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白血球の一種であるマクロファージ(中央)が、大腸菌(赤)から放出された毒素によって破壊される様子を走査型電子顕微鏡で撮影した着色画像。一部の大腸菌は、細胞のDNAを傷つける毒素コリバクチンを放出し、大腸がんの発症を促す可能性がある。(MICROGRAPH BY STEVE GSCHMEISSNER, SCIENCE PHOTO LIBRARY) 若い世代の大腸がんの発生率が世界的に増えている。最近の研究によると、日本は、大腸がん患者の増えるペースが、年長の世代より50歳未満の若い人のほうが速い国の一つだ。具体的に何が若い患者の急増を引き起こしているのかについては、これまで多くの科学者や医療従事者が頭を悩ませてきた。(参考記事:「若い世代で大腸がんが増加、見逃してはいけない兆候とは、研究」) しかし、専門家は以前より、大腸菌などの細菌が作る毒素であり、DNAを損傷する「コリバクチン」が関わっ
九龍城砦の建物と建物をつなげる屋上は、子どもたちの遊び場、洗濯場、ゴミ捨て場、休憩場になっていた。また、近くの啓徳空港を離発着する航空機を眺めることもできた。(Photograph by Greg Girard) 私たちはこの夏もホタルを見られるのか、謎多きホタルを守るには 1994年まで、香港には「九龍城砦(きゅうりゅうじょうさい)」「九龍城(くーろんじょう)」などと呼ばれる小さな街があった。狭い区画に高い建物が密集し、3万人以上がひしめき合って暮らしていた。人々がどのように暮らしていたのか、想像もつかないほどの人口密度だった。 街にはゴミが散乱し、犯罪が横行する無法地帯として知られ、中国政府からも香港政府からも忘れられていた。「常に好奇心や恐怖心をかきたて、自ら進んで足を踏み入れようとする者はほとんどいなかった」と、歴史家のエリザベス・シン氏は、1987年に学術誌「Journal of
(Video by Brendan Barrett / Max Planck Institute of Animal Behavior) 中米パナマの沖にあるヒカロンという小さな島で、ノドジロオマキザル(Cebus capucinus imitator)のあるオスが、穏やかならぬ行動を流行らせているようだ。顔の傷から「ジョーカー」と名付けられたこのサルと仲間のオスザルが、マントホエザル(Alouatta palliata coibensis)の赤ちゃんをさらって背中にのせているところを、自動撮影カメラがとらえていた。それまで見られたことのない奇怪な行動が、2025年5月19日付けの学術誌「Current Biology」で報告された。 「あまりに奇妙だったので、すぐにアドバイザーのオフィスに行ってこれが何なのか尋ねました」と、ドイツ、マックス・プランク動物行動学研究所とパナマにあるスミソニ
ゼリー状の球体の中で、ふ化のときを待つイカの赤ちゃんたち。Capitella ovincolaという蠕虫(ぜんちゅう)はカリフォルニアヤリイカの卵の中に入り込む。(PHOTOGRAPH BY JULES JACOBS) カリフォルニアヤリイカ(Doryteuthis opalescens)が母親でいられる時間は残酷なほど短い。カリフォルニアヤリイカのメスは一生に一度、ドラマチックな繁殖の騒ぎに加わる。月明かりの下、たくさんのイカたちが交尾(交接)のため、浅瀬に集まる。そこでは腕を赤くした繁殖期のイカたちが、もやのように溶け合う。 「通常、海底谷は安定した基準点ですが、イカたちが生きた流れのように溶け合い、まるで斜面が動いているような錯覚を覚えました」とフォトジャーナリストのジュールズ・ジェイコブズ氏は話す。 通常は見られたとしても年に1度だというカリフォルニアヤリイカの交尾を記録するため、
下関の周辺であぶるような太陽の下で根菜を掘る農家。気候変動による、主要産物であるコメの収穫量や品質の低下を受けて、別の作物を試す農家も出てきている。(PHOTOGRAPH BY PAUL SALOPEK) ピュリツァー賞作家でナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー(探求者)であるポール・サロペック氏は、地球の物語をつむぐ3万4000kmの徒歩の旅「Out of Eden Walk(人類の旅路を歩く)」に挑んでいる。人類の拡散ルートをたどりつつ、2024年9月、日本に到達した。日本編の第1回は下関から。 船で福岡に上陸した私は、北に向かって歩きはじめた。太陽のまぶしい、湿度の高い日だった。徒歩で、自分の2本の足を使って、この国を縦断する予定だ。写真家の郡山総一郎氏と合流した。 都市部のはずれには、巨大な鉄の卵のような、液化天然ガスのタンクが並んでいた。周囲には誰もいないが、驚きはない
