今年も各塾の2025年中学入試合格者数を5つのグループに分け、それぞれの塾の合格数の比率をグラフ化しました。前年度からの増減比や、1日10校の合格数在籍比も出しています。
志望校を目指すには自塾でどのあたりを目標にするかのイメージや、他塾の模試受験を検討する際の参考などにどうぞ。
評価方法とグループごとの偏差値分布
各校の評価方法
今回の集計対象校は315、集計対象の塾は36、合格数合計は118,295で、取得日時によって最終の数値と異なることがあります。
集計対象校は東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県+茨城県の一部で、関西や地方校の東京入試などは除外しているため、各塾の全合格者数とは異なります。
分布把握のためのグループ分けは、特にボーダー付近では塾によって偏差値の逆転も珍しくありません。評価ポイントは各入試回の偏差値を平均→各塾の数値を平均して算出しており、主に以下のような不正確な点があります。あくまで大まかな分布の目安としてご覧ください。
・ある塾の偏差値が不明の入試で、他塾の偏差値がわかるものは推定値を入力し、全ての塾で偏差値不明の入試回は除外しています。
・各入試回偏差値の単純平均のため、入学者数の少ない高偏差値入試回の影響が出やすく、評価ポイントが実際の入学者の中央値より高めになることがあります。
・全体的な傾向の調整として男子校+1、女子校-1、共学校は男女平均としていますが、偏差値帯によってもばらつきがあるため多少のズレが生じます。
・推薦、第一志望、帰国生、英語入試などは基本的に除外していますが、定員合算のものは含むこともあります。同様に合格数も、SS-1や受験ドクターなど帰国を分けて表示してあるものは除いていますが、全ての塾が同じようにしているとは限りません。
グループは各塾の公表合格者数合計を均等に近づくように5分割していますが、①が少なくなっています。
偏差値分布の画像は、左からSAPIX、四谷大塚、日能研、首都圏模試の偏差値を正規分布として、各グループの該当範囲を赤系で示したものです。
グループ①
評価65以上の25校(合格数13,817)
SAPIXの上3分の1、四谷日能研では上1割に入らないと厳しいグループ。1回入試校も多く、能力的にはっきり浮いている子や、賢い上に相当な努力を積めた子が届くところ。普通に賢いくらいの子が2年の通塾だけで合格することは難しいです。
グループ②
評価60以上の30校(合格数24,959)
SAPIXではボリュームゾーンの上寄り、四谷日能研では上3分の1くらい。クラスで指折りくらいの子が2〜3年の通塾と結構な家庭学習をこなして届くグループで、①に届くレベルにあった子の受け皿にもなっています。
グループ③
評価55以上の43校(合格数26,181)
SAPIXの真ん中〜下寄り、四谷日能研では真ん中より上あたりで、首都圏模試ではまだボリュームゾーンに届きません。クラスの上位2〜3割には入る子が数年の通塾と家庭学習でこのグループまで届けば大健闘です。
グループ④
評価46以上の76校(合格数26,525)
SAIPXでは下3分の1にかかり、四谷日能研ではボリュームゾーンからやや下方向、首都圏模試の上3分の1くらいのグループ。このあたりがクラス上半分から通塾して頑張れば届く可能性があるゾーンで、日大や東洋大まで上がれる学校や、マーチ以上の大学への推薦枠を多く持つ学校もあります。
浮きこぼれて苦労しているレベルでなければ、志望校は③④あたりから探しはじめ、中学受験の適性が高ければ段階的に上げていくのが良いやりかただと思います。
グループ⑤
評価45未満の141校(合格数26,813)
