〜包装と衛生の視点でちょっと気をつけたい話〜
こんにちは、らむねです。
先日、とある化粧品企画の相談で、こんな質問をいただきました。
「お菓子と一緒にコスメをセットにして販売しても大丈夫ですか?」
こういうギフトセットのアイデア、実はとてもよく見かけます。
ちょっとしたプレゼントやイベント商品などにもぴったりで、お菓子と小さな化粧品を組み合わせた企画はとても魅力的です。
でも、食品と化粧品という“カテゴリが違うもの”をセットにして販売するとなると、実は気をつけなければならないポイントがいくつかあります。
今回は、薬機法・食品衛生法の観点と包装設計(パッケージ)のポイントを中心に、食品と化粧品を一緒に販売するときに注意したい点を、わかりやすくまとめてみました。
1. 食品と化粧品、一緒に売っても大丈夫?
まず最初にお伝えしたいのは…
✅ 食品と化粧品をセットで販売すること自体は、法律で禁止されているわけではありません。
ただし、その前提として、
という、それぞれ異なる法律のルールにきちんと従っている必要があります。
つまり、両方の商品が個別に適切に製造・包装・表示されていれば、一緒に箱に詰めて販売することは基本的に問題ありません。
とはいえ、「ルールを守っているつもり」でも、ちょっとした見落としや包装設計の甘さが、思わぬトラブルや行政指導につながることもあります。
2. 食品衛生法の視点から見た注意点
食品衛生法には、化粧品と一緒に売ってはいけないという規定はありません。
しかし、「衛生上の配慮」と「消費者に誤解を与えない表示」の2点が大事です。
✅ においや成分の移行リスクがないか
- 香りの強い化粧品(リップやバスソルトなど)が、食品と直接隣接していると、におい移りや成分の付着が問題視されることがあります。
- 個包装が不十分な場合は、「衛生面で不適切」として指導される可能性があります。
✅ 表示が混乱していないか
- 食品の成分や賞味期限、化粧品の全成分や製造販売元など、それぞれの表示義務項目が確認できること。
- 外装が化粧品と食品をまとめて包んでいて、中身が見えない・表示が読めない状態であれば、改善指導の対象となります。
つまり、「セットで売ること自体はOK」でも、その売り方に工夫と配慮が求められるということです。
3. 香りって、実際に移るの?
移ります!!
しかも、意外と簡単に。
たとえば、よくあるトラブルとしては
- 柔軟剤の隣に置いていたカップ麺に、柔軟剤の香りがうつっていた
- 化粧品とお菓子を一緒に詰めたら、飴にリップの香料がついていた
これは「香気移行(こうきいこう)」と呼ばれる現象で、香料などの揮発性成分が包装資材を通り抜けて他の製品に移動してしまうことを指します。
見た目にはしっかり密封されているように見えても、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)などの軟包材では、香料を完全に遮断できないこともあります。
このため、香りに敏感な食品(チョコやクッキーなど)では、香気移行による風味劣化のリスクが高まります。
4. 食品と化粧品、包装の構造と注意点
🍬 キャンディ・グミ(ピロー包装)
- 包装構成例:OPP//CPP
- 特徴:透明で軽くヒートシール性に優れるが、香りバリア性は弱め
🍫 チョコレート
- 包装構成例:PET//蒸着PET//PE
- 特徴:酸化や香りの移りを防ぐ高バリア設計
🍜 袋麺・スープ
- 包装構成例:ナイロン//PE など
- 特徴:湿気や酸素にある程度強いが、香気はやや通しやすい
🍛 レトルト食品
- 包装構成例:PET//アルミ箔//ナイロン//PP
- 特徴:完全密封に近い構造で、あらゆる影響を防ぐ
さらに、化粧品の容器構造もポイントになります。
- チューブやボトル、スティック型などは、使用性や保存性を考慮して設計されています。
- キャップなどで一応密閉されていますが、「容易に取り出せる構造」であるため、完全な密閉性とは異なる点に注意が必要です。
特に香料を含む製品では、容器の構造や材質によって香気移行が起こる可能性があるため、個包装や仕切りなどの工夫が必要です。
5. 安心してセット販売するためのポイント
チェック項目 | 内容 |
---|---|
✅ 個包装 | 食品・化粧品ともに未開封の状態であること |
✅ におい対策 | 香り移行が起きないよう、仕切り・別袋などで工夫する |
✅ 表示確認 | 食品と化粧品それぞれに法定表示があり、外から確認できる状態 |
まとめ:見た目の可愛さ+安心の設計を
お菓子とコスメのセット販売は、プレゼントや季節限定商品としても人気があります。
一方で、香気移行や表示の不備などがあると、食品としての信頼性が下がる可能性があります。
見た目のかわいさや企画性だけでなく、包装の機能や衛生面での配慮も、商品価値のひとつといえます。
これからセット販売を企画する方にとって、今回の内容がヒントになれば嬉しいです。
◆ お知らせ & ご案内
このブログでは、コスメに関する最新情報や原料トレンド、検定や商品開発に役立つヒントなどを発信しています。
この記事を読んで「これ、作ってみたい!」「もっと話を聞いてみたい!」と思った方は、ぜひお気軽にご連絡ください。
僕は普段、化粧品の原材料・容器・包装材料の取り扱いを中心に、製品企画や薬事の相談なども承っています。メーカーの皆さま、ぜひ仲良くしてください!
また、日本化粧品検定協会の検定対策セミナーも開催しています。受験予定の方や学び直したい方は、ぜひお気軽にご相談ください。
今後も、学びになる・発見がある・楽しい記事を発信していきます!どうぞよろしくお願いします。