラインで行われた検討会議に参加した。さらに特別審査委員は、表彰式にもリアルおよびオンラインで出席し、審査委員と共に最優秀作品賞を決める投票も行った。

検討会議を振り返り、サーカーさんは手ごたえと気付きを口にする。

「検討会議ではそれぞれの『推し作品』を持ち寄っていただきました。活発な議論が交わされ、そこであがった意見を加味した上でファイナリスト8名が選ばれており、大変有意義なものになったと思います。また、会議に参加された、過去に不登校だった息子さんを持つお母様から『動画を見てあの時の息子の気持ちがようやくわかりました』というお言葉をいただいたことも印象に残っています。不登校の子たちが抱える家族にはなかなか話しにくいリアルな思いも動画を作ることを通してであれば表現し、発信できるということにあらためて気付かされました」

日本において不登校は、ときにネガティブな文脈で語られることもある。しかし、TikTok Japanの考えは違うという。

「わたしたちは、不登校をネガティブとは捉えていませんし、ポジティブにしていきたいとも考えていません。不登校はあくまで一つの経験であり、一つの選択肢だと考えています。その上で『不登校生動画甲子園』では、10代の多感なお子さんたちがどういった選択を取っているのか、どういった思いを抱えているのかを考えていただく機会を提示し、多様性の理解につなげていければと思っています」

誰もが投稿者になれるからこそ起こるクリエイティブの連鎖

「この大会があったから、自分を表現することが大好きだと感じられるようになりました」。今回の「不登校生動画甲子園 2025」最優秀作品の受賞者であるひなさんは、3年連続で大会に出場する中で動画を作ることの楽しさに目覚め、現在では映像制作の仕事に就きたいと夢を持つようになったという。さらに、現在通うフリースクールの仲間たちとの交流を深め、彼らと共に来年から高校へ通うことも決めたとのことだ。

最優秀作品賞を受賞し、ステージで感想を話すひなさん

ひなさんは、現在学校に通えずに悩み苦しむ同世代に向けて優しく、そして力強いメッセージを送った。「私は逃げた人はカッコいいと思っています。逃げることも勇気がいるし、周りからも否定されるから。不登校になって辛い思いをたくさんするかもしれませんが、逃げることがいつか人生の一部になり、逃げることで自分にも他人にも優しくできるようになるはずです。だからあまり思いつめないで。休むことも必要だし、学校だけがすべてじゃない。その辛い経験も10年後には笑って話せるようになっているかもしれないから」とまっすぐなまなざしで語りかけた。ひなさんが作品の中で発した「幸せになれるように逃げ道を作った」というメッセージを、まさに多感な10代の多様な生き方の一つを示したと言える。

ちなみに、最初に動画を作ろうと思ったきっかけについて尋ねたところ、(シンガーソングライターの)大森靖子さんに憧れていて。歌やPVが大好きで、大森さんみたいに作ってみたいと思いました」と少しはにかみながら教えてくれた。

今年の「不登校生動画甲子園 2025」では、過去の大会出場者が投稿した優秀作品を参考にしたと思われる動画も散見されたという。一つの作品がまた次の作品の呼び水となり、どんどん広がっていく連鎖は、視聴者であると同時に容易にクリエイターにもなれるTikTokならではだ。ひなさんをはじめとした今回の大会出場者が投げかけた心の声。それは、部屋で一人ひざを抱える誰かを励まし慰めるとともに、「自分もやってみよう」という勇気ある一歩にも繋がっていく。

「不登校生動画甲子園 2025」公式サイトでファイナリストの動画作品もご覧いただけます。
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