Web 開発では、ファイル(作成、更新、ダウンロード)を処理するときにバイナリデータに出くわします。その他の典型的なユースケースは画像処理です。
これらはすべて JavaScript で可能です。また、バイナリ操作も高性能です。
ですが、多くのクラスが存在するため少し混乱しやすいです。いくつか例を挙げます:
ArrayBuffer
,Uint8Array
,DataView
,Blob
,File
, etc.
JavaScript でのバイナリデータは、他の言語と比べて非標準的な方法で実装されています。しかし、一度整理できれば、すべてがとても簡単になります。
基本となるバイナリオブジェクトは ArrayBuffer
です。これは固定長の連続したメモリ領域への参照です。
次のようにして生成できます:
let
buffer =
new
ArrayBuffer
(
16
)
;
// 長さ 16 のバッファを作成
alert
(
buffer.
byteLength)
;
// 16
16バイトの連続したメモリ領域が割り当てられ、事前にゼロで埋められます。
ArrayBuffer
は何かの配列ではありません混乱の元は排除しましょう。ArrayBuffer
は Array
とは何の共通点もありません。:
- 長さは固定で、増減することはできません。
- メモリの中で、長さちょうどのスペースをとります。
- 個々のバイトにアクセスするには、
buffer[index]
ではなく、別の “view” オブジェクトが必要です。
ArrayBuffer
はメモリ領域です。何が格納されているでしょう?それは分かりません。単に生のバイト列です。
ArrayBuffer
を操作するには、“ビュー(view)” オブジェクトを使用する必要があります。
ビューオブジェクトは自身には何も格納しません。それは ArrayBuffer
に格納されたバイトへの解釈を与える “メガネ” です。
例:
Uint8Array
–ArrayBuffer
にある各バイトを、 0 から 255 (1バイトは8ビット)までの値となる、別々の数として扱います。このような値は “8ビット符号なし整数(8-bit unsigned integer)” と呼ばれます。Uint16Array
– 各2バイトを、0 から 65535 までの値となる整数として扱います。これは “16ビット符号なし整数” と呼ばれます。Uint32Array
– 各4バイトを 0 から 4294967295 までの値となる整数として扱います。これは “32ビット符号なし整数” と呼ばれます。Float64Array
– 各8バイトを5.0x10-324
から1.8x10308
までの値となる浮動小数点として扱います。
したがって、16バイトの ArrayBuffer
にあるバイナリデータは 16 個の “小さい数字”, あるいは 8 個のより大きい数字(2バイトずつ), または 4 個のより大きな数字(4バイトずつ), 高精度の2個の浮動小数点値(8バイトずつとして解釈できます。
ArrayBuffer
はコアとなるオブジェクト、すべてのもののルート、生のバイナリデータです。
ですが、そこに書き込んだり反復しようとする場合、基本的にほぼすべての操作に対して、ビューを使用する必要があります。e.g:
let
buffer =
new
ArrayBuffer
(
16
)
;
// 長さ 16 のバッファを作成
let
view =
new
Uint32Array
(
buffer)
;
// 32 ビット整数列としてバッファを扱います
alert
(
Uint32Array.
BYTES_PER_ELEMENT
)
;
// 4 バイト毎の整数
alert
(
view.
length)
;
// 4, 多くの整数が格納されます
alert
(
view.
byteLength)
;
// 16, バイトサイズ
// 値の書き込み
view[
0
]
=
123456
;
// 値のイテレート
for
(
let
num of
view)
{
alert
(
num)
;
// 123456, 次に 0, 0, 0 (全部で 4 つの値)
}
TypedArray
これらすべてのビュー (Uint8Array
, Uint32Array
, etc) の共通の用語は、TypedArray です。これらは同じメソッドとプロパティのセットを共有します。
これらは通常の配列によく似ています: インデックスがあり、反復可能(iterable)です。
型付き配列のコンストラクタ (Int8Array
でも Float64Array
でも構いません)は、引数の種類に応じて異なる振る舞いをします。
5 つの引数のパターンがあります:
new
TypedArray
(
buffer,
[
byteOffset]
,
[
length]
)
;
new
TypedArray
(
object)
;
new
TypedArray
(
typedArray)
;
new
TypedArray
(
length)
;
new
TypedArray
(
)
;
-
ArrayBuffer
の引数が与えられると、それに対するビューが作られます。我々はすでにその構文を使いました。オプションで、
byteOffset
で開始位置(デフォルトは 0)、length
で長さ(デフォルトではバッファの終わりまで) を指定することができ、その場合はビューはbuffer
の一部だけをカバーします。 -
Array
または配列ライクなオブジェクトが与えられた場合は、同じ長さの型付き配列を生成し、内容をコピーします。これを使って配列にデータを事前に埋め込むことができます:
let
arr=
new
Uint8Array
(
[
0
,
1
,
2
,
3
]
)
;
alert
(
arr.
length)
;
// 4
alert
(
arr[
1
]
)
;
// 1
-
別の
TypedArray
が与えられた場合も同じです: 同じ長さの型付き配列を生成し、値をコピーします。値はその処理の中で新しい型に変換されます。let
arr16=
new
Uint16Array
(
[
1
,
1000
]
)
;
let
arr8=
new
Uint8Array
(
arr16)
;
alert
(
arr8[
0
]
)
;
// 1
alert
(
arr8[
1
]
)
;
// 232 (1000 をコピーしようとしますが、1000 は 8 ビットには収まりません(1000 は 11 1110 1000, 232 は 1110 1000)
-
数値引数の場合は
length
であり、その数の要素を含む型付き配列を作成します。そのバイト長は、一つあたりのアイテムのバイト数TypedArray.BYTES_PER_ELEMENT
がlength
倍されたものになります。:let
arr=
new
Uint16Array
(
4
)
;
// 長さ 4 の型付き配列を作成します。
alert
(
Uint16Array.
BYTES_PER_ELEMENT
)
;
// 要素あたり 2 バイトです
alert
(
arr.
byteLength)
;
// 8 (バイトサイズ)
-
引数がなければ、長さゼロの型付き配列を作成します。
ArrayBuffer
に言及することなく、直接 TypedArray
を作成することができます。しかし、ビューはその根底にある ArrayBuffer
なしでは存在できないため、最初のケース(ArrayBuffer
が与えられた場合)を除く、すべての場合に自動的に作成されます。
ArrayBuffer
にアクセスするには、次のプロパティを使います:
arr.buffer
–ArrayBuffer
への参照です。arr.byteLength
–ArrayBuffer
の長さです。
そのため、いつでもあるビューから別のビューへ移動させることができます。:
let
arr8 =
new
Uint8Array
(
[
0
,
1
,
2
,
3
]
)
;
// 同じデータを別のビューで
let
arr16 =
new
Uint16Array
(
arr8.
buffer)
;
型付き配列の一覧です:
Uint8Array
,Uint16Array
,Uint32Array
– 8, 16, 32 ビット整数の場合Uint8ClampedArray
– 8ビット整数の場合、代入時に “クランプ” します (下記参照)。
Int8Array
,Int16Array
,Int32Array
– 符号付き整数の場合(負の値になることもあります)。Float32Array
,Float64Array
– 32, 64 ビット符号付き浮動小数点の場合。
int8
またはそれに類似した単一値の型はありません注意してください、Int8Array
のような名前にもかかわらず、JavaScript には int
あるいは int8
のような単一値の型はありません。
繰り返しますが、Int8Array
はこれらの個々の値の配列ではなく、ArrayBuffer
のビューです。
範囲外の動作
もし範囲外の値を型付き配列に書き込もうとするとどうなるでしょう?エラーにはなりませんが、余分なビットが切り捨てられます。
例えば、256 を Uint8Array
に置くことを考えてみましょう。二進法(バイナリ形式)では、256 は 100000000
(9ビット)ですが、Uint8Array
は値ごとに 8 ビットしか提供せず、0 から 255 までの範囲です。
範囲を超えるようなより大きい数値の場合、(重要度の低い)右端の8ビットだけが格納され、残りは切り捨てられます。:
そのため、ゼロになります。
257 の場合、二進法は 100000001
(9ビット)で、右端の 8ビットが格納されるので、配列には 1
が入ります。:
デモです:
let
uint8array =
new
Uint8Array
(
16
)
;
let
num =
256
;
alert
(
num.
