【詳報】永瀬拓矢九段、深夜0時50分に語った一手 名人戦初勝利

有料記事

北野新太 高津祐典 深松真司 村瀬信也
【将棋名人戦中継】藤井聡太名人ー永瀬拓矢九段 名人戦6年ぶりの千日手指し直し局をライブで【第83期将棋名人戦第4局2日目】(ライブ配信終了後、アーカイブはユーチューブ「囲碁将棋TV」のメンバー限定になります)
[PR]

 藤井聡太名人(22)=竜王・王位・王座・棋王・王将・棋聖と合わせ七冠=に永瀬拓矢九段(32)が挑戦している第83期将棋名人戦七番勝負第4局(朝日新聞社、毎日新聞社主催、大和証券グループ協賛、九州電力、QTnet協力、地元主催・宇佐商工会議所)が18日、大分県宇佐市の宇佐神宮で指し直される。

 藤井名人の先手で指された対局1日目は午後5時3分、61手までで千日手が成立。1日目の慣例である封じ手が行われず、2日目に先後を入れ替えて指し直す異例の展開となった。

 研究パートナーでもある両者のタイトル戦。藤井名人は3連覇を、初挑戦の永瀬九段は初の名人位を目指す。開幕3連勝の名人は一気の防衛を、挑戦者は反撃の1勝を狙う。

 藤井名人の先手で始まった千日手局は角換わりに進み、第2局に続いて永瀬九段が△3三金型に構える将棋に。挑戦者がわずか8分しか消費しない間に名人は3時間以上を費やすなど、対応に苦慮している印象の先手が千日手を打開しなかった一局だった。

 指し直し局の持ち時間は先手の永瀬九段が6時間26分、後手の藤井名人が3時間44分。夕休憩を挟んで夜には決着する見込みだ。

 立会人は谷川浩司十七世名人(63)、朝日新聞副立会人兼解説者は都成竜馬七段(35)、大盤解説は中田功八段(57)、聞き手は香川愛生女流四段(32)、記録係は崎原実地歩三段と榊大輝二段が務める。

 第4局指し直し局の模様をタイムラインで徹底詳報する。

将棋担当記者・北野新太

命脈をつないだ手、少し弾んだ声

 両者とも朗らかな声と笑顔の絶えない感想戦が終わったのは午後11時40分ごろだった。

 見守った人々の心を震わせる勝局を得た永瀬は、対局室を後にして自らの控室でスーツに着替えた。

 やがて日付は19日に変わった。

 宿舎に戻るための車に乗り込む前、永瀬と約束をした。

 自室に戻って落ち着いたら、10分間だけ電話取材をすること。

 彼はどれだけ時刻が遅くなろうとも対局当夜の取材を好む。

 各棋戦で活躍し、様々な相手との対局が続く中、ある一局と向き合う取材は当日中に終えておきたい、という思いがあるようだ。

 もちろん取材を受けなくてはならない、というルールなど存在しない。

 対局が続く状況下ならば、断ることはむしろ自然なことだ。

 持ち時間各9時間、2日制の名人戦を戦い終えた後などは、たとえ勝利した夜でも取材を受ける気分ではないだろう。

 けれど永瀬は「話を聞きたい」と願う取材者の思いを可能な限り尊重してくれる。記事の先にはファンの存在がいることも理解している。だから、明るく「ぜひ今日、お願いします!」と受け入れることを信条としている。

 午前0時50分、朗らかな声…

この記事は有料記事です。残り8215文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

この記事を書いた人
北野新太
文化部|囲碁将棋担当
専門・関心分野
囲碁将棋
高津祐典
文化部次長|デジタル担当
専門・関心分野
囲碁、将棋、麻雀、文芸、論壇、ファッション