ストレスの軽減から睡眠の改善まで、呼吸法は日々の生活に対する体と脳の反応を変化させることができる。(PHOTOGRAPH BY MINISERIES, GETTY IMAGES) 気持ちが張り詰めているときに「深呼吸して」と言われたことがある人は、このありふれた助言に科学的な裏付けがあることを知ってほしい。研究によれば、意識的な呼吸には、心臓の健康状態の改善、不安の軽減、気分の高揚、認知機能の向上、睡眠の質の改善など、すぐに表れる効果から長期的な効果まであるという。 「呼吸法は、神経系を落ち着かせ、心身の回復力を高める、最も単純で効果的なツールの1つです」と、英ブライトン&サセックス医科大学の呼吸法研究室のガイ・フィンチャム氏は言う。「けれどもごく身近なものであるがゆえに、その威力は過小評価されがちです」。氏は2023年に学術誌「Scientific Reports」に呼吸法とメンタルヘル
最近のゲノム研究で、どのように、「日本人のきた道」(科博の特別展「古代DNA」の副題でもある)が解明されつつあるのか。従来の考古学的、形態人類学的な知見に加えて、古代DNA研究が加わったときに、どんなふうに景色が変わったり、解像度が高まったりするのか。そういったことを、国立科学博物館の神澤さんに聞いてきた。 さて、それでは、現時点で言える、日本列島人の「らしさ」については、ゲノムの観点からは、どのようなことが言えるだろうか。 まず、最初に、神澤さんは、「さまざまな人がいる」ことを強調した。 「これまでにも、日本の現代人でも、本土集団、琉球列島集団、アイヌ集団という大きく3つの地域の集団で遺伝的な違いが存在することがわかっていたんですけれども、最近の研究からは、もう県レベルで違うということが見えてきています。日本列島人が昔から持っている文化的な地域色とリンクする形で、遺伝的にもやはり独自性が
海辺の景色と庭の花を眺めながら食事ができる、イタリア、ポジターノにある貸別荘。(PHOTOGRAPH BY MASSIMO BASSANO, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 国連や米調査会社ギャラップなどがまとめた2025年版の「世界幸福度報告書(World Happiness Report)」によると、誰かと一緒に食事をとること(共食)は、幸福度の指標として、所得や雇用状態に匹敵するほど強力だという。 地中海、ラテンアメリカ、東南アジアといった地域では、料理の内容こそ違えど、「テーブルを囲んで食事を分かち合う」という習慣が文化に深く根付いており、まるで神聖な儀式のように大切にされている。人々は共に食事をし、皿は思いやりを持って手渡され、全員が食べ終わるまで誰ひとり席を立つことはない。 一方、世界では、皆で食卓を囲むことが珍しい行為になりつつある地域もある。昼食にまるま
ロバート・フランシス・プレボスト枢機卿が選出後に選んだ教皇名は、カトリックの長年の歴史が詰まった伝統のある名前、レオ14世だった。(PHOTOGRAPH BY EVANDRO INETTI/ZUMA PRESS /ALAMY) ロバート・フランシス・プレボスト枢機卿は、史上初の、北米出身のローマカトリック教会の教皇となった。だが、選出後に卿が選んだ教皇名は、カトリックの長年の歴史が詰まった伝統のある名前、レオ14世だった。 「教皇名を選ぶ際に厳密なルールはありませんが、名前は熟慮のうえで、通常は過去の同名の教皇と関連した意味を持たせて選ばれます」。米ウィスコンシン大学マディソン校の歴史学の教授で、宗教学や法学、社会学なども教えているカール・シューメイカー氏はそう話す。(参考記事:「ローマ教皇はどう選ばれるのか、選挙『コンクラーベ』の舞台裏」) 数字が示すように、プレボスト枢機卿はレオを名乗
