第1回違法捜査と認定された「冤罪」 現職警官の告白、事件は捏造だったか
「まあ、捏造(ねつぞう)ですね」
2023年6月30日、東京地裁712号法廷。証人として出廷した男性警部補は、かつて自らが関与した捜査を振り返り、そう語った。警視庁現職警察官の「告白」に、警察関係者の間に衝撃が走った。
ことの発端は20年3月。横浜市の化学機器メーカー「大川原化工機」の大川原正明社長、同社顧問の相嶋静夫さんら3人が外為法違反(無許可輸出)容疑で警視庁公安部に逮捕された。容疑は、軍事転用が可能な機器を経済産業省の許可を得ずに中国に輸出したというものだった。
同罪で起訴され、その後も3人の身柄拘束は続いた。この間に相嶋さんの胃がんが発覚し、十分な医療を受けられないまま症状は悪化。21年2月、被告のまま72歳で亡くなった。
一方、「事件」としてのメッキは徐々にはがれていく。
軍事転用可能な機器を無許可で輸出したとして逮捕され、後に起訴が取り消された機械メーカー「大川原化工機」をめぐる冤罪(えんざい)事件。警視庁と東京地検の捜査について一審判決は違法と認定したが、何が起きていたのか。
初公判を目前に控えた21年7月30日、東京地検は、輸出許可が必要ない可能性が浮上したとして起訴を取り消すと発表した。異例の措置だった。再捜査しても証拠が集まるか不確実で、公判を続けるのは被告の負担になるからだという。
3人はなぜ逮捕、起訴されたのか。なぜ、相嶋さんは亡くならなければならなかったのか――。「冤罪(えんざい)」事件をめぐり、大川原社長らは21年9月、国と東京都に賠償を求めて東京地裁に提訴した。
事件を捜査したのは警視庁公安部外事1課。この裁判では同課で当時捜査に関わった現職警察官による捜査批判が相次ぐ異例の展開となった。
23年6月の証人尋問で警部…
大川原化工機冤罪事件
化学機器メーカー 「大川原化工機」をめぐる冤罪事件で、違法捜査と認定された東京高裁判決について、警視庁と東京地検は上告を断念しました。関連ニュースをまとめています。[もっと見る]