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【詳報】藤井聡太名人、大熱戦に勝利 3連覇「足りないもの見えた」

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北野新太 村瀬信也 深松真司 佐藤圭司 高津祐典
【将棋名人戦ライブ中継】藤井聡太名人ー永瀬拓矢九段 対局決着へ【第83期将棋名人戦第5局2日目】(中継終了後、アーカイブはユーチューブ「囲碁将棋TV」のメンバー限定になります)
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 藤井聡太名人(22)=竜王・王位・王座・棋聖・棋王・王将と合わせ七冠=に永瀬拓矢九段(32)が挑戦している第83期将棋名人戦七番勝負第5局(朝日新聞社、毎日新聞社主催、大和証券グループ協賛、地元主催=古河市将棋名人戦実行委員会)が30日、茨城県古河市のホテル山水で前日から指し継がれる。

 研究パートナーでもある両者による初めての名人戦。藤井名人は3連覇を、永瀬九段は初挑戦での名人奪取を懸ける。本局まで名人の3勝1敗。名人が開幕3連勝して防衛に王手を掛けたが、第4局で挑戦者が1勝を返した。

 名人は決着を、挑戦者は連勝を目指す第5局。29日の1日目は永瀬九段の先手で始まり、角換わりから藤井名人が右玉に構える戦いになった。

 両者とも手損をいとわず手待ちを続ける繊細な応酬に。67手目を永瀬九段が封じた。消費時間は名人3時間48分、挑戦者4時間8分。

 立会人は藤井猛九段(54)、朝日新聞副立会人兼解説者は斎藤明日斗六段(26)、大盤解説は佐藤紳哉七段(47)、聞き手は古河市出身の宮宗紫野女流二段(37)、記録係は鈴木廉太郎三段と齋藤光寿三段が務めている。

 30日午前9時に再開される第5局2日目の模様をタイムラインで徹底詳報する。

藤井名人、終局後会見「足りないもの見えてきた」

――永瀬九段と王将戦に続いて2日制を戦われた。追われる立場の名人は永瀬九段の力をどう感じていましたか。

 「永瀬九段とは以前からVS(1対1の練習将棋)を長い期間して頂いていて、実力はいつもよく感じているので、私としては今回の名人戦も厳しいものになるのかなとは考えていました」

 「私としては1月からの王将戦と名人戦と二つの棋戦で永瀬九段と2日制の対局をすることができて、得たものが大きいと感じていますし、王位戦でも対戦することになるので、得たものをしっかり実力に変えていかなければならないと考えています」

――名人戦3連覇。あと2期で永世名人ということになります。

 「永世名人というのを具体的な目標として意識する感じではないんですけど、永世名人への漠然としたあこがれはあるので、今後少しでも近づいていけるように、より実力をつけていかないといけないという気持ちはもっています」

――千日手が2局続けて成立しました。この点はどう感じていますか。

 「そうですね、続けて千日手という形になりましたし、第2、3局も千日手の筋があるという対局でした。現代の相居飛車戦では後手番は千日手も含みに作戦をたてることは多いですし、そういう形が現れたのは偶然というのもありますが、作戦的な要素も関連しているのかなと思います」

――大熱戦だった。苦しまれた?

 「指し直し局は終盤まで苦しい局面が多くあったので、非常に大変なシリーズだったかなと思っています。先手番になったときに指し直し局も含めて主導権を取ることができない将棋がつづいたので、その点をどうすれば改善できるのか、今後に向けて考えていかないといけないシリーズになったのかなと思います」

――(昼食に注文した)甘露煮のお味と古河市民にメッセージをいただけますでしょうか。

 「今回食事やおやつは事前にメニューを見ていたんですけど、そのなかで甘露煮が古河名物と書かれていましたので、気になって選んだということもあったのですが、軟らかくて味もしっかりしていて、おいしく頂きました。古河市は初めてで楽しみにしていたんですけど、対局場の設営などすごく地元の方の熱意や心遣いを本当にさまざまなところで感じて、すごくうれしく思いましたし、集中して対局にも臨めたかなと感じています。こちらでタイトル戦を開催していただくのは初めてということですが、将棋に関心をもってくだされば私としてもうれしく思います」

――名人のタイトル、3回目の獲得の感慨は。

 「気持ちという面についていうと、特に終局して当日ですと、対局の内容が一番影響が大きいところなので、その点でいうと今日は中盤以降苦しい展開になってしまったので、まだそれほど防衛ということには実感がでてこないというところがあると思います」

 「2年前名人を初めて獲得できたことを思い返すと、そのときも1日目は苦しかったんですが、終盤で勝ちが見えたときというのは緊張もしましたし、初めてタイトルを獲得できたときというのは緊張感があったかなと感じます」

――永瀬九段と初めての名人戦。夜戦に入ったときに永瀬九段の食事をまねすることはありますか?

