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ソフトウェアテストのグローバルトレンド 2025 #scrumniigata / softwa...

ソフトウェアテストのグローバルトレンド 2025 #scrumniigata / software-test global trend 2025

スクラム新潟2025でプレゼンしました。

https://confengine.com/conferences/scrum-fest-niigata-2025/proposal/21850/2025

グローバルなソフトウェアテストにかんするサーベイであるThe State of Testing Report 2025 およびグローバルなソフトウェアテストのトップカンファレンスである ICST2024 に基づく最新データと先進的研究成果を論点として提示します。そのうえで各種ソフトウェアテストのカンファレンスと比較し、グローバルトレンドと日本国内の状態を紹介します。

組織内におけるQAチームの人数の増加傾向、AIの導入状況およびその効果、さらにテスティングに必要とされるスキルの変化を論文およびサーベイ結果を交えて紹介します。また、グローバルカンファレンスと日本国内カンファレンスの傾向を比較検討し、これらの動向とサーベイ結果との相互関係から各国のコミュニティの状況について考察します。

ソフトウェアテスト分野の現状と未来に関する議論の土台として聞いていただけます。

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kyonmm

May 10, 2025
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Transcript

  1. 2

  2. State of Testing Report 2025の紹介 • 発行元:PractiTest • 目的:多様な業界のソフ トウェアテストの動向か

    らインサイトを提供する • 調査手法:ベテランのQA プロフェッショナル、ソ フトウェア開発者、テク ノロジー・エグゼクティ ブ、ビジネスリーダーに 対するアンケート調査 • 1年未満:2.5% • 1-2年:5.5% • 3-5年:13% • 6-10年:26% • 10年以上:52% 5 概要 対象者の経験分布 • 北米:127,903$ • オセアニア:105,000$ • 西ヨーロッパ:99,479$ • 最下位からアフリカ、中 央アジア、アジアとなっ ている。 10年以上の年収レンジ 出典 : State of Testing Report 2025 PractiTest社より作成
  3. QAの重要性が増している • 北米企業のかなりの部分が地域 外で労働者を雇用しており、オ フショアやリモートワークの傾 向を示している。 • 中央アジアは依然としてQAとテ ストの人材にとって重要な場所 であり、労働者は他地域に本社

    を置く企業を頻繁にサポートし ている。 • 東ヨーロッパはテスターの新た な拠点となっているようで、同 地域に本社を置く企業の割合を 上回っている。 • 拡大するQAチームと専門化の進 展 • 自動化の浸透とAIの台頭 • 高まるQAのアカウンタビリティ と影響力 6 背景 責務の変化 出典 : State of Testing Report 2025 PractiTest社より作成
  4. サーベイのなかでおもしろかった課題3つ • 約56%の回答者がデータと プライバシーに課題を感 じている。 • 一方で次がスキル不足 • 前年度に比べてコミュニ ケーションスキルの重要

    性が増加(59% ー> 75%) • 自動化スキルはもはや基 本的なスキルとみなされ る傾向 8 AIと自動化の導入における障壁 必要なスキルの変化とアップスキリ ングの必要性 • 今後テストやQAでやって いけるか不安な人が増加 • テストマネージャーにな りたい人が35% -> 29%に 低下 • 5年後なにをやっているか わからないと回答する人 が17% -> 27%に増加 キャリアパスの不確実性と人材の定 着 出典 : State of Testing Report 2025 PractiTest社より作成
  5. AI導入における実態調査としてサーベイ論文がある • 2020年以降の論文をサーベイした。 • AIのソフトウェアテストへの導入に関 して、産業界のコンテキストを持つ最 近の研究は17件特定されたが、全体数 はまだ少なく、より多くの実証研究が 必要 •

    期待と現実の間には依然として乖離が あり、AIはソフトウェア業界のソフト ウェアテストに革命的な変革をもたら すまでには至っていない • AIのリスク、AI導入の障壁、AIへの態 度などのテーマについて、さらに詳細 な分析はまだない 10 Expectations vs Reality - A Secondary Study on AI Adoption in Software Testing Expectations vs Reality -- A Secondary Study on AI Adoption in Software Testing Katja Karhu, Jussi Kasurinen, Kari Smolander https://doi.org/10.48550/arXiv.2504.04921
  6. ソフトウェアテスト40年の歴史でも変化がおおきい • 1980年から2019年に発表された研究論文の広範なコーパスを分析し、そのトピッ クとトレンドの全体像を提供 • ソフトウェア開発の5つの段階が特定された。Specification (1980-1985)、 Detection (1985-1995)、Generation (1995-2005)、Evaluation

