「なかったこと」にしてはいけない 小田急線内での事件の報道の後、ずっとこの事件のことを考えている。物書きとして、私はこの事件について書くべきだ。でもどうしてもうまく書けない。 ショック、混乱、怒り、悲しみ、絶望……いろんな感情があふれて文章がまとまらない。でももう、まとまらなくていいやと思った。 うまく書けないけれど、私はこの事件について書く。なぜなら、絶対に忘れ去られてはいけないから。日々のさまざまなニュースに紛れて「なかったこと」にされてはいけないから。 被害者の女性は、一生忘れられない体と心の傷を抱えて生きていくのだろう。今後電車に乗れなくなったり、通学や出勤ができなくなる可能性もある。そうやって突然人生を壊されたのだ、ただ電車に乗っていただけなのに。 こんなひどい事件は許せない、二度と繰り返してはいけない。この文章を読んでいるあなたもきっとそう思っているだろう。 であれば、どうすれ
