行動経済学

また別の視点から引きの強さについて考えてみます。 【引きが強い人は、偶然に見せかけた必然を起こしている？】 「この人、ほんとに引きが強いよね」。ガチャや抽選で当たりを連発する人を見ると、つい「運がいいなあ」と思いがちです。でも、その“引きの強さ”は本当に偶然だけの産物なのでしょうか？ 実は、心理学や行動経済学の視点から見ると、引きが強い人の多くは、日常の中で無意識に「勝てる選択行動」を積み重ねている可能性が高いのです。 【「運」と「引き」は別物】 「運」は制御不可能な偶然の結果。一方で「引き」は、その偶然を味方につけるための準備や習慣、選択の質によって左右されます。 たとえば、くじ引きでも「ど…

時間の価値を測る最新研究 はじめに 私たちは毎日、時間という資源を使って意思決定を行います。 ところが、同じ１時間でも「仕事に使うとき」と「余暇に使うとき」では感じる重みがまったく異なります。 経済学では古くから「機会費用」という考え方で時間の価値を金銭換算してきましたが、行動経済学の発展により、人は必ずしも合理的に時間を評価できないことが明らかになってきました。 時間選好と現在バイアス 行動経済学の代表的概念である「現在バイアス」は、将来よりも現在を過大評価する傾向です。 具体的には、将来１万円を受け取るよりも、いま９千円を受け取る方を選びやすいといった非合理的決定を指します。 2024年1…

昨日の記事には、たくさんのブックマークコメントをお寄せいただき、誠にありがとうございます。 「読みづらい」「経営者側の立場から心理学の研究成果を利用するのをやめてほしい」といった貴重なご意見、しっかりと拝見いたしました。 現在作成済みの記事は予定通り投稿させていただきますが、今回のコメントは、自身の記事のレイアウトや内容、そして伝え方について深く考え直す大変貴重な機会となりました。 今後も、皆様からのご意見を真摯に受け止め、試行錯誤を重ねながら、より良いブログとなるよう改善に努めてまいりますので、引き続き当ブログをよろしくお願いいたします。 第7章 実践的ガイドライン 行動経済学に基づくインセ…

第1章 インセンティブの基本的な仕組み ① インセンティブとは何か インセンティブとは、人々の行動を動機づけるための外部的または内部的な刺激のことを指します。 給与や賞与といった金銭的報酬は代表的な外部的インセンティブであり、達成感や社会的承認といった内発的な報酬もインセンティブの一種です。 これらは経済学や心理学の分野において、個人や集団の行動を分析する際に広く活用されてきました。 行動経済学では、インセンティブの設計がどのように意思決定や人間関係に影響を与えるのかが重視されます。 とりわけ、短期的な成果に焦点を当てるのか、長期的な成長や信頼関係の構築を促すのかという視点は、職場環境において…

皆さん、こんにちは。本ブログは行動経済学を実際のビジネスに適用していくことを主目的としています。 行動経済学の理論を中心に、行動心理学や認知心理学、社会心理学などの要素も交え、ビジネスの様々なシーンやプロセス、フレームワークに適用し、実践に役立てていきたいと思っています。 「ドミナント戦略」と聞いたとき、あなたはどのような戦略を思い浮かべるでしょうか。 出店か支配かの分岐点（DALL･Eで作成） もし「出店戦略」の方を思い浮かべたなら、実務現場で培った経験や感覚に基づいて行動を重視する“実践派”かもしれません。逆に「ゲーム理論上の支配戦略」が先に浮かんだ方は、データや論理を重視する“理論派”タ…

ストレスとコーピング理論に基づく 柔軟な働き方と会議の最適化 ～行動経済学を活用した職場環境改善の実践～ はじめに 現代の職場において、従業員のストレス管理と生産性の両立は大きな課題となっています。 多様な働き方へのニーズが高まる中で、「フレキシブルな勤務時間制度」は、ストレスの軽減やワークライフバランスの向上に寄与する制度として注目されています。 同時に、業務効率を高めるためには、日常的に行われる「会議」の質の向上も不可欠です。 この記事では、心理学的枠組みである「ストレスとコーピング理論」をベースに、フレキシブルな勤務時間制度がどのようにストレス低減に役立つのかを分析しつつ、行動経済学の知…

第8章：企業の成功事例から学ぶ実践知 ① 金融業界：朝礼改革と健康スコアの導入 ある大手都市銀行では、社員の健康をテーマにした「朝の5分間ミーティング」を制度化し、アジェンダを毎日メールで配信しています。 健康テーマ（例：「今日の健康習慣」「睡眠の質を上げるには」など）を軸に、毎日1人ずつ社員が自分の工夫を共有します。 この施策により、社員同士の関係性が強化され、メンタル面での支え合いが自然に起こるようになりました。 また、参加率の向上を目的に、社内ポイント制度と連携し、健康行動へのインセンティブも提供しています。 ② 製造業界：歩数コンテストとアジェンダ共有 地方に工場を持つ製造業企業では、…