ANALYSIS

【分析】トランプ氏にノーベル平和賞受賞の可能性がある理由

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ノーベル賞受賞者に授与される金製メダルのレプリカ=2021年12月9日、ノルウェー・オスロのノーベル平和センター/Odd Andersen/AFP/Getty Images

ノーベル賞受賞者に授与される金製メダルのレプリカ=2021年12月9日、ノルウェー・オスロのノーベル平和センター/Odd Andersen/AFP/Getty Images

(CNN) トランプ米大統領はノーベル平和賞受賞への意欲を公言している。同氏の支持者らは十分にその資格があると主張するが、反トランプ派は一笑に付し、受賞できない理由として、物議を醸しがちな同氏の政策を挙げる。

トランプ氏は21世紀最悪の紛争のうち二つ、つまりパレスチナ自治区ガザ地区とウクライナでの戦争を引き継いだ。そのどちらも今、解決の大枠が視野に入っている。トランプ氏とそのチームが和平を実現できるかどうかはそれほど明確でないが、もし実現できた場合、ノーベル委員会はその成果を認めて本人が熱望するメダルを授与する可能性があり、その可能性はかなり高い。

まずウクライナから見ていこう。

これまで9カ月にわたって政策の迷走が続き、夏の間にプーチン・ロシア大統領やゼレンスキー・ウクライナ大統領、欧州首脳らとの会談があり、ロシアの攻勢は占領地を拡大できずに2万人超の死傷者を出す悲惨な結果に終わった。その末にようやく、合意の形が現れ始めているようだ。合意の主な要素は2点ある。

一つ目は安全の保証。米国と北大西洋条約機構(NATO)加盟国がウクライナ軍を支援し、将来受ける侵攻に対して領土を防衛できるようにする。

二つ目は一部領土の交換。ウクライナ東部の戦線沿いでしっかりとした国境を改めて確定し、より長期的な和平の条件を定める。

合意を達成するには、米国とNATOがウクライナに対し、防空システムや長距離ミサイルなどを長期的に供与し続けなければならない。ロシアへの制裁や経済的圧力を強化する必要もある。トランプ氏は最近、米ニューヨークでの国連総会の後、米国製の武器をNATOが購入してウクライナに供与する枠組みを承認し、このアプローチを支持する姿勢を示した。

欧州諸国の間では初めて、3000億ドル(約46兆円)に上るロシアの凍結資産を活用し、ウクライナに融資する案が協議されている。戦争が今も続くなかで、ウクライナの経済、防衛基盤が持ちこたえるよう支援するためだ。

米ホワイトハウスがこのように今までより強気のアプローチを維持すれば、プーチン氏が最終的に合意に応じ、体面を保つしかない状況に追い込まれる確率は上がる。

トランプ氏がロシアへの圧力を維持しつつ、戦争を終結させる合意の形成に努めれば、今から1年後、ノーベル委員会が2026年の受賞者を選ぶ時までに、合意が成立することはあり得る。

ガザでの戦闘終結

トランプ氏は就任時にバイデン前政権から、ガザでの恒久的な戦闘終結に向けた3段階の停戦合意を引き継いだ。第2段階では暫定的な治安、政治機構や、大規模なガザ再建計画が想定されていた。

だが停戦は第1段階の後、3月にあえなく崩壊した。それ以降の6カ月間に、イスラエル軍はこれまでにないほどの激しさで作戦を展開し、ガザ封鎖に踏み切って人道危機を招いた。

2週間前の時点で、ノーベル賞獲得の可能性はガザの状況からみて疑わしいと思われた。

交渉は行き詰まり、イスラエルは正当性が疑問視されるガザ市とガザの北部4分の1の制圧作戦に乗り出していた。イスラエル当局の高官らはさらに、ガザを占領してイスラエル人を入植させ、同時にガザ住民を追放する構想を打ち出した。

状況は悪化の一途をたどっていた。

それが先週になって一転。トランプ氏が20項目の和平案を発表し、イスラエルがガザを併合あるいは占領しないこと、イスラム組織ハマスはガザ統治に関与せず、人質全員を生死にかかわらず引き渡すことを求めた。1月の停戦合意の第2段階に似た内容で、イスラエルが受け入れを表明し、サウジアラビア、カタール、エジプト、ヨルダン、トルコ、パキスタン、インドネシアも支持している。

筆者は今までこの問題に取り組み、このひどい戦闘で1月の合意を含め2回だけ成立した停戦の主導に協力してきた。その立場から、トランプ氏とウィトコフ中東担当特使、クシュナー元大統領上級顧問らのチームがこの計画をまとめたこと、これほど幅広い国々から支持を得るための外交に従事したことを、筆者はたたえる。

ハマスが戦闘終結後にガザ統治を続けられないこと、ガザの治安回復と、20年近くガザを支配してきたハマスに代わる新たな統治体制の確立には米国主導の国際努力が必要だということについては、すでに意見が一致している。

ハマスは先週、和平案に条件付きで同意した。現在エジプトの首都カイロで、人質解放やパレスチナ人拘束者との交換に向けた協議が進んでいる。筆者の予想では、ハマスは交渉の引き延ばしを図り、武装解除やガザの治安維持から手を引くという条件を拒否するとみられる。だがトランプ氏は4日、遅延は容認できないとSNSに書き込んだ。こうしてハマスに対し、さらにイスラエルに対しても圧力をかけ続けるのは、適切な動きだ。

イスラエルにも果たすべき務めがある。同国がガザ再占領や再入植の計画を放棄すること、「パレスチナの自決と国家樹立への信頼性ある道筋」をつけるというトランプ氏の計画を受け入れることは、どんな長期的提案にも不可欠だ。

要するに、米国はこれまでにガザの戦闘終結と、イスラエル・パレスチナの長期的な共存、平和の大筋を描いた。多くの条項は大まかな原則だが、条件は明確だ。ハマスは多くのパレスチナ人拘束者の釈放と停戦、イスラエル軍の撤退と引き換えに、人質全員を引き渡してガザ支配を放棄しなければならない。この恐ろしい戦闘を止めたいと思う人ならだれもが今、ハマスに遅延なく条件を受け入れるよう呼びかけるべきだ。

トランプ氏のオスロ行き切符

ノーベル平和賞は毎年、1896年に死去したアルフレッド・ノーベルの命日、12月10日に授与される。ノーベル委員会はその2カ月前の10月10日に受賞者を選ぶ。トランプ氏が今週、同賞を獲得できるかもしれないと思っているのは間違いないが、その可能性は非常に低い。しかしノーベル賞が125周年を迎える来年、トランプ氏が受賞する可能性は十分にある。

筆者は以前のコラムで、2026年が統合と安定の世界か、あるいは混乱や紛争の拡大かの入り口になると書いた。ガザとウクライナの戦争は試金石だ。解決すれば中東ではイランの野心、欧州ではロシアの野心がそれぞれ抑止され、両地域の各地で統合と相互のつながりが強化される。その戦略的な波及効果によって、台湾をめぐる紛争のリスクも軽減される。

トランプ氏とそのチームが両方の戦争を終結させる枠組みを確立したことは、称賛に値する。もしも同氏らが最後までやり通し、今後1年間に気を抜くことがなければ(そこは大いに疑問だが)、トランプ氏は創設125年目を迎えるノーベル平和賞の受賞者になることを確実に要求できるだろう。

トランプ氏とトランプ政権についてどんな感想を持っていても、戦争と平和をめぐるこれら二つの最も本質的な問題については、だれもが同氏の成功を願ってしかるべきだ。

本稿はCNNのグローバル問題アナリスト、ブレット・H・マガーク氏による分析記事です。

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