2018年、パプアニューギニアのワナン村の郊外でかすみ網に捕らえられた、毒をもつ鳥カワリモリモズ。(PHOTOGRAPHS BY KNUD JØNSSON) 1989年の夏、米シカゴ大学の大学院生で鳥類学者の卵だったジャック・ダンバッカー氏は、調査のため、パプアニューギニアの緑豊かな熱帯雨林を初めて訪れた。ある蒸し暑い午後、仕掛けておいたかすみ網に、黒とオレンジ色の華やかな羽毛をもつ珍しい鳥がかかっていた。ズグロモリモズ(Pitohui dichrous)だ。「カケスぐらいの大きさで、針のように鋭い爪と嘴をもつ鳥です」とダンバッカー氏。 氏はかすみ網から鳥をはずそうとして、引っかかれてしまった。とっさに傷口を唇にあてた。「すると、口の中がヒリヒリと熱くなり、やがてしびれてきました。しびれは夜まで続きました」 ダンバッカー氏が現地のガイドに相談すると、彼らは心得た様子でうなずき、あれは「クズ
縄文時代の日本列島人が、3万年も前に他のアジアのグループと分岐した、比較的均質な集団だったということを、前回までに見た。今の世界には、縄文人と呼べる人はもういないけれど、縄文人と現代人とを比べてみると、日本列島に住む人々は、本土で10〜20パーセント、琉球列島で30パーセント、北海道のアイヌ集団は70パーセント、縄文人のゲノムを受け継いでいることもわかっている。 それでは、縄文時代に続く時代はどうだろう。今から2900年ほど前に、朝鮮半島から九州北部にわたってきた青銅器文化人が、水田稲作の農耕技術を核とする新しい文化を、ひいては社会をもたらした。本州、四国、九州で、およそ1100年間にわたって続いたその時代を、弥生時代と呼んでいる。 従来から日本列島に住んでいた縄文人たちを基層集団として、弥生時代に入ってきた人々、いわゆる「渡来系弥生人」が混ざりあって生まれたのが現代の日本列島人であるとい
年をとっても安定した自立的な生活を送るためには、定期的な運動やバランス能力のトレーニングが重要だ。専門家によると、バランスに注目した運動を行うことで、身体能力と認知能力の両方を守ることができる。(PHOTOGRAPH BY NORIKO HAYASHI, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 片足で10秒間楽に立つことができなければ、それは体が何かを伝えようとしているのかもしれない。「片足立ちは、特に優れた老化の指標です」。米国で痛みや動作、健康に関するクリニックやトレーニング施設、研究所を開設しているクレイトン・スカッグス氏はそう話す。 米メイヨー・クリニックが行い、2024年10月に学術誌「PLOS One」に発表された研究によれば、片足で立っていられる時間は、筋力や歩く速さ以上に老化の度合いをよく表している。また専門家によると、神経と筋肉の健康度だけでなく、ほかの疾病が
韓国南端の沖合にあるチェジュ(済州)島で育った女性の多くは、幼い頃から素潜りを始め、生涯にわたって潜り続ける。 (PHOTOGRAPH BY DAVID HOGSHOLT) 5月2日付けで学術誌「Cell Reports」に発表された論文によれば、韓国のチェジュ(済州)島で何世代にもわたって続いてきた海女「ヘニョ」の遺伝子を分析したところ、安全に潜水するための生理的適応が脈々と受け継がれてきた可能性が明らかになった。 ヘニョたちは一年を通してグループで海に潜り、アワビやウニなどの海産物を捕っている。水温10℃の冷たい海でも平気で潜り、海底で貝を捕って浮上する。潜水時間は比較的短いが、素潜りで1日5時間もの間、潜っては浮かび上がる作業を繰り返す。 「今でこそ、彼女たちはウェットスーツを着ていますが、1980年代までは木綿製の服で潜っていました」と論文の最終著者であるメリッサ・イラード氏は言う
乾燥豆を調理するとき、事前に水に浸しておく必要は本当にあるのか。この事前の準備には科学的根拠があると専門家は言う。(PHOTOGRAPH BY REBECCA HALE, NATIONAL GEOGRAPHIC) 水に浸すか、浸さないか。乾燥豆を使う料理では定期的に持ち上がる問いだ。乾燥豆の袋に書かれている説明では、調理前に長時間水に浸しておくよう勧められている。つまり事前の準備が必要で、面倒に思う人もいるだろう。 だからといって、豆を食べないのは間違いだと専門家は指摘する。「食事にもっと豆を取り入れるべきです」と語るのは、登録栄養士で米ボストン大学の栄養学教授のジョアン・サルジ・ブレイク氏だ。 「豆は、食物繊維やカリウムを豊富に含んだ、高タンパクの植物性食品です。しかも低価格です」(参考記事:「驚くほど体にいい植物性タンパク質、おすすめの食材や食べ方は」) 実際に、豆類やマメ科の植物を日
