藤井聡太棋聖に挑む杉本和陽六段「ほっておけないらしい僕の挑戦」
師匠の遺品となった和服に袖を通し、聖なる戦いへ――。将棋の杉本和陽(かずお)六段(33)が藤井聡太棋聖(22)=名人・竜王・王位・王座・棋王・王将と合わせ七冠=に挑戦する第96期棋聖戦五番勝負(産経新聞社主催)が3日、栃木県日光市で開幕した。初のタイトル戦に臨む杉本六段は昭和棋界を彩った故・米長邦雄永世棋聖(2012年死去)の最後の弟子。大勝負を前に胸の内を聞いた。
――初めてのタイトル挑戦で藤井聡太棋聖に挑みます。
「勝負の世界でギリギリを戦う瞬間が自分はすごく好きなので、そのようなものを味わえるこれ以上ない舞台だな、と思います。強い人と指すことは準備段階からすごく大変なんですけど、高揚感や充実感、得難い感覚があります。しびれるような将棋ができるのは楽しみです」
――2017年に25歳で棋士になって初めての大舞台です。
「自分は棋士になっただけでけっこう達成感を覚えたような棋士で、最近はタイトル戦に出たい、と思うことすらなくしてしまったようなところも正直に言えばありました。今までの実績と今回の結果は相当に比例していないので本当に不思議な感覚はあります。ただ、挑戦で満足してしまうのはとても危ういことなので、もう一段上になったらもっとすごいことだよなという気持ちは持っています」
――反響も大きかったのでは。
「こんなに自分のことを見てくれていたんだな……と思ううれしさはありました。何年も会っていなかった学校の先生から連絡をいただいたり」
――挑戦を決めた夜に「失うものは何もない」と語りました。失うものはない者だけが手にする強みもあると思います。
「そうですね……。自分は……やっぱりか、みたいなことにはしたくないんです。やっぱりこんなもんで、予想通りに負けたか、というようなことにはしたくない」
――伴侶の方も喜んでいると。
「挑戦者決定戦を中継で見て…