四谷日能研の下3分の1、首都圏模試では全体の3分の2ほどを占めます。平均的な学力の子が受験勉強に取り組んで狙えるのはこのグループですね。対象塾合格数の集計上ひとまとめにしていますが、学校数は対象校の4割強で、④と同等レベルから比較的入りやすいところまで入試難易度の差も大きいグループです。
特に、首都圏模試の下3分の1に相当する偏差値45以下の学校になると、SNS上などでは進学する価値が低いかのような表現をされることがありますが、例えば首都圏模試40〜45の入試でも、小学校のテスト満点程度の学力だけで合格点を取ることはほぼできません。
小学校のテスト満点+αの努力をした子たちが集う環境ですから、進学意欲も高く、設備も優れているところがたくさんあります。解像度低めの人が持っている「公立高に進学できない成績不振者が、金を払って行く私立高」のようなイメージとは大きく異なりますね。
模試の受験目安
ひとつの模試を継続的に受験し、補強ポイントや立ち位置を確認していくのが基本ですが、塾のカリキュラムや模試には得意な範囲があるので、主な分布から外れる場合には他の模試を受けることが有効な場合もあります。志望校が会場になる模試があれば、雰囲気を経験するために挑戦するのも良いでしょう。
分布が厚めな範囲は、SOは①〜③、合不合と日能研は②〜④、首都圏模試は④⑤です。ですから、志望校が①の場合はSO、⑤なら首都圏模試の受験者層が近くて参考にしやすく、逆に首都圏模試では①②、SOでは④⑤での立ち位置はわかりにくいと言えます。
自塾の偏差値を基準に他塾模試を検討する場合は、サピ45未満なら合不合か日能研で35未満なら首都圏模試、日能研で65以上ならSO、45未満なら首都圏模試を考えてみるようなイメージですね。
各塾の合格者分布
今回の集計対象の全合格者分布は以下のようになっています。この形との差が大きいところが、その塾の特徴と言えます。昨年と比べると、グループ別では①が減少して⑤が大幅増という安全志向が強めの年でした。
また、1人で複数合格することもあるため、在籍生の進学先比率や学力分布と同じではありません。こちらは私がサポートした受験生の合格校(薄色)と進学先(濃色)の分布です。進学先のひとつ下のグループなどで、複数の合格を獲得することが多いことがわかりますね。
なお、集計対象のうち合格実績を一部のみ公開している塾(ena・臨海セミナー・あづま・スピカ・Z会エクタス・湘南ゼミナール・ステップ)は分布がわからないため、グラフ化していません。
SAPIX型
まずは①②の合格者率が50%を超えるSAPIX型の4塾。SAPIXとグノーブルは似た分布になっていて、希学園首都圏とエルカミノは①②の合計比率が6割を超えています。
浜学園は、前年度までの「首都圏専門中学受験塾 駿台・浜学園」から今年度は「進学教室 浜学園」となり、実績も「浜学園グループ 首都圏合格実績」としたことで、遠征合格数もカウント可能にした影響がありそうな形になりました。今年度は在籍数も出していないので、1日10校の割合比較からも外れています。
四谷・早稲アカ型
次は②〜④にボリュームがくる5塾。四谷大塚は全体平均に近い形ですが①②は下回って③が最多、早稲田アカデミーは①〜③がやや上回る形。
ジーニアスは②④、アントレは③に次いで④が多く、おぎしんは④が多めになっています。
日能研型
①が5%以上で④⑤が多い日能研型は、それぞれ特徴が出ています。日能研は①〜⑤まで階段状に増えていく形で、スクールFCも似た分布ですが⑤が多め。
市進学院、啓進塾は④が最多で、啓明館は④⑤で6割を超えます。
栄光ゼミ型
最後は小規模塾が多い①が4%未満の塾。栄光ゼミナールとプレイス進学教室は⑤が5割超で特に多いですね。
E-style、スタジオキャンパス、茗渓塾は⑤が4割台で、④との合計が4分の3を超えています。
エデュコは③、日本教育学院は④が突出している特徴的な形ですね。
個別指導塾など