南アフリカのフォールス湾に浮かぶシール島周辺で2014年に撮影されたホホジロザメ。かつてはたくさん生息していたが、今はまったく見られなくなってしまった。(PHOTOGRAPH BY NATURE PICTURE LIBRARY, ALAMY STOCK PHOTO) 魚雷のような体、6センチほどもある歯。世界最大の捕食サメは、とてつもなく恐ろしい姿をしている。あまりに恐ろしいので、ホホジロザメ(Carcharodon carcharias)のいない海を望む人もいるだろう。だが、3月25日付けで学術誌「Frontiers in Marine Science」で発表された論文で、このサメが消えた海に起こったことが明かになった。 南アフリカのフォールス湾に浮かぶシール島の周辺は、かつてホホジロザメのホットスポットだった。サメが水面まで出てきて獲物をつかまえる様子を見られるという、地球上でも数少な
「縄文人というとみんな同じようなイメージを持つとは思うんですけれども、実際には、それぞれの環境に柔軟に適応した人たちだったと思うのです。北海道の縄文人なら海獣類などの脂肪リッチな食物をとる。もう少し南に行けばドングリなどの堅果類を中心として、海沿いであれば川魚、海の魚、山に入ればまた別の食べ物をとる。もっと南にいって、琉球列島では、さらに海の幸にアクセスする、というふうに。こういったことは、考古遺物からも明らかで、地域ごとの違い、あるいは、逆に、地域間の交流がある程度わかっています。それらがはたしてゲノムで見えてくるのか。かりに見えるとして、そういった構造がいつから生じ、どの程度維持されていたのか。均質な中でも、もう少し高い解像度をもって見ていければと思っています」 たしかに「縄文人」というふうに名前をつけてカテゴリーとして理解すると、同じような暮らしをしていたように感じられてしまう。まし
英国ロンドン、小枝やごみで作られた巣の中にいるオオバン。オオバンはヨーロッパ全土に生息する。大都市に住むオオバンは、手に入る数少ない材料であるプラスチックごみで巣作りをすることがある。(Photograph by Laurent Geslin, Nature Picture Library) 黒くて丸っこいからだに大きな足を持つ水鳥オオバン(Fulica atra)。水路の主(ぬし)のようには見えない姿だが、なわばり意識が強くて辛抱強く、オランダのアムステルダムでは「運河のギャング」と呼ばれている。このオオバンをはじめとする鳥たちが都市環境にどう適応しているのか、そうした適応はそもそもいいことなのかを調べている研究者らが、オオバンの巣に長年にわたって蓄積されていたプラスチックごみを細かく調べ、都市部での巣作りや繁殖の時期を明らかにした。論文は2025年2月25日付けで学術誌「Ecology
2022年のノーベル賞受賞に象徴されるように、いま古代のヒトのDNAの研究が盛んに行われており、新しい事実が次々と明らかになっている。そこで、古代の日本列島に住んでいた人たちについて知りたくて、2025年春に国立科学博物館で開かれている特別展「古代DNA―日本人のきた道―」の監修者である神澤秀明さんの研究室に行ってみた!(文=川端裕人、写真=内海裕之)
持続的幸福は、達成する方法がさまざまであるため、人生の充実度の指標として有用だ。人生において測定が可能な要素のすべてが完璧である必要はない。(PHOTOGRAPH BY KENDRICK BRINSON, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 「グローバル幸福度調査(Global Flourishing Study)」という、22の国と地域の20万人以上が参加する5年間にわたる野心的な研究の最初の成果が2025年4月30日付けで学術誌「ネイチャー・メンタルヘルス」に発表された。国別で幸福度が最も高かったのはインドネシア、最下位は日本だった。また、若い人の幸福度が低い傾向が多くの国で見られた。 以下では、この結果が意味するものや、幸福度を高めるために何ができるのかをひもといていく。 今回の調査で測った「幸福度」とは? 米ハーバード大学のタイラー・J・バンダーウィール教授は、「真