 「そうですね、名人戦は2日目に夕方の休憩があるので、2日制のタイトル戦の中でもペースがちがうなと感じています。私は夕方の休憩の食事は軽めにすることが多いんですけど、私自身は残り時間が少なくて局面が切迫している状況だと食欲が湧かない方ではあるので、そこに関しては今後も自分のペースでとなると思います」

――千日手になることもありましたが、作戦は先後両方用意していた?

 「そうですね、千日手になる可能性は対局前には高く見積もるわけではないので、作戦に関して先後が確定している対局はその手番のことを優先してという感じで、私の場合はそれほど千日手になったときに違う手番の作戦は深く想定してませんでした」

――千日手になったときは作戦を考えるのか、それとも気持ちを落ち着かせるのでしょうか。

 「第4局は2日目までに時間があったので、作戦について考えることはあったんですが、直後の指し直しだと想定を持って臨むのは難しいので、そういったことは考えずに気持ちを落ち着けてという感じでした」

――カメラに向かってファンにひと言お願いします。

 「夜遅くまで対局をご覧いただきありがとうございました。本局は中盤の早い段階で形勢を損ねてしまって、苦しい局面が続く対局でしたので、実感は湧いていないのですが、シリーズを振り返ってみると難しい局面が多くあって、多くのものを得ることができるシリーズだったのかなと感じているので、それをしっかり生かして、足りないところが見えたので少しずつ改善していけるように今後も取り組んでいきたいと思います」

藤井名人が3連覇

 将棋の藤井聡太名人(22)=竜王・王位・王座・棋聖・棋王・王将と合わせ七冠=が29、30の両日、茨城県古河市の「ホテル山水」で指された第83期名人戦七番勝負第5局(朝日新聞社、毎日新聞社主催、大和証券グループ協賛、古河市など地元主催)で挑戦者の永瀬拓矢九段(32)に千日手指し直しの末、勝利。シリーズ成績を4勝1敗として名人戦3連覇を決めた。5期獲得が条件の「永世名人」まで、あと2期に迫った。

 藤井名人は今期名人戦で開幕3連勝の後、第4局は千日手指し直しに。1日制で行われた指し直し局はリードを奪ったとみられたが、逆転負けを喫していた。第5局は2日目の30日午前10時59分に77手で千日手が成立。2局連続で千日手指し直しとなる異例の展開になった。同午前11時30分に始まった千日手指し直し局は、同午後11時16分、藤井名人が171手で勝った。

 藤井名人は将棋界に八つあるタイトルのうち七つを保持する。通算獲得数は29期となった。これは歴代5位の記録で、同4位の渡辺明九段(41)の31期に近づいた。

22:15

まだ終わらない

 永瀬九段は曲線的な手を選んでいる。「これはまだ終わらない」と斎藤六段。「藤井名人はヨリを戻した感覚があるんじゃないですか」。形勢は互角だが、先手より後手にとって難しい局面になっているようだ。

21:45

「急に差がついた」

 すきま風が吹き込みそうだった後手陣がいつの間にか堅くなっている。対局はいよいよ終盤戦に入った。副立会人の斎藤六段は「急に差がついた」と再び後手優勢を口にした。

21:00

ドラスティックに動く局面

 局面がドラスティックに動いている。

 永瀬九段は先述の順の△6五歩▲同歩に△同桂と跳ね出すのではなく、△3八角と馬を作りにいった。△6五角成で手厚く見えるが、斎藤六段は「後手からどう指せばいいか分からないです」と評する。「自分は先手持ちになりました。今日初めて先手持ちです」

 分かっていることは、まだまだ戦いは続くということだ。本当の夜はこれから始まる。それが名人戦である。

20:00

永瀬九段が優勢か

 永瀬九段が△6五歩(図)と攻めた局面について、解説の斎藤六段に聞いた。

 「△6五歩は気付きにくく、厳しい一手です。以下▲同歩△同桂とシンプルに攻めて▲6八角と引いた時に△5六歩と突き出すと▲同銀は△3八角があるので取れない。ただ、△6五歩に▲同歩と取る以外の手も非常に難しい。(手抜いて)△6六歩▲同角△6五歩で三つめの拠点ができると、△6六桂とかで自然に駒が取れてオート(自動的に)で勝てちゃう。後手陣は傷がないですから」

 見た目以上に後手が棋勢を手にしているのかもしれない。

 「先手からは、勝負に持ち込む順すら見つけるのが大変。名人がどう踏ん張るのか注目、という局面になっています。形勢の体感は後手の7-3……いや65-35くらいですか。もっと離れていてもおかしくないです。先手からパッと見て自信ないです」

17:43

△4四歩 局面動く

 対局が再開し、局面が動いた。永瀬九段が休憩を挟んで37分の考慮で指した△4四歩。4五の地点が手薄になったことに反応した手だが、藤井名人も読み筋だろう。千日手の可能性は当面低くなった。

 指し手が進み、先ほどとは逆…

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この記事を書いた人
北野新太
文化部|囲碁将棋担当
専門・関心分野
囲碁将棋
村瀬信也
文化部|次長
専門・関心分野
将棋、美術、東京の話題、B級ニュース