偽・誤情報を広げる「モンスター」 特効薬はないから 山本龍彦さん
感情を刺激する真偽不明のフェイク情報が、繰り返しSNSで拡散されています。人々の関心を集め、ページビューを増やすことなどで利益を得る「アテンション・エコノミー(関心経済)」とよばれるビジネスモデルを構造的な原因として指摘する慶応大学大学院の山本龍彦教授に、現状や対策について聞きました。
「5・3集会」テーマはフェイクニュース 申し込みはこちら
記者2人が殺傷された阪神支局襲撃事件から38年となる5月3日、朝日新聞労働組合は「言論の自由を考える5・3集会」を開きます。オンラインでライブ中継します。参加は無料です。視聴には事前申し込みが必要です。
――インターネット上の偽・誤情報対策として、総務省と19の企業や団体が1月に「デジタルポジティブアクション」というリテラシー向上に向けての新たな取り組みを始めました。山本さんは会長を務めていますが、どういう狙いがありますか。
米メタ(旧フェイスブック)やX(旧ツイッター)などのプラットフォーム事業者がそれぞれ作っているリテラシーの教材や動画を整理し、どの教材が誰に向いているのかを分かりやすく集約して発信しようと考えています。また、偽・誤情報の拡散を防ぐためのサービス上の工夫について表彰することも考えています。
偽・誤情報の投稿を削除したとしても、もぐらたたきのように次々と新たな投稿が生まれるだけという課題があります。
根本的な解決に必要なのは、人々のリテラシーを高め、意識を根本から変えていくことで偽・誤情報への耐性を獲得していくことです。デジタルの情報空間が、うそでも誹謗(ひぼう)中傷でもいいからとにかくアテンションを取れば良いというようなアテンション・エコノミーの構造になっているということへの理解も重要だと痛感しています。
「なぜこの情報が届けられた」のか分かりにくい
――事実でないことが事実であるかのように拡散し、投票行動にすら影響を与えている状況になれば、規制を強めるべきだという議論にもなるのではないでしょうか。
具体的に被害者がいるような…