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 KDDIが国際標準のメッセージ規格「RCS(Rich Communication Services)」の提供に力を入れている。2025年4月1日からiPhoneユーザー向けにRCSの提供を始めたほか、5月20日には企業と個人がRCSを用いて相互にメッセージをやり取りできる「RCS公式アカウント」機能も導入した。

 RCSはテキストのみ送受信可能なSMS(ショートメッセージサービス)や画像付きで送受信できるMMS(マルチメディア・メッセージング・サービス)の進化形に当たる。AndroidやiOSといった異なるOS間でも、画像や動画、長文テキスト、既読通知などリッチなやり取りが可能だ。ただRCSへの対応状況は携帯電話各社で異なり、KDDIだけが率先して取り組んでいるような状況である。

+メッセージの廃止は「考えていない」

 KDDIを含む携帯大手3社(他はNTTドコモとソフトバンク)は、RCSをベースに開発した「+メッセージ」を2018年5月から日本国内で提供している。にもかかわらずKDDIがRCSの導入に積極的な背景には、+メッセージが日本独自の仕様であることが挙げられる。「RCSは北米や欧州などのユーザーともやり取りできる国際標準。国内の通信環境に閉じず、グローバルに対応できる」(KDDIの小頭秀行事業創造本部メッセージサービス戦略部事業企画グループグループリーダー)。

RCSと+メッセージの主な違い
RCSと+メッセージの主な違い
(出所:日経クロステックが作成)
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 RCSはマルチデバイス対応を特徴とする。米Google(グーグル)がAndroid向けに提供するアプリ「Googleメッセージ」機能を使えば、スマートフォンだけでなくPCやタブレットなど複数の端末でメッセージの送受信が可能だ。例えば、スマートフォンで受信した内容をPCのブラウザ上で確認・返信できる。「OSや端末機種問わずメッセージや大容量コンテンツを送受信可能にすることで、Eメールや+メッセージ以外にもメッセージングの選択肢を増やす」と、小頭グループリーダーは狙いを説明する。

 KDDIは同社のAndroid端末でRCS対応のGoogleメッセージを標準搭載することを2024年5月に発表済みだ。RCS対応を強化する動きばかりが目立つが、+メッセージの廃止は現時点で考えていないという。「メッセージングの選択肢が増えることで、配信が届く端末やユーザーが広がる。ベース機能が共通しているため、環境に応じて使い分けてもらいたい」(小頭グループリーダー)としている。