「『万里の長城』のように店舗を作る」。愛知県・知多半島を地盤とし、ガソリンスタンドやリフォーム店、飲食店など計33店舗を展開するエネチタ(愛知県阿久比町)。後藤康之社長は社長室の壁に張られた地図を指し示しながら力を込めた。地図には自社の店舗の場所がプロットされているほか、広告看板が置かれた場所にオレンジ色のピンが刺さっている。

エネチタの後藤康之社長は「『万里の長城』のように店舗を作る」と独自の出店戦略を語った
エネチタの後藤康之社長は「『万里の長城』のように店舗を作る」と独自の出店戦略を語った

 エネチタは知多半島エリアの5市5町を地盤とする。外敵である大手チェーンなどから、いかに自らの商圏を守るか。そのためにエネチタが築こうとしているのが、後藤社長の語る「万里の長城」だ。

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半島の“外周”に「万里の長城」

 エネチタは知多半島の“外周”に当たる半島北側から東側エリアに、今後5年で15~20店を集中出店する計画だ。外周で戦えば「ライバルは自分のところの戦いで忙しくなり、半島内へは来る暇がなくなるはず」(後藤社長)。

 狙いは守りだけではない。知多半島の人口は60万人規模だが、外周のエリアにも同規模がある。「万里の長城」を築けば売上高も現状の約105億円から約300億円まで引き上げられると見込む。

 エネチタの出店戦略やブランディング戦略は独特だ。まず店舗網のメッシュが細かい。例えば、リフォーム店についてはライバルの全国チェーンが知多半島に2店舗しかない中で、エネチタは4店舗も出している。店舗を増やせば、その分コストは増える。それでも後藤社長は「店舗数が多い方が、お客様が買ってくれる率が高くなるというデータがある。元は取れる」と強調する。

 またライバルのような大型店ではなく、小型店をきめ細かく出店する方針も掲げている。小型店は店員が少なく、人員管理の負荷も少ない。個々の能力に左右されず、店長を選びやすい利点があるという。さらに「顧客は自分の求めているものだけを豊富に用意してほしい」という考えの下、リフォーム分野の中でも給湯器については「給湯王」という別ブランドで展開する専門店化も進めている。

エネチタはリフォーム事業などを手がける
エネチタはリフォーム事業などを手がける

 独自戦略を貫くことで成長するエネチタ。だが、かつては窮地に立たされたこともあった。後藤社長は先代社長の父親が急死して2005年に社長就任。当時、自身はたまに出社する程度で、大手企業出身の幹部らに事業の多角化を進めさせていたが、ある日突然、幹部らから「僕らで経営しますので社長は会社に来ないでください」と言われたという。「これはまずいと思った」(後藤社長)。

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