制服無償化、教育社会学者の「モヤモヤ」 欠かせない議論と視点とは

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聞き手 編集委員・山下知子
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 給食費や修学旅行費、卒業アルバム製作費……。教育分野で無償化の動きが広がっています。公立中学校などの制服の無償化についても、朝日新聞の調べで全国5自治体に広がっていることがわかりました。保護者らにとっては恩恵となる施策ですが、教育社会学者の内田良・名古屋大教授には異論があるそうです。「それは本当に必要な経費ですか」――。無償化の前に考えたいこととはなにか、聞きました。

教育社会学者・内田良さんインタビュー

 ――5自治体で公立中学校などの制服無償化が決まりました。制服代はこの10年で2割以上も値上がりしたそうです。ある調査では、中学で平均5万円台、高校では7万円台に達します。記者も保護者の一人としてはありがたく思えます。

 「義務教育は、これを無償とする」と憲法第26条にあり、小中学校の授業料は無償です。

 実際は、計算ドリルなど、学校生活を送る上で授業料以外に生じる支出があり、千葉工業大の福嶋尚子准教授(教育行政学)は「隠れ教育費」と名付けました。その中でも制服は保護者が負担する額が高く、負担軽減策の意味はあると考えます。

 ただ、モヤモヤしますよね。

 やはり、その費用を誰が負担するのかを議論する前に「本当に必要なものなのか」を考えるべきではないのでしょうか。

 様々な意見がありますが、私自身は制服が学校生活に必須なものとは思えません。「校則の問題」が何ら解消されないまま、無償化が進んでいく点についても憂慮しています。

「なあなあ」にしてはいけない

 ――「校則の問題」ですか?

 子どもの選択肢を奪い、大人…

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この記事を書いた人
山下知子
編集委員|週刊アップデート編集長
専門・関心分野
教育、ジェンダー、セクシュアリティ、歴史
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    内田良
    (名古屋大学大学院教授=教育社会学)
    2025年5月19日17時51分 投稿
    【解説】

    私自身へのインタビュー記事です。 見出しにある「モヤモヤ」という表現が気に入っています。これは聞き手の山下知子さんとのやりとりから出てきたもので、私にとって制服無償化は本当に「モヤモヤ」という表現がぴったりなトピックです。 通常、義務教育

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