縄文後期の3500年前につくられたサル形土製品。土器や土偶のほかにも縄文人はさまざまな土の製品をつくっていた。国立科学博物館の特別展「古代DNA―日本人のきた道―」の展示より。(撮影:編集部) 縄文時代と聞くと、独特のノスタルジーを感じる人が多いのではないだろうか。 素朴な狩猟採集民という印象が、まず頭に浮かぶ。 貝塚がある場所では、魚や貝を食べていただろうし、木の実やドングリも食べていただろう。内陸では、狩りをして肉を食べていたに違いない。独特の縄目模様の土器や、装飾性が高い火焔(かえん)土器などの印象も強い。様々な特色のある土偶が作られ、少しでも考古学に関心がある人なら、ひとつやふたつ「お気に入り」があるかもしれない。たぶん自然崇拝的な信仰を持っていて、現代社会から振り返ると「自然と共存している」とか「精神性が高い」と思う人もいるかもしれない(もちろんこれは勝手なイメージの貼り付けだ)
培養ヒト乳がん細胞の一部を蛍光色素で強調した画像。紫色は細胞核のタンパク質、黄色はタンパク質の加工工場として機能するゴルジ装置、緑色は多くの細胞に最も豊富に含まれるタンパク質であるアクチン。(MICROGRAPH BY DR. TORSTEN WITTMANN, SCIENCE PHOTO LIBRARY) がんに1、2、3、そして恐ろしい4というステージ(病期)があることはほとんどの人が知っているが、「ステージ0」という早期のがんもあることを知っている人は少ない。それは意外ではない。ステージ0のがんと診断される人は少ない上、がんの種類によってはステージ0ではほとんど検出できなかったり、別の名前で呼ばれたりすることも多いからだ。 米国の人気歌手ビヨンセの母ティナ・ノウルズさんも知らなかった。彼女は最近出版した回顧録の中で、乳がんと診断されたことを明かしている。米週刊誌「People」のイン
ビール風呂――バス&バーリーのザ・コンプリート・スパには、同時に8人まで入ることができる。(PHOTOGRAPH BY BATH & BARLEY) 入浴の歴史には、古代からさまざまなものがある。クレオパトラがロバの乳の風呂に入っていたのはよく知られているし、ローマ人はワインに、ウェンセスラス王はボヘミアの醸造所で作られたどろどろの麦汁に浸かっていたとされている。現代では、日本の温泉やトルコのハマムなどの世界中の入浴文化が、昔ながらのやり方と、今の健康のトレンドとを織り交ぜながら発展している。(参考記事:「日本人はやっぱり、温泉が好きね!」) 東ヨーロッパでは、風呂にホップや麦芽、酵母にオオムギを加える手法がある。中世までさかのぼることができ、今でも受け継がれている。このビール風呂は、ベルギーやフランス、スペイン、アイスランド、英国、米国にも広がり、各地で異なる体験ができる。 無濾過や熟成
アメリカムシクイの一種であるハゴロモムシクイ。その声は春の到来を告げるドーンコーラスでも聞くことができる。(PHOTOGRAPH BY MELISSA GROO, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 春になると、この季節にしか聞くことのできない爽やかな歌声が響いてくる。夜が明ける少し前、一斉に鳴く鳥たちのにぎやかな声は、オーケストラが奏でる音楽のようだ。鳥たちのこの早朝の大合唱は夜明けのコーラスという意味で「ドーンコーラス」と呼ばれ、特別な現象とされている。 それにはいくつかの理由がある。春はいつもより多くの鳥が、いつもより頻繁にさえずり、しかもエネルギーをほとばしらせるかのように大きな声で鳴くからだ。ドーンコーラスにインスピレーションを受けた詩や音楽も数多くある。 「鳥のさえずりは春の訪れを告げます」と、米国鳥類保護協会の鳥類学者ジョーダン・E・ラター氏は言う。長く寒い冬
今回の研究では、ボノボの群れ内における「順位」を、メスがオスとの争いに勝利した回数を数えることで測定した。その結果、たいていメスが優勢だった。(Photograph by Christian Ziegler) チンパンジーなど多くの社会性哺乳類ではオスがメスよりも優位なのが一般的なのに、なぜ近い仲間であるボノボのメスは、しばしばオスよりも優位に立てるのだろうか? 米ハーバード大学の行動生態学者であるマーティン・サーベック氏らは、この疑問の答えを求めてきた。そして、コンゴ民主共和国に生息する6つのボノボの群れを30年近く観察した結果、ある結論に達し、2025年4月24日付けで学術誌「Communications Biology」に論文を発表した。 メスのボノボは、2頭以上(通常は3〜5頭)で結束して連合を組むことで、オスがもたらす危険を減らし、自らの影響力を高めているのだ。オスはメスよりも体
イングランド南部の「ベルテイン・ケルティック・ファイヤー・フェスティバル」で、パフォーマーの背後で燃え上がる火。エディンバラの「ベルテインの火祭り」をはじめとしたこうしたイベントの基になっているのは、かつてケルト文化圏で季節の変わり目を祝った、何世紀も前からの伝統だ。(PHOTOGRAPH BY ANDREW MATTHEWS, PA IMAGES, GETTY IMAGES) 毎年4月30日の夜、1万人近くが英国スコットランドのエディンバラにある丘カールトン・ヒルに集まり、再び巡ってくる夏を火とともに迎える。印象的な衣装をまとったパフォーマーが群衆の中を動き回り、町中に響くドラムの音やかけ声とともに、昔の祭りを再現する。「ベルテインの火祭り」だ。 地元の人も観光客もやってくるこのイベントは、火や豊作、移りゆく季節を讃える古くからの伝統を祝う祭りとしては、英国で現在行われているなかで最大規
写真:PHELPS COLLECTION, NATIONAL GEOGRAPHIC SOCIETY ARCHIVES、 撮影:ライムント・フォン・シュティルフリート、 手彩色 雨が降っているのだろう。笠や蓑(みの)を身に着けた男性たちが、馬の力を借りて田んぼの代掻(しろか)きを進めている。代掻きは一般的に3回行われ、1 回目と2回目が馬の出番だった。10本ほどの細い歯のついた馬鍬(まぐわ)と呼ばれる農具を引いて歩き、水を張った田の土を砕いて混ぜていく。 馬も馬鍬も大陸から伝わった。古墳時代の5世紀、戦闘に使うために馬が朝鮮半島から導入され、馬鍬は同じ頃に中国から伝えられた可能性が高いという。 写真が撮られた当時、全国には123万頭近い馬がいた。農業の振興を目指す勧農局が明治10(1877)年に旧国別に調べたもので、馬と同様に使われていた牛は107万頭ほどだった。統計によると、局地的な例外は
南米エクアドル領のガラパゴス諸島の一つ、フェルナンディナ島近くに広がる冷たく澄んだ海。ガラパゴスペンギンが、アオウミガメやウミイグアナと一緒に泳ぐ。(PHOTOGRAPH BY TUI DE ROY, NATURE PICTURE LIBRARY) 地球上でも屈指の過酷な環境に生きるペンギンは進化の奇跡だ。科学は今、その秘密を次々に解き明かそうとしている。環境の激変にしなやかに適応するその驚異的な姿は、急速に変化する世界で生き延びる知恵を私たちに授けてくれる。 1.新しい環境に飛び込むには? ペンギンは6000万年余りも、天性の探究心にかられて生息地の開拓に挑んできた。今も思いがけない場所に姿を見せている。 生物学者のパブロ・ボルボログルが南米パタゴニア地方東岸の人里離れた土地を初めて訪れたのは2008年のこと。ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーでアルゼンチン出身のボルボログル
ヒッタイトの神々の行進。ヒッタイト帝国の都ハットゥシャ近郊にある、王家の霊廟と思われる建物の壁に刻まれている。現在のトルコ中部に位置したこの古代都市は、紀元前1180年頃に放棄された。今、その理由を探る研究が進んでいる。(PHOTOGRAPH BY EMIN ÖZMEN) *遺跡および遺物はトルコ文化観光省の許可を得て撮影 現在のトルコとその周辺に洗練された都市群を築いたヒッタイト帝国。あるとき歴史から姿を消し、数千年にわたって忘れ去られていた。しかし近年、新たな発見が相次ぎ、謎めいた古代帝国の伝説がよみがえろうとしている。 現在のトルコ中部に位置する険しい丘陵地帯に築かれた、ヒッタイト帝国の都ハットゥシャ。この都市を最盛期に見た人々は、深い畏敬の念を抱いたに違いない。日干しれんがの高い壁に囲まれ、7000人の人口を擁し、広大な神殿群や、数キロ先からも見える立派な石造りの城壁を備えていた。
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