「おいしい」言い過ぎちゃう? 京の名料亭の主・村田吉弘さんが警鐘
テレビのグルメ番組やSNSで「おいしい」という言葉があふれています。また、飲食店が「○カ月待ち」と予約困難であることや価格が高いこと自体をもてはやすような風潮もあります。これらに警鐘を鳴らすのが、京都の料亭「菊乃井」3代目主人の村田吉弘さん(73)です。「和食」のユネスコ無形文化遺産登録の立役者で、「うまみ」を科学的にも追求してきました。「普通の人を遠ざける商売でええんやろか」と嘆く村田さんに、今の美食ブームに思うことを聞きました。
料理というより、情報を食べてる感じ?
みんな、「おいしい」って言い過ぎちゃうか思てます。「おいしい」って、本当はもっと、深いもんなんちゃうやろかと。
グルメ番組では料理を口に入れた瞬間、「うまい」「やばい」とか言うてるやん。「おいしい」っていうのはまだマシやけど、「やばい」はやめてほしいな。料理人からしたら、なんか異物でも入ってたんかいなと思ってドキッとするわ。まあまあ、演出も必要なんやろうけどね。
料理というより、情報を食べてる感じやろか。わかりやすい見栄えとか、ブランド食材とか。
そうなると、牛肉にウニとキャビアのせて……みたいなもんがもてはやされる。脂質が多いもの、やわらかいもの、甘みのあるものが「おいしい」と。
でも、料理というもんは、皿の中だけの話やないはず。本当は、心で感じる、もっと深いところにおいしさってあると思う。
本来の味わい、歴史、文化の奥深さを見失ってしまっている気がしています。
「おいしい」に勝る一言
こんな話がありました。
病気で長いこと入院してはった80過ぎのおじいさんが久しぶりに菊乃井にいらっしゃった。
庭には梅が咲き、そこにフキ…