    (2005-2015)、 Prediction (2015年以降) 11 Evolution of Software Testing Strategies and Trends: Semantic Content Analysis of Software Research Corpus of the Last 40 Years F. Gurcan, G. G. M. Dalveren, N. E. Cagiltay, D. Roman and A. Soylu, "Evolution of Software Testing Strategies and Trends: Semantic Content Analysis of Software Research Corpus of the Last 40 Years," in IEEE Access, vol. 10, pp. 106093-106109, 2022, doi: 10.1109/ACCESS.2022.3211949. keywords: {Software testing;Content analysis;Market research;Systematics;Software engineering;Semantics;Software testing;topic modeling;trend analysis;test strategies},
  7. まとめ • scrumniigataではセッション数がすくないわりにカバレッジがたかい • 2024以降のIT系のサーベイではかならずといっていいほどAI導入にかんし て言及があるし、おおきい課題と認識されている。 • 本日紹介しなかった The State

    of Quality 2025でもかなりの紙面がさかれている。 • 一方でキャリアに不安をおぼえる人がおおいというのはSoftware Test系 ならではな気がする。 • QAの重要性があがっている一方で、人気がないのは大きな課題である。 • 学校でならっていないからという理由だけでいえばコンサルやPdMも似た領域のはず であるが就職先として人気である。給料、上流で指揮していそうというイメージが あるのかもしれない。 • 将来をみすえた実践的な内容についてはICSTの論文をよむとよさそう。 15 全体の所管
  8. 品質を軽視したスピード追求は長期的競争力を損なう • 米国の品質管理専門家エドワーズ・デミ ングは「品質は検査ではなく、プロセス の改善から生まれる」と説き、小さな改 善を積み重ねて工程全体に品質管理を組 み込めば、長期的には最低のコストで最 高の品質を実現できると主張。 • 戦後の日本の自動車メーカー(特にトヨ

    タ)はこの思想を受け入れ、当時「安か ろう悪かろう」と評判の低かった日本車 を数十年で世界トップクラスの品質へと 引き上げた。 • 一方、当時の米国自動車業界はデミング の考えを「生産を遅らせる過剰な品質管 理」と捉え一時は退けていた。その結果、 1970年代には日本車との品質競争に敗れ、 米国メーカーは「進化か死か」を迫られ る事態に陥った。 • 現代のソフトウェア開発でも 「とにかく市場投入を速く」と スピードばかりが強調される風 潮がある • 品質が伴わなければ高速リリー スにも価値はなく、結局手直し や信頼失墜によるコスト増につ ながる。 • それにもかかわらず、「市場投 入の速さ」ばかりを追求して再 び量産志向(量は質に勝る)に 陥ってはいないか。 17 プロセス全体にわたる品質向上 デリバリー速度重視なソフトウェア
  9. ソフトウェアはエンパイアステートビルに到達していない • 建設業界(建築・土木)は大規模プロ ジェクトを計画通りに進めるための綿 密な計画立案と役割分担を発達させて きた。高層ビルや橋梁といった複雑な 構造物の建設では、まず詳細な青写真 (設計図)を作成し、建築士・構造エ ンジニア・施工管理者など専門資格を 持つプロが段階ごとに責任を担う。各

    工程でのコストやスケジュールも予め 綿密に策定され、厳格に管理される。 • 例えば、数百億円規模・数年がかりの 超高層ビル計画であっても、専門家に よる計画のおかげで費用や工期の見通 しがある程度立てられる • ソフトウェア開発ではしばしば設 計と実装の役割が曖昧で、建設に たとえるなら、熟練大工が建築士 なしで超高層ビルの設計図を書き つつ施工まで行っているようなも ので、これでは無理が生じる。 • 無理を解消するために新技術開発 がされ、新技術導入をするための ストーリーを構築し、データでは なくストーリーで技術を採用しよ うとする慣習がつよい • ゆえにあとからみれば、場当たり 的な設計変更や機能追加が頻発し、 当初の目的から逸脱したりコスト 超過・納期遅延に陥りやすくなる 18 一品物をつくる建築では高層ビル ソフトウェアの設計ツールとモチベーション