■理系女子の未来
デジタル技術を活用してビジネスや社会を変革する「デジタルトランスフォーメーション」(DX)や、人工知能(AI)の導入が企業や各組織で急速に進んでいます。専門的な知識や技術を持つ人材ニーズが高まり、データサイエンス系の学部や学科を新設する大学が増えています。データサイエンス系学部を卒業した人たちは、どのような仕事をしているのでしょうか。企業のAI・DX推進室で活躍する新卒2年目の女性に聞きました。(写真=ミネベアミツミで働く冨田花連さん、本人提供)
文理融合のマネジメントに興味
日本初のデータサイエンス学部を滋賀大学が開設したのは、2017年のこと。以来、各地の大学でデータサイエンス系の学部や学科が新設され、ここに来て新設の動きがさらに高まっています。
24年度には千葉大学情報・データサイエンス学部や宇都宮大学データサイエンス経営学部、富山県立大学情報工学部データサイエンス学科が新設され、25年度には関西大学ビジネスデータサイエンス学部、大妻女子大学データサイエンス学部、帝京大学理工学部データサイエンス学科などが新設されました。
各大学の学部や学科によって、学ぶ内容はそれぞれ特徴があります。数学や統計学、情報学、プログラミング、情報ネットワークなどの科目を設けているところが多く、ビジネス知識や社会科学分野の科目がある大学もあります。

東京工科大学コンピュータサイエンス学部を24年3月に卒業した冨田花連さんが入社したのは、総合精密部品メーカーのミネベアミツミです。
同社は、世界のトップシェア60%を誇る、外径22ミリ以下のミニチュア・小径ボールベアリングをはじめ、半導体、モーター、センサーなど、身近なものに使用されるさまざまな機械・電子部品を世界20カ国以上で製造・販売しています。
さらに、ベアリングで培った超精密加工技術や大量生産技術をさまざまな分野に応用するとともに、自社保有技術を融合、活用した付加価値の高いものづくりが高い評価を受けています。
24年4月に入社した冨田さんは、AI・DX推進室に配属され、大学で学んだ知識を生かして、生成AIの開発支援や、社内ユーザーの問い合わせ対応などの運用支援を担当しています。AI・DX推進室は、ミネベアミツミグループでデジタル技術とデータを有効活用するDX推進の中核的な部署で、AIの活用による業務の効率化や製造現場での間接業務の効率化、DX人材の育成などを行っています。
「人工知能専攻の学部にいたため、機械学習や人工知能に関する講義は在学中に受けていたものの、実際に生成AIを使用したことはほとんどありませんでした。なので生成AIについては、入社後に先輩たちの指導を受けながら、またセミナーや展示会などに参加しながら、理解を深めていきました。私自身も、文章の添削や要約、会議で不明だった内容の情報検索など、日々の業務で積極的に生成AIを活用しています」
入社から半年が経過したころから、徐々に一人で担当する業務が増え、10月には生成AIに関連したアプリケーション開発のプロジェクトも開始。
「『こんなことをしたいけど、生成AIで可能か』などの生成AIの活用方法の問い合わせや、『アカウントの登録作業でこんなエラーが発生する』など、社内で生成AIを実際に使っている人たちから日々さまざまなご質問をいただきます。自身だけでは判断できないことも多くありますが、わからないことは誰かに相談・確認をし、自分の言葉で伝えられるよう理解することで、素早い課題解決が可能になっていきました。生成AIに触れるにつれ、活用方法によっては業務の効率が大きく変わり、将来的には扱えることが当たり前という世の中になっていくのではと感じています」
冨田さんは、当初から理系を希望していたのではなく、文系の勉強にも興味がありました。きっかけは両親からかけられた言葉でした。
「中学生くらいから、両親に『就職に強い理系に進んだら』と言われるようになりました。理系科目に苦手意識はなかったので、理系に進んでちゃんとお金を稼げる仕事に就けたらいいなと考えが変わっていきました。でも、科学者や技術者を目指すというよりはマネジメントなども学べる文理融合型に興味を持つようになりました」
冨田さんが選んだのは、東京工科大学コンピュータサイエンス学部の人工知能専攻(現在は先進情報専攻と社会情報専攻に改編)でした。埼玉県の実家から通える範囲の大学で、マネジメント系の講義もあり、各分野の教員が充実していたことが決め手になりました。
「人工知能専攻を選んだのは、興味があったからです。近い将来は、もっと人工知能が発達しているはずなので、その分野について勉強してみたいと思いました。でも、大学に入学するまでパソコンに触ったことがなく、入学後にパソコンを購入して、プログラミングの基礎から勉強することになりました」

アルバイト先のDX化を研究テーマに
入学したのは20年4月。新型コロナウイルスの感染拡大が始まった時で、オンライン授業が2年の前期まで続きました。
「オンライン授業でも課題は出るので、夜の8時や9時までずっと勉強していました。でも、1、2年で基礎をしっかり勉強したことで、知識を固めることができたという実感がありました。また、どの先生も専門知識があり、どんなことを聞いても的確に教えてくれて、安心感がありました」
対面授業が始まった2年の後期からは、家から片道約2時間かけて通学。3年からはオペレーションマネジメント研究室に所属し、小規模飲食店のDX推進を研究しました。飲食店でアルバイトをしていたため、そうした飲食店でどうすればDXを導入できるか、どのように業務を効率化すればいいかを研究テーマにしました。
就活のことを考えるようになったのは、キャリアプランを考える講義がきっかけでした。大学主催のインターンシップもあり、3社のインターンに参加しました。ミネベアミツミは、インターンに参加した会社の一つでした。
AIやDXの学びを生かせる職場へ
「IT系企業に就職する選択肢もありましたが、私はミネベアミツミのようなメーカーの内側から、AIやDXの推進に携わりたいと思っていました。いま、生成AIが注目を集めていますが、この部署にいることで最新の情報をキャッチアップして学べるのはとても刺激的です。ユーザーからの問い合わせ対応の際には、大学で学んだAIやDXの基礎知識を生かすことで、課題を的確に理解したうえで、ユーザーにとってわかりやすく納得感が高い説明を心がけています」
まだまだ経験が必要と痛感していますが、いずれはAIやDXなどの専門的な知識・技術と、マネジメントなどのビジネススキルを兼ね備えたプロジェクトマネジャーを目指しています。
「理系の学問は数字を扱い、論理的な思考を養うことができます。私も理系に進んだことで、物事を論理的に考えられるようになりました。数字を扱えると論理的な考えの根拠になり、説得力のある答えを導き出せるようになります。それに何かを作り出すには技術が必要なので、大学でプログラミングをはじめ、さまざまな技術を得ることができたのもよかったです。論理的な思考や技術を身に付けて無駄になることはありません。コンピュータサイエンス学部に進学してよかったと実感しています」
(文=吉川明子)
【写真】情報系学部から、新卒2年目でメーカーのDX推進担当になった女性社員
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