toString
(
2
)
)
;
// 100000000 (二進表現)
uint8array[
0
]
=
256
;
uint8array[
1
]
=
257
;
alert
(
uint8array[
0
]
)
;
// 0
alert
(
uint8array[
1
]
)
;
// 1
Uint8ClampedArray
はこの点で特別で異なる振る舞いをします。これは、255 よりも大きな値の場合は 255 を、負の値の場合には 0 を格納します。これは画像処理の場合に役立つ振る舞いです。
TypedArray メソッド
TypedArray
は通常の Array
のメソッドを持っていますが、注目すべき例外があります。
map
, slice
, find
, reduce
等を使用してイテレートすることができます。
ですが、できないことがいくつかあります:
splice
はありません。型付き配列は buffer のビューであり、これらは固定された連続したメモリ領域であるため、値を “削除” することはできません。できることは、ゼロの代入です。concat
メソッドはありません。
2つの追加のメソッドがあります:
arr.set(fromArr, [offset])
はfromArr
のすべての要素をarr
へ、位置offset
(デフォルトは 0) を開始点としてコピーします。arr.subarray([begin, end])
はbegin
からend
(排他的)までの同じ型のビューを作成します。これはslice
メソッドに似ています(このメソッドもサポートされています)が、何もコピーしません。単に指定されたデータ範囲を操作するための新しいビューを作成するだけです。
これらのメソッドにより、型付き配列のコピーしたり、ミックスしたり、既存の配列から新しい配列を作成したりすることができます。
DataView
DataView は非常に柔軟な ArrayBuffer
に対する “型指定のない” ビューです。あらゆるフォーマットの任意のオフセットのデータにアクセスすることができます。
- 型付き配列の場合、コンストラクタはフォーマットが何であるかを決定します。配列全体は不変になります。i 番目の数値は
arr[i]
です。 DataView
では、.getUint8(i)
や.getUint16(i)
メソッドでデータにアクセスします。フォーマットはコンストラクタ時の代わりに、メソッド呼び出し時に指定します。
構文:
new
DataView
(
buffer,
[
byteOffset]
,
[
byteLength]
)
buffer
– 基礎となるArrayBuffer
です。型付き配列とは異なり、DataView
はそれ自身では buffer は作成しません。事前に用意する必要があります。byteOffset
– ビューの開始バイト位置(デフォルトは 0)です。byteLength
– ビューのバイト長(デフォルトはbuffer
の最後まで)です。
例えば、ここでは同じバッファから異なるフォーマットで数値を取り出します。:
let
buffer =
new
Uint8Array
(
[
255
,
255
,
255
,
255
]
)
.
buffer;
let
dataView =
new
DataView
(
buffer)
;
// オフセット 0 で、8ビットの数値を取得します
alert
(
dataView.
getUint8
(
0
)
)
;
// 255
// オフセット 0 で、16ビットの数値を取得します、つまり 2バイトです
alert
(
dataView.
getUint16
(
0
)
)
;
// 65535 (16ビット符号なし整数の最大値)
// オフセット 0 で、32ビットの数値を取得します
alert
(
dataView.
getUint32
(
0
)
)
;
// 4294967295 (32ビット符号なし整数の最大値)
dataView.
setUint32
(
0
,
0
)
;
// 4バイトの数値を 0 にセット
DataView
はフォーマットが混在したデータを同じバッファに格納するときに役立ちます。E.g 一連のペア(16ビット整数、32ビット float)を格納します。その後、DataView
は簡単にそれらにアクセスすることができます。
サマリ
ArrayBuffer
は基本となるオブジェクトで、固定長の連続したメモリ領域への参照です。
ArrayBuffer
に対するほとんどの操作は、次のビューが必要です。
TypedArray
:Uint8Array
,Uint16Array
,Uint32Array
– 8, 16 あるいは 32 ビットの符号なし整数の場合Uint8ClampedArray
– 8 ビット整数の場合。代入時に “クランプ” しますInt8Array
,Int16Array
,Int32Array
– 符号あり整数値の場合(負の値もあり)Float32Array
,Float64Array
– 32, 64 ビット符号あり浮動小数点
- もしくは
DataView
– フォーマットを指定するメソッドを使用するビューです。例えば、getUint8(offset)
.
多くの場合、ArrayBuffer
を隠したまま、直接型付き配列を作成し操作します。.buffer
でアクセスすることができ、必要に応じて別のビューを作成することができます。
その他に2つの用語があります:
ArrayBufferView
はこれらすべての種類のビューの総称です。BufferSource
はArrayBuffer
もしくはArrayBufferView
の総称です。
これらはバイナリデータを操作するメソッドの説明で使用されています。BufferSource
は最も一般的な用語で、“あらゆる種類のバイナリデータ” – ArrayBuffer
またはそれを覆うビュー、を意味します。
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