はてなで働くエンジニアにアンケートシリーズ第29回は、技術グループのマネージャー、id:daiksyに話を聞きました。

アルムナイ入社第1号
── Q. はてなidとその由来を教えてください
はてなidは daiksy です。 本名の粕谷大輔をもじっています。 Daisuke Kasuya -> Daisuke Kasuya -> DaiKsy -> daiksy です。
インターネットでハンドルネームを使う際はだいたいこれを使っています。 “だいくしー”と読んでほしいのですが、daiskyと誤読されて”だいすきー”さんと呼ばれることも多く、その場合ちょっと恥ずかしい気持ちになります。
とある技術カンファレンスのパネルディスカッションに英語話者と登壇したことがあり、その人が「ダイクストラの論文では...」と発言した際、エドガー・ダイクストラをご存知なかった同時通訳の方が「だいくしーさんの論文では...」と通訳され、突然自らにアカデミックなプレッシャーが押し寄せて困惑したことがありました。
── Q. いつどんなきっかけで入社されましたか?
2024年5月に入社しました。アルムナイ勢です。その前は2014年の入社でした。
SIの会社に勤めていたとき、Web系の会社でチャレンジをしたいと思い、その時にはてなの選考を受けようか考えました。ですが、実力不足な気もして、たまたま繁華街を歩いていたら占いの店が目に止まり、ふと思い立って占い師に「はてなという会社の選考に受かるかどうか占ってください」と頼みました。その占い師から、「受かったとしても、あなたがそれほど悩んでいるということはうまくいかないだろう。止めたほうが良い」ということを言われ、結局は応募せずに別の会社に転職することにしました。
その後、モバイルゲームの会社で仕事をしていた際、当時開発本部長だったid:chris4403 (現社長)にMackerelのエンジニアを探している、と声をかけてもらい、入社することになりました。
Mackerelチームでアプリケーションエンジニアとして入社し、6年間過ごしました。後半3年はディレクターとしてマネージメントを経験し、自分のマネージメントスキルに再現性があるのか腕試しがしたいという気持ちもあり、一度はてなを離れました。
3年間他社でエンジニアリングマネージャーとして働きましたが、そこでの仕事が一区切りしたタイミングで、キャリアについて考えた際、はてなのことを思い出しました。はてなを離れた際は、扱っているプロダクトよりも開発チームそのもののマネージメントに興味があって、そこでの活躍の場を求めていました。いざはてなを離れてみると、扱っているプロダクトそのものの面白さや、複数のプロダクトを扱う技術組織の活動の面白さが懐かしくなりました。そしてこの3年で身につけたスキルや経験があれば、かつてよりもはてなに貢献できるのではないか、という思いが強くなり、2024年5月にエンジニアリングマネージャーとして採用してもらいました。いわゆるアルムナイ採用です。
自分が出戻り第1号でしたが、その後事例が増えて、現在は3名の人がアルムナイ入社されています。自分の事例が何かしらのきっかけになっていたとしたら嬉しいです。
職種組織の専任マネージャ
── Q. 現在の仕事を教えてください
技術グループ専任のエンジニアリングマネージャーです。
はてなには、エンジニア全員が所属している技術グループというものがあります。はてなのエンジニアは、組織図上この技術グループと、事業ごとのプロダクト開発チーム両方に所属しています。いわゆるマトリクス組織です。
技術グループは、所属するエンジニアが100人を超える規模になり、全員が兼務である状態で運用することが徐々に難しくなっていたことから、専任のマネージャーを配置することになり、自分がそれを担当しています。また、専任のマネージャーとして全社横断的な技術組織内でフレキシブルに動けるので、新しいことにもチャレンジしやすくなったと思っています。あと、採用などはある程度組織全体を俯瞰的に見たほうが良いケースもあり、自分が貢献しやすい分野でもあります。
自分の仕事は、技術グループの運用をCTOと分担して行っています。 CTOは主に技術やプロダクトにフォーカスし、組織づくりやピープルマネジメントを自分が担当しています。
人事と連携してエンジニア採用にも強く関わっていて、エンジニア採用のカジュアル面談のほとんどを担当したり、採用プロセスの改善などを担っています。
また、自分がエンジニアリングマネージャーであることから、エンジニアリングマネージャーによる技術組織の階層的なマネージメント体制を整備しようとしており、そのための採用や仕組みづくりを手掛けています。現在は他のエンジニアリングマネージャーたちと一緒に技術組織のマネージメント職のキャリアラダーを作成しているところです。
── Q. チーム内の立ち位置を教えてください
横断組織のマネージャーということで、特定のチームに所属しているわけではありません。しかし、はてなには自分とCTOを含めて8名の「チーフエンジニア」という役職のエンジニアがいて、チーフの人たちと相談しながら物事を進めることが多く、この人たちがチームメンバーだという気持ちで仕事をしています。
チーフエンジニアは技術に優れた人が多く、その中では自分は組織づくりやプロジェクトマネージメントに強みを持っていてやや毛色が異なるのですが、だからこそ協力し合うことで幅広い課題に取り組めるチームのような集まりになれていると思います。

目先のわかりやすい成果に囚われず取り組んでいく
── Q. 今日一日の流れを教えてください
朝の支度を終えたら、ラジオ体操とストレッチをしてから自宅の仕事スペースに入ります。9時半ごろから仕事をはじめることが多いです。
10時からオンラインで全社の朝会があるので、それまでの間に各種転職支援サイトでスカウト候補者さんのリストをチェックし、マッチ度の高い候補者さんがいた場合は自分でスカウトを書きます。
全社での朝会が終わると、CTOとの1on1が1日の本格的な仕事開始のきっかけです。自分は技術グループマネージャーという立場なので、具体的に所属しているチームがありません。なので、チームの朝会のようなものがないため、毎朝のCTOとの1on1が、チーム朝会で得られるような、仕事開始のリズムをつくるきっかけになっています。
だいたい毎日カジュアル面談などの採用面接の枠があるので、最初にその日予定している面談(面接)の準備をします。候補者さんのプロフィールをじっくり読み込む時間です。
それ以外の時間で、エンジニア組織の将来像を考えたり、エンジニアの育成についての調査をしたりします。組織づくりに関する論文を情報収集として読むことも多いのですが、最近はその際にはGoogle NotebookLMがとても便利です。論文や、その論文で引用されている参考文献などを入手して、NotebookLMに取り込み、AIと対話しながら、文章を読み込んだり、メモを出力したりします。
技術グループメンバーや、プロダクト開発チームのマネージャーからの相談が寄せられることも多く、その場合は1on1で対話をすることが多いです。
自分のような仕事は、1日の大半がミーティングで終わってしまう状態になりがちなのですが、突発的な相談をその場で受ける余裕を残しておきたいので、できるかぎりカレンダーには余裕を持たせたいと思っています。今のところはカレンダーの空きは維持できていますが、これがいつまで続くやら、と少し怯えています。
── Q. 最近うまくいったことは何ですか?
技術グループマネージャーとしての仕事をはじめて半年くらい経ったころに、エンジニア全員を対象としたアンケートで、率直に自分の仕事に対するコメントをいただくための項目をつくりました。
少し組織の運用が良くなった、という意見をたくさんいただき、まずは最初の半年の成果としては及第点をもらえたのではないかな、と思っています。
今年はDevOpsDays Tokyo 2025のオープニングキーノートという大役をいただいたのですが、その講演でははてなの歴史と、DevOpsの歴史を並べて紹介するという講演をさせていただきました。その準備として、はてなの技術組織や、開発体験の歴史を時間をかけて調査したのですが、この経験が思った以上に自分にとって良い体験でした。技術組織のマネージャーとして仕事をするうえで、会社の文化的なコンテキストを学ぶのにとても役に立ちました。
他には、今年のサマーインターンシップの実行委員長を担当しています。はてなのサマーインターンシップは、前半の講義パートと、後半に実際のプロダクト開発チームに入っての実践パートとの2段階の構成が特徴です。今年は、前半パートを拡張して、講義パートのみ参加可能な枠を新設しました。受け入れ人数が増えるため、その分予算も多く必要になるのですが、企画書を作成して経営会議で当初の構想どおりの案を承認していただきました。課題やそれに対する打ち手をうまく説明できて、企画書もよく書けていたよと褒めていただき、ほっとしています。
── Q. 最近うまくいってないことは何ですか?
マネージャーとして就任直後は、まずはメンバーのみなさんとの信頼関係の構築を主眼として、比較的成果がはやく出やすい仕事を優先してやっていました。
その結果、一つ前の回答をしたように、アンケート結果で技術グループマネージャーが就任したことによるプラス面を実感していただけたかなと思うので、いよいよ組織課題の本丸に取り組んでいくことになります。これは、成果がすぐに出る仕事ではないため、なかなか自分の仕事がうまくいっているのかがわかりづらい仕事になります。
目先のわかりやすい成果に囚われず、粘り強く取り組んでいく必要があるので、うまくいっているかいないかを拙速に判断せずにじっくり取り組んでいきたいです。
多様な構造の組織をマネジメントしていく
── Q. ふだん大切にしていることは何ですか?
エンジニアのみなさんや、これまでのはてなを支えてきたエンジニアリングマネージャのみなさんが大切にしていることを極力壊さないことに気をつけています。
エンジニア組織全般をマネージメントしていると、時には破壊的な変更を伴う施策を行うこともあると思うのですが、その際も、粘り強く皆さんの声に耳を傾け、みなさんが大切にしていることを尊重しながら改革をしていきたいです。
── Q. はてなはどんな会社ですか?
会社の規模はそんなに大きくはないのですが、その割に扱っているプロダクトが多岐にわたるのが特徴の一つかなと思います。前述のように、はてなの歴史を調べたときにも、すでに終了しているものも含めこれほど多くのサービスをこれまで作ってきたのかと驚きました。
複数のプロダクトごとに担当する専任のチームがあり、そのチームにかなりの裁量があります。そのため、おなじ会社ではあっても開発チームの雰囲気はそれぞれに個性があります。技術組織全般をマネージメントする立場としては、技術組織全体がなるべく均一であるほうがやりやすいのでしょうが、はてなはとても多様な構造になっています。だからこそやりがいもあり、エンジニアリングマネージャーとして大きく成長できる会社であるなと実感しています。