ここからは集団塾との併用が多い個別指導や算数塾などの分布です。集団塾との併用ではSAPIXやグノーブルを勧められるフォトンは、今年も①②で86%と偏った形です。
TOMAS、受験ドクター、SS-1は②が最多の形で、上位校志向の受験生が多めの印象ですね。
個別進学館と創研学院は日能研型に近く、ユリウスは栄光ゼミ型に似た分布ですね。
1日10校の合格率
こちらは在籍数を公開している塾で、2月1日入試の10校の合格数が在籍数に占める割合を示したものです。対象10校の合格数合計は2,353で、対象10塾の全合格数15,937の14.8%です。
例えば開成合格者は、1月渋幕、2日聖光、3日筑駒などに複数合格するケースも珍しくないため、重複しない1日10校に絞ると難関合格率の目安になります。
約3割を占めるエルカミノは、開成に次いで武蔵が多いのが特徴的。SAPIXとグノーブルは2割近くで、グノーブルは駒東と麻布の比率が多くなっています。希学園首都圏も全体平均は上回っていますね。
アントレは今年も圧倒的に武蔵に強く、早稲アカはやはり早大学院の比率が高め。世田谷区に多いジーニアスは今年も武蔵の比率が高めで、神奈川の啓進塾は今年も女子はフェリスですが、男子は普通部ではなく麻布に合格しています。
各塾の前年度合格実績との比較
こちらでは今年度と昨年度の合格数を比較し、増減率を出しています。在籍数の増減や1人あたりの受験数・合格数の多寡の影響もあるので、目安としてご覧ください。並びは対象校の合計合格数が多い順、右上は在籍数の前年度比で、こちらは全体の増減です。
①の0.84を下回る塾が多くなっていますが、これは難関校ほど合格実績数が多めに出る影響もあります。集計合格数と各校の実際の合格者数を比べると、グループ①では1.5倍超になりますが、グループ③では約1倍になり、グループ⑤だと約0.6倍に留まります。塾の併用や重複カウント、補欠合格者数の追加などの影響もありますね。
四谷大塚は全体的にはやや増加、日能研は①②④は全体に比べて減少傾向です。
早稲アカは全体の傾向と良く似た形で、SAPIXは④⑤の増加が目立っています。
栄光ゼミは昨年の増加の反動もあり、全帯で全体平均を下回っています。市進は②が増え、①③⑤が減る特徴的な形。
グノーブルは全帯で平均を上回っています。ジーニアスは①〜③は下回り、④⑤が上回る形。
啓進塾は①③が減って④が大幅増、スクールFCは①②④が減って③の増加が多め。
希学園首都圏は①③④が減り、②と⑤に偏った形。啓明館は全体的に減少で⑤が大幅増です。
エルカミノは③⑤の増加、おぎしんは①②⑤の増加が目立ちます。
アントレは③以外が減少、浜学園は先述の通り①②に偏った増加の形。
スタジオキャンパスは①が0で⑤が大きく増加し、全合格数でも増加になりました。茗渓塾は①〜④で減った分が⑤で埋まって全合格数が同じになっていますね。小規模になるほど、数名分の合否でも割合に与える影響は大きくなります。
エデュコは①が0で、③で大きく増やしたものの全合格数でも減少。日本教育学院は②④が増加、全合格数でも増加しています。
ここからは個別指導塾など。
TOMASは全体に増加傾向で、個別進学館も①がやや減り多めですが全体的に増加です。
ユリウス、受験ドクターはともに全体的には減少傾向です。
SS-1は①③の減少が多めで、⑤はかなり増加。フォトンは元々が少ない影響で③〜⑤が増加して見えますが、数としては少し増えたくらいですね。
グループ別学校リスト
先述の通りいろいろとブレもあるグループ分けなので、◯◯より◯◯の方が〜といったこともあると思いますが、塾の方向性や指導経験が多いゾーンのイメージ用としてご覧ください。
グループ①
男子校12・女子校4・共学校9
グループ②
男子校9・女子校7・共学校14
グループ③
男子校9・女子校6・共学校28
グループ④
男子校5・女子校21・共学校50
グループ⑤
男子校5・女子校47・共学校89