1坪で月100万円稼ぐ 繁盛店の作り方』(東口浩二 著、白夜書房)の著者は、まったくゼロの状態から飲食業界に飛び込んだという人物。約10年間にわたって世界各地を放浪し、帰国後は英語ビジネススキル研修会社に就職して営業を担当。

独立後に大阪・天満で開業したワインバー「luv wine(ラブワイン)」は、タイトルにあるとおり1坪あたりの売上100万円を実現したのだとか。わずか6坪の小さなお店ながら、20年以上愛され続ける繁盛店になっているのだといいます。

しかし、成功の裏側にはどのような考えがあったのでしょうか?

ベースにあるのは、常識を疑う姿勢です。

僕が(それなりに)うまくいった理由を考えると、やはり業界未経験だったことが最も大きかったと思っています。飲食業で独立する人には飲食畑出身の人もいれば、僕のように別の業界から参入する人もいます。その点、経験者が持っている先入観が、僕にはなかったのです。(「はじめに」より)

子どものころから「いずれは社長」の気持ちが強く、20代からビジネスアイデアを書きためていたのだとか。ラブワインは、そこから誕生したわけです。

そんな僕がお伝えする本書では、僕自身が何を考えて、どう準備し、どんな仕掛けをしたのか。その瞬間の思考をフルオープンで公開します。そのいずれかがあなたに刺さり、行動するきっかけになり、結果になれば、僕はすごくうれしいです。

ぜひワイン片手に読んでください。(「はじめに」より)

序章「1坪で100万円稼ぐお店」のなかから、基本的な考え方に焦点を当ててみたいと思います。

坪月商100万円のお店の条件

ラブワインをあまり大きな店舗にしない理由は、本書で目指す「坪月商100万円のお店」の条件に関係しているのだそうです。

① お店の大きさは6〜10坪

② 最初は1店舗に全力集中!

③ 物販なしの店内飲食のみ

④ 定休日なし、夜時間営業

⑤ ゼロ→イチで始める

(22ページより)

これらは、成功確率を可能な限り上げるための前提条件だそう。それぞれを確認してみましょう。(22ページより)

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1. お店の大きさは6〜10坪

お店の規模を6〜10坪としているのは、小さく始めることで初期費用やリスクを低減するという理由だけではないようです。それが、特化型のお店にしていく場合のギリギリの規模だというのです。

お店が大きくなるほど、ターゲット層も広げざるをえません。その点、ラブワインでは提供するお酒はワインだけです。お酒の定番=ビールを置いていないので、これ以上広げるのはムリがあるのです。「じゃあ、ビールやハイボールも置けば?」と思われるかもしれませんが、今度は差別化が難しくなります。(23ページより)

かつては梅田に16坪、大正に25坪のお店も展開していたものの、現在はどちらも閉店しているといいます。理由は、広すぎると特化型のお店には向かないから。(23ページより)

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2. 最初は1店舗に全集中!

お店が軌道に乗るまでは、経営者の目が届く範囲にしておくことも大切。すなわちそれが、2つめの条件。まずは1店舗に集中してみるべきだという考え方です。

拡大志向を持つことは良いことですが、最初からむやみに拡大路線をとることはリスクが高くおすすめできません。特に最初は経営者が現場に立ち、お店のこまかい部分にまで気を配ることが重要です。(24ページより)

ただ数字を追っているだけでは、お店の魅力を存分に伝えることは難しいということ。なお100万円を達成できたら、2〜3店舗までは再現可能だそうです。(24ページより)

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3. 物販なしの店内飲食のみ

3つめの条件は、いわゆるテイクアウト店は含まないということ。たこ焼き屋やケーキ屋などのテイクアウト主体の業態と、店内飲食のみに特化した飲食店では商売も効率性も別ものだからです。(24ページより)

4. 定休日なし、夜時間営業

1坪100万円を達成するには、いろいろなものを最大化することが必要。そのため休んではいられず、定休日は「なし」が理想。それで回していけるような体制をつくるべきだということです。

ただ、営業時間は夜営業のみを推奨しています。極端な話、24時間営業すれば、どんな業態でも達成できるかもしれませんが、今の時代に沿ったやり方で目指すほうが健全です。数字を上乗せできる昼営業の是非も同様で、お酒が絡む業態であれば夜営業のみがいいと思います。(25ページより)

ラブワインの場合、定休日は月に1日、営業時間は月〜金曜日:18〜24時、土日・祝日:17〜24時となっているそうです。(25ページより)

5. ゼロ→イチで始める

ゼロベースで立ち上げる以上、お店のすべてを自由に設計できます。つまり、ゼロからお店を始めたほうがつくりやすいわけです。ただし、すでに飲食店を経営しているケースでも、いまの店舗を土台に応用することは可能。フランチャイズや多店舗展開の経験を活かし、新規に自分の店を立ち上げるタイミングで活用してみるのもいいようです。(25ページより)


著者が薦めているのは、本書で明かされているさまざまな知識をベースに、ときには「普通じゃないかもしれない」施策を打つなど、勇気を持って一歩を踏み出すこと。経営を志している方は、参考にしてみるといいかもしれません。

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著者紹介:印南敦史

作家、書評家、音楽評論家。1962年東京都生まれ。広告代理店勤務時代に音楽ライターとなり、音楽雑誌の編集長を経て独立。「ライフハッカー・ジャパン」で書評連載を担当するようになって以降、大量の本をすばやく読む方法を発見。年間700冊以上の読書量を誇る。「東洋経済オンライン」「ニューズウィーク日本版」「サライ.jp」などのサイトでも書評を執筆するほか、「文春オンライン」「qobuz」などにもエッセイを寄稿。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社、のちにPHP文庫)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)など多数。最新刊は『現代人のための読書入門 本を読むとはどういうことか』(光文社新書)。@innamix/X

Source: 白夜書房