サインコサインは必要? カリキュラムオーバーロードにならない学びのゴール 【学校をひらく 金子嘉宏さん②】
教育話題
2025.09.16

金子 嘉宏
東京学芸大 教育インキュベーションセンター長 教授

【紙面では読めないフルバージョン配信中】学校が地域や社会に開かれた存在となり、多様な人とつながることによって、どんな変化が起こるのでしょうか。キーパーソンにじっくりと語ってもらうシリーズ企画「学校をひらく」が、朝日新聞教育面で始まりました。先生コネクトでは、紙面では読めないフルバージョンを独占配信します。今回は、「未来の学校みんなでつくろう。PROJECT」など、公教育のシステム変革を実践する金子嘉宏さん(東京学芸大教授)4回連載の2回目です。
こんなにたくさん教えられるかい!
歴史の教科書を思い浮かべてください。たとえば私が小学生だった頃(もう、なんと50年近く前)と比べると50年分、学ぶ内容が増えています。それだけではありません、プログラミング、データサイエンス、さらに言えば、プロンプトエンジニアリングなど、数十年前には影も形もなかった新しい分野の学びも付け加えられています。
人間はなぜか常に「よりよいものを」と挑戦し続けます。教育も同じです。現在、中央教育審議会で学習指導要領の改訂に向けて、闊達で意義深い議論が繰り広げられていますし、教育の研究者も日々真剣に「より良い教育」を目指して研究をしています。子どもたちの負担を減らすことも当然議論されていますが、やはり、よりよい教育、より深い学びを求めて議論が進むことになります。
その結果、生まれたのが「カリキュラムオーバーロード」です。乱暴な言い方をすれば「こんなにたくさん学べるかい!(バンッ)」と子どもたちからつっこまれる状況です。(「こんなにたくさん教えられるかい!」という教員からのつっこみでもあります。)「人類が進歩し続ける」限り、「学ぶべきことは増え続ける」のです。さて、困りました。
「サインコサイン」の意外な効用
「必要なさそうな学習内容を削ったらいいのでは?」という考え方もあります。私は社会に出てから「サインコサイン」を使ったことはありません。エンジニアとして働く人に「漢詩」は役に立っていないかもしれません。では、サインコサインや漢詩は、学ばなくてもいいのでしょうか。

金子 嘉宏
1969年生まれ。東京学芸大教育インキュベーションセンター長・教授。専門は社会心理学、教育支援協働学。新しい学びの場の創造プロジェクト「Explayground」、学校の変革プロジェクト「未来の学校みんなで創ろう。PROJECT」など公教育のシステム変革の実践事業に取り組む。一般社団法人東京学芸大Explayground推進機構事務局長、一般社団法人STEAM Japan理事、日本教育支援協働学会理事を兼任。文科省「学校施設の質的改善・向上に関するワーキンググループ」委員、小金井市子ども・子育て会議議長。