学科制から課程制への移行――複数分野を学べる芝浦工業大学システム理工学部の取り組み

Sponsored by 芝浦工業大学

2024/10/08

2026年、芝浦工業大学システム理工学部は学科制から課程制に移行し、5課程11コースとする計画を進めている(設置構想中)。実現すれば1つの分野だけでなく、理学・工学複数の分野を横断して学ぶことが可能になる。同学部は設置以来、積極的に横断型授業を進めてきた歴史があり、課程制への移行は自然な流れだった。課程制で変わる学び、想定される学修内容などについて、システム理工学部の澤田英行学部長に聞いた(写真は、システム理工学部の組織改編を表すキービジュアル。「迷うから、遠くに行けるんだ。」というキャッチコピーに学部の理念を込めている。芝浦工業大学提供)

◆変化が激しい社会で求められる分野融合

澤田英行(さわだ・ひでゆき)/芝浦工業大学システム理工学部長。1986年芝浦工業大学工学部建築学科卒。87年同大学院工学研究科建設工学専攻修了。87年4月から鹿島建設株式会社 建築設計本部。2012年から芝浦工業大学システム理工学部環境システム学科教授。21年から現職。専門は建築計画・設計

理工系学部は一般的に、「学科制」のもとで特定の分野をより深く学ぶスタイルを貫いてきた。それはかつて日本社会が、深い専門知識を持つ理系人材を必要としてきたためだ。しかし、急速に変化する現代社会では複数の分野、ときに全く異なる分野が融合して、次々と新しいモノやシステムが生み出されている。

他分野が融合した例として、澤田学部長は分別用のゴミ箱を挙げる。ゴミ箱の投入口や回収者の取り出し口をいかに使いやすくするかという観点だけで設計するのではなく、きちんと分別してもらうためのデザインや、分別効果が上がる設置場所、ゴミ箱の最適な維持管理の方法なども考えなくてはならない。これらは本来異なる分野だが、総合したシステムの設計で考える必要があるのだという。

システム工学で考えるゴミ箱のイメージ(図版提供:芝浦工業大学)

◆設置時から分野横断型授業に力を入れていたシステム理工学部

複雑な現代社会の課題解決に向けてさまざまな分野が融合することで、これまでにない業態や職能が生まれ、新たな価値が見出されている。こうした時代に対応するためには、縦割りの分野構成である学科制よりも、自由に分野を横断できる課程制のほうが適している。

「一つの専門分野を深めていく学科制とは異なり、課程制は他のコースの授業も選択できます。いろいろな分野の先生の話を聞き、専門が異なる学生と一緒に学ぶことで化学反応が生まれ、課題解決能力を身につけていく。教員は学部に所属し、複数のコースの授業を担当することになります。学生と教員が縦横無尽に動くイメージですね」

(図版提供:芝浦工業大学)

理工系学部で課程制を導入している大学はまだ少数だ。必要性を感じている大学は多いものの、日本の理工系学部は「縦割り型組織」が定着していて、改革に踏み切るのは容易ではないという。

「芝浦工業大学システム理工学部が課程制の導入に至ったのは、異なる学科の教員がさかんに交流する土壌が伝統的にあったことが挙げられます。なかでもシステム理工学部は、そもそもが『システム思考』というコンセプトのもと、変化を起こせる人材を養成するために設置された分野横断型の学部なのです」

システム理工学部では、システム工学の基礎を1年次から学ぶ。新入生向けの科目の一つ「創る」では、5学科の学生が混合して15~20人で1つのチームを作り、教員に提示された「課題」の解決法をみんなで検討していく。

「当然ですが、新入生たちはシステム工学について、まだよくわかっていません。しかも互いに初対面で、分野も異なる学生とチームを組む。そのなかで、自分とは違う考え方に触れて、ハッとするのです。多様な分野、考えの人たちと手を取り合って、新しい技術を創っていく。そうしてマインドセットを変えてもらうのが、この授業の目的です」

澤田学部長は、「大学生のうちにこうした思考を身につけることが大事」と考えている。

「これまでは新しいものを開発する際、異なる分野をつなぐ仕事は、その才能に長けた一部の人間に任されていました。だから、その人がいなくなったら仕事が停滞してしまう。