面接のときに志望動機を聞かれて、「ウザすぎ」というツイートを見た。
志望動機ウザすぎだろ お前が募集してたから応募したんだよ
— 限界 (@3U62_) August 26, 2023
そうだなあ、と思う。
ちょっと言葉が強いけれども、ほぼ同意だ。
ぶっちゃけ、私の場合で考えても、新卒の時にコンサルティング会社に応募した理由は、「(奨学金返すために)給料が良かったから。」「頭使う仕事がいいかも」くらいだった。
おそらく、面接では志望動機を聞かれたと思うが、何を答えたのかは全く覚えていない。
適当に作り上げた理由を、覚えているわけがないのだ。いま覚えているのは結局「金」と「雰囲気」で入りたいと思っただけ。
ただ、このように言うと、「本音ではなく、建前を言える人が欲しいのだ」と言う意見もある。
自分が採用仲介者側になって思うのが、かたちだけでも入社の意思作れない人間に、入社後に長期就業してもらえるか判断できない。
あと志望動機なんて書き方さえ分かれば誰でも書けるものを、それなりに社会人経験積んだ人間が全く書けないの見るとなんとも言えない気持ちになる。 https://t.co/zBvv5dzdcS— あいな (@aina_1405) August 28, 2023
まあ、建前が言えるのは重要な能力で、仕事では役に立つ。
ただし、建前を言えない人が長期就業が不可能なのか、と言えば、そんな統計もないし、経験的にも「正直さ」が評価される場面も多いと思う。
そんなことよりむしろ、「テンプレ」に従った志望動機を聞くために、面接の貴重な時間を充てるのが「本当に必要?」と思う。
「意欲」やら「建前」やらはどうでもいい
はっきり言うと、「意欲」とか「建前」とかは、ほんとうにどうでもいい、と思う。
簡単にウソがつけるし、それを確かめるすべもないからだ。
「やる気に満ちています」
「御社が第一志望です」
「あこがれの職業でした」
そんなことを言いながら、半年もたたずに辞めていった人は数えきれないほどいる。
実際、そんな繕いの理由よりも、
「これができます」
「こんな経験をしてきました」
「こんなチームで働きました」
という「できること」「やってきたこと」「研究したこととその成果」などの、事実ベースの情報のほうが入社してからはるかに役立つし、採用してからの配属も決めやすい。
だから、私が面接官をやっていた時は、聞きたいのは「意欲」や「建前」ではなく、「事実」と条件面の「要求」だった。
そのほうが情報として圧倒的に役に立つのだ。
なんで企業は「志望動機」が好きなのか?
じゃあなんで、こんなに「志望動機」を聞く会社があるのか?
それはたぶん、シンプルな理由
「面接官がスッキリしたいから」
だけだと思う。
カリフォルニア大学のフィリップ・テトロック教授によれば、人間は「つじつま合わせ」をよく行うという。
誰かがある事実についてかなり自信があると主張する場合も、その人物が頭の中で辻褄が合うストーリーを組み立てたというだけであり、必ずしもそれが真実とは限らない
つまり、面接官は「志望動機を聞く」ことで、応募者の話の「つじつま合わせ」がやりやすくなる。
「今の回答は、志望動機と一致する」
「やりたい仕事がマーケティングなのは、志望動機と合致するな」
「第一印象通り、志望動機もしっかりしているな」
だが、この「つじつま合わせ」には欠点もある。
テトロックによれば、「情報が少なければ少ないほど、自分の決定に確信を持ててしまう」がゆえに、客観的な判断ができなくなる。
面接官は、次第に志望動機が真実かどうか、あるいはその後の回答が真実かどうかなど、どうでもよくなり、「志望動機などの、話のつじつまが合っているかどうか」だけを気にするようになる。
著名な学者が指摘するように、その内容の真偽はさておき、である。
カーネマンとクラインも指摘しているように、直観を助けるような有効な手がかりが十分あるか否かを見きわめるのは通常難しいのだ。
そうなった時、ほんとうに「面接」に意味はあるのだろうか?
私は、面接官が貴重な面接の時間を使って、「話のつじつま合わせ」ばかりをやっているシーンを数多く見てきた。
だから、繰り返しになるが、テンプレ通りの「志望動機」を聞くのに本当に意味があるのかといえば、私は明確に「ない」と思う。
【安達が東京都主催のイベントに登壇します】 ティネクト代表・安達裕哉が、“成長企業がなぜ投資を避けないのか”をテーマに東京都中小企業サイバーセキュリティ啓発事業のイベントに登壇します。借金=仕入れという視点、そしてセキュリティやDXを“利益を生む投資”とする考え方が学べます。
(2025/6/2更新)
こんな方におすすめ
・無借金経営を続けているが、事業成長が鈍化している
・DXやサイバーセキュリティに本腰を入れたい経営者
・「投資」が経営にどう役立つかを体系的に学びたい
<2025年7月14日実施予定>
投資と会社の成長を考えよう|成長企業が“投資”を避けない理由とは
借金はコストではなく、未来への仕入れ——
「直接利益を生まない」とされがちな分野にも、真の成長要素が潜んでいます。
【セミナー内容】
1. 投資しなければ成長できない
・借金(金利)は無意味なコストではなく、仕入れである
2. 無借金経営は安全ではなく危険 機会損失と同義
・商売の基本は、「見返りのある経営資源に投資」すること
・1%の金利でお金を仕入れ、5%の利益を上げるのが成長戦略の基本
・金利を無意味なコストと考えるのは「直接利益を生まない」と誤解されているため
・同様の理由で、DXやサイバーセキュリティは後回しにされる
3. サイバーセキュリティは「利益を生む投資」である
・直接利益を生まないと誤解されがちだが、売上に貢献する要素は多数(例:広告、ブランディング)
・大企業・行政との取引には「セキュリティ対策」が必須
・リスク管理の観点からも、「保険」よりも遥かにコストパフォーマンスが良い
・経営者のマインドセットとして、投資=成長のための手段
・サイバーセキュリティ対策は攻守ともに利益を生む手段と考えよう
【登壇者紹介】
安達 裕哉(あだち・ゆうや)
ティネクト株式会社 代表取締役/ワークワンダース株式会社 代表取締役CEO
Deloitteにてコンサルティング業務に従事後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサル部門立ち上げに参画。大阪・東京支社長を経て、2013年にティネクト株式会社を設立。
ビジネスメディア「Books&Apps」運営。2023年には生成AIコンサルティングの「ワークワンダース株式会社」も設立。
著書『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)は累計82万部突破。2023年・2024年と2年連続で“日本一売れたビジネス書”に(トーハン/日販調べ)。
日時:
2025/7/14(月) 16:30-18:00
参加費:無料
Zoomビデオ会議(ログイン不要)を介してストリーミング配信となります。
お申込み・詳細
お申し込みはこちら東京都令和7年度中小企業サイバーセキュリティ啓発事業「経営者向け特別セミナー兼事業説明会フォーム」よりお申込みください
【著者プロフィール】
安達裕哉
元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。
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