スプーキーじいさんって何考えてるの!?

貧乏・暇なし・不健康。一人暮らしのじいさんのブログです。このブログに広告とか金儲けは入っていません。スターは一個だけ付ける主義です。

映画と私 15

こないだNHK-BSで『アパートの鍵貸します1960年)』をやっていたので、その感想を書きます。
ネタバレ有りなのでご注意を!

 

 

映画ファンには説明不要の人気作です。
私の場合は子供の頃にテレビで一回観たきりで、今回数十年ぶりに観たので初見のようなものです。
監督はビリー・ワイルダーアメリカの映画界を代表する巨匠です。
主演はジャック・レモン、そのお相手はシャーリー・マクレーン
この映画はアカデミー賞やらゴールデン・グローブ賞やらにノミネートされたり受賞したりして、かなりの高評価を受けています。

 

 

 

あらすじはこうです。

ニューヨークの大手保険会社の平社員・バクスター演:ジャック・レモン)はアパートで一人暮らしをしていて、四人の上司の「愛人との逢瀬」のために自分の部屋を貸していた。
それぞれの上司の希望を聞き、スケジュールを調整して、部屋が使われている間は自分は帰れない生活を続けていた。
その代わりに自分の社内での評価を水増ししてもらっていたのだ。
そんな中で、会社のエレベーターガールの一人のフラン演:シャーリー・マクレーン)は誰の誘いにも乗らないと評判で、バクスターも心惹かれていた。

フランとバクスターは顔見知りで軽口を交わし合う仲だった

 

バクスターは四人の上司よりも上にいるシェルドレイク部長にも部屋を貸すことになり、見返りに『ザ・ミュージックマン』という人気のミュージカルのチケットを受け取り、そのチケットでフランを誘う。
フランは先約があると断るが、待ち合わせしている彼の気持ちが覚めてしまったと言う。
そして熱心なバクスターのために、ミュージカルが始まる20時半からならと約束をしてしまう。

 

フランが約束していたのは実はシェルドレイクで、妻子あるシェルドレイクとの付き合いにフランは希望を見いだせず別れるつもりでいたが、強引なシェルドレイクに押し切られてしまい、バクスターとの約束を破る。

 

バクスターは上司たちのおかげで出世していた。
そしてクリスマスになり、社内ではお祭り騒ぎのパーティが開かれていて、バクスターはフランを自分に初めて与えられた個室へ招待して乾杯する。
しかしその前にフランはシェルドレイクの秘書から彼の女性遍歴と手口を聞かされて落ち込んでいた。

自分も過去の女性たちと同じだった。
そしてバクスターは、偶然フランのお相手がシェルドレイクだということを知ってしまう。
結局二人の関係は続いていて、この夜も二人でバクスターの部屋を利用するのだ……

 

傷心したバクスターはバーで一人で飲んだくれて、偶然知り合った人妻と意気投合していた。
一方のフランはシェルドレイクとバクスターの部屋にいて、フランは秘書から聞いた話が原因で泣いていた。
妻子が家で待つシェルドレイクは泣くフランを適当にあしらって帰ってしまう。
絶望したフランはバクスター睡眠薬を見つけてしまい、残りを全部飲んで自殺を図る。

 

人妻と一緒に部屋に帰ってきたバクスターは、倒れていたフランを見つけて驚き、お隣の部屋の住人である医師を呼び、人妻を強引に帰らせる。
医師の処置のおかげでフランは一命を取り止め、バクスターは自分が原因だと嘘をつく。
普段から部屋でのことも全部自分のやっていることだと嘘をついていたので医者は話を信じて、バクスターに対してフランがまた自殺する可能性があることと、彼に遊びすぎないようにと苦言を残して去る。

 

バクスターはかいがいしくフランの世話をしながら、睡眠薬自殺のことをシェルドレイクに電話で伝えるが、シェルドレイクはバクスターに全てを押し付けてしまう。
また居候している姉夫妻に電話をしようとするフランを、却って心配させるからと押し留める。
そこへいつもの上司が女を連れてきたのをバクスターは追い返すが、寝ていたフランの顔を見られてしまう。
結局その後二人は会社を無断欠勤してしまった。

フランの気を紛らわすためにカードゲーム「ジン・ラミー」をやりながら
沢山のおしゃべりをするバクスター

 

シェルドレイクはフランに入れ知恵した秘書をクビにするが、秘書は腹いせにシェルドレイクの妻に全てを話してしまう。
回復してきたフランとバクスターは親密になっていき、二人で食事しようとしたところに心配した義兄が会社でバクスターのことを聞いてやって来る。
バクスターの部屋でフランを見てしまった上司がバクスターのことを教えたのだ。
バクスターはまたも自分が原因だと義兄に嘘をつき、義兄に殴られてしまう。
そして義兄に連れ去られるフラン。

 

後日、バクスターはフランとシェルドレイクの関係は終わったと思い、フランを自分が引き受けるつもりでいたが、シェルドレイクは妻に家から追い出されていて、これでフランと一緒になれると喜び、今後もバクスターを利用するために隣室に部長補佐として置く。
こないだまで平社員だったバクスターは短期間で驚異的な出世をしたことになる。
シェルドレイクとの関係が前進したことをフランは喜び、バクスターはシェルドレイクを利用して出世して新しい彼女も出来たとフランに嘘をつく。

バクスターはフランに対する恋心を隠し
上手く立ち回ったフリをする

 

晦日、シェルドレイクはまたバクスターに部屋を貸すよう言うが、自分の部屋をフランと使われることに耐えられないバクスターは断り、会社も辞めてしまう。
自分のしてきたことに嫌気が差していたのだ。
ニューヨークから去って新しい仕事を探すために、バクスターは荷造りをしていた。
そこへ氷をもらいにやってきたお隣の医師が、バクスターの話を聞いて別れを惜しむ。

実は二人は仲が良い
寂しい別れになってしまった

 

年越しパーティに参加していたフランは、シェルドレイクとの関係に大した変化がないことに諦めを感じていた。
そしてシェルドレイクから、バクスターが会社を辞めたこと、部屋を貸さなかったこと、フランが来るならなおさらだと言ったことを聞き、バクスターと自分自身の本当の気持ちに気付く。
そしてフランはパーティから抜け出しバクスターの部屋へ行き、思い切ってフランに告白するバクスターを無視して、ジン・ラミーを始めるのだった。

バクスターの告白の返事はしないが笑顔のフラン

 

さて、長いあらすじになってしまいました。
ブコメだけど笑いとロマンスだけではなく、結構湿っぽい話になってますね。
ただ愛人とか不倫とかが出てくるわりには、直接的な描写がなかったのは良かったです。

 

私はこの映画が評価されるのは分かります。
ジャック・レモンの演技は秀逸で、軽快なコメディにピッタリです。
アメリカ映画らしいクスッと笑えるシーンが多くて、さすがだと思いました。
ちょっとだけザキヤマに似てますね(笑)
一方のシャーリー・マクレーンは可愛らしいですね。
美人とは違って、同じ会社にいたら仲良しになりたくなるような親しみやすさがあります(まだ存命だそうですよ)。
シェルドレイク役のフレッド・マクマレイも、憎まれ役を見事に演じています。

 

ただ私は満点は付けられませんでした。
正直、テンポが良くないと感じたからです。
それはたぶん、私が今の日本にいてテレビや映画やアニメなどを沢山見ているからでしょう。
1960年頃より今のほうがスピード感が求められている結果、より速い展開に見ているほうが慣れてしまっているのです。
あとこの映画より数年前に公開されている『ローマの休日』に比べると、ストーリーがモタついてる感じはあります。
もちろんそれはここに登場する人たちの心情を表現するためだし、どうなるか分からない物語で観客を引き付けておこうとしているのは分かります。
でも私の理想としては、もっとテキパキ進めてほしかったです。

 

 

 

1960年頃のニューヨークが見られると思っていたら、ほとんどがセットの中での撮影だったのは残念でした。
でも大企業のビルの中の様子とか、当時の独特な文房具の使い方が見られてよかったですけどね。
エレベーターガールの他にエレベーターホールで指揮する女性がいたりして
あと驚いたのは、この映画にもTVディナーが登場していたこと!

赤い線で囲ったのがTVディナー

TVディナーは前にちょっと書きました、アメリカで昔から売られている冷凍食品です。
複数の料理が入っていて、温めるだけでテレビを見ながらディナーを楽しめるという商品です。
この映画の場合は電子レンジではなくガスレンジで加熱してました、時代ですねぇ。
しかもマッチで点火していて、私はそういうのは見たことがないです。
コンロだとマッチで点火するものはありましたけど。

 

それから上の画像の右端にあるボタンの付いた白い箱は、テレビのリモコンです。
当然IR接続やBluetoothではなくて、テレビの操作部をケーブルを伸ばして手元に置けるようにしたものです。
チャンネルを変えるのにダイヤルを回しているのが見えて興味深いです。
一人暮らしのバクスターがテレビを見ながらTVディナーを食べるという、当時の都会では当たり前のシーンが今見るとこんなに新鮮とはねー!
映画というのはいつの時代も、それぞれの時代の風俗を記録してますね。

 

ミュージカルの『ザ・ミュージックマン』というのは実際にあったもので、1957年にブロードウェイで初演されています。
それからカードゲームの「ジン・ラミー」はトランプで二人で対戦するゲームで、他の映画にも登場しているそうです。
あとバクスターの部屋はいいですよね。
ニューヨークでサラリーマンをしながら住むにはかなり広いし、雑然としているもののオシャレな感じがします。
今のニューヨークでこのくらいの部屋で一人暮らしなんて、いくら大企業の社員でも平じゃ無理でしょう。
バクスターの台所での効率的な動作も、一人暮らし歴が長い私には親しみが持てるものでした。
それから、映画やドラマの中に医師はよく出てきますけど、この映画に登場するドライファス医師(演:ジャック・クルーシェン)くらい頼もしい医師はいないんじゃないかと思いましたよ。

 

 

 

最後に。
この映画はやはり、英会話ができる人でないと100%は楽しめないのだと思います。
軽快なコメディですから、言葉選びのセンスもいいはずです。
日本で言うと『釣りバカ日誌』とか『男はつらいよ』とか、一連のクレイジー・キャッツの映画とかは、日本語を理解できないと100%楽しむことはできませんよね。
あと日本の風俗とか歴史とかも頭に入ってないといけませんし。
今回は字幕で見ましたけど、吹き替えのほうが楽しめたと思いました。

 

 

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。