全3860文字
キオクシアホールディングスは2025年9月から岩手県の工場で最先端メモリーを量産する(写真:日経クロステック)
キオクシアホールディングスは2025年9月から岩手県の工場で最先端メモリーを量産する(写真:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]

 国内半導体メーカーの業績が明暗を大きく分けている。自動車や産業機器の市場低迷でルネサスエレクトロニクスは四半期ベースで減益が続き、ロームは2025年3月期に12年ぶりの最終赤字となった。一方、ソニーグループは半導体事業の増益などで2025年3月期に最高益を更新し、半導体メモリー大手のキオクシアホールディングスは黒字に転換した。決算発表での各社の発言から市場の先行きを読み解く。

デジタルへの投資加速

「米関税は多くの国にとってウェイクアップコール(警鐘)になったのではないか。世界経済のブロック化の動きはこれまでもあったが、完全にスイッチが切り替わる」(ルネサスエレクトロニクス社長の柴田英利氏)

 ルネサスエレクトロニクスは2025年1~3月期の純利益が前年同期比67%減の260億円だった。主力の自動車や産業機器向けの半導体の販売が伸び悩んだ。売上高にあたる売上収益は12%減の3087億円、営業利益は72%減の215億円。足元で「自動車は若干様子見、産業機器は非常に緩やかな回復局面にある」(柴田氏)とした。

トランプ米政権の関税政策という新たな懸念も生じている
トランプ米政権の関税政策という新たな懸念も生じている
[画像のクリックで拡大表示]

 2025年1〜6月期は一時的な損益を調整した非GAAPベースの売上収益が中央値で6107億円(前年同期比14%減)、営業利益は1594億円(同29%減)を見込む。売上収益の予想値はトランプ米政権の関税政策の影響を考慮し、5%程度割り引いた。「影響が出るとすれば(半導体を搭載する製品の)数量のインパクトが大きい。関税で価格が上がれば販売数量は減る」と見る。

 自動車や産業機器市場の低迷で、マイコンやパワー半導体などの事業に影響が出ている。2025年初頭から甲府工場(山梨県甲斐市)で300mmウエハーを使うパワー半導体を量産する計画だったが先送りした。

 人工知能(AI)サーバーで使うメモリー向け半導体や電源用半導体、28nm(ナノメートル)世代の車載マイコンなど、2025年12月期に収益貢献が見込まれる製品群もある。逆風下だが「デジタルへの投資を加速しなければ勝ち残れない。中長期の取り組みに集中したい」と話した。