デジタル化の目的は「行政の効率化」だけじゃない 社会保障の未来像

有料記事

社会福祉士・横山北斗=寄稿
[PR]

Re:Ron連載「知らないのは罪ですか?ー申請主義の壁ー」第12回

 少し前の話になりますが、2020年、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、私が住んでいた自治体において、一定の要件を満たす人に対し、住民税相当の現金が還付される施策がなされました。

 手続きはオンラインで完結し、役所に足を運ぶ必要はありませんでした。誰にも会わずに済むことがわかったことで気軽に申請ができ、メールで入金の通知が来たときはとても安堵(あんど)したことを覚えています。

 感染症対策に限らず、子育てや介護、体調などの理由で外出が困難な人、他人の目が気になり役所に足を運ぶことがはばかられる人にとって、申請がオンラインで完結することは大きなメリットがあります。また、自分が対象であるかどうかわからなくても、自治体がプッシュ型通知でお知らせをしてくれたり、自動で振り込みをしたりしてくれれば、もらい忘れもなくなるでしょう。

 2024年3月末時点でマイナポータルから子育て・介護関係の26の手続きをオンライン申請できる自治体の割合は65%にとどまっています。社会保障制度は子育て・介護関係以外にもありますので、現状、オンライン申請の対象制度は非常に限定的であるといえます。また、プッシュ型の給付については、以前に紹介した特定公的給付の対象である16の給付以外は実現していません。

 オンライン申請やプッシュ型の情報提供や給付がすすめば、申請主義の壁を乗り越える大きな力になりえます。今回は社会保障制度の利用申請におけるデジタル技術の活用について考えていきたいと思います。

 社会保障のデジタル化が進むと、私たちの生活はどう変わるのでしょうか。生活の節目ごとに必要な制度情報がプッシュで送られてくる体験を具体的に想像してみましょう。

スマホに通知、「利用できる制度」

 例えば、子どもが生まれた夫…

この記事は有料記事です。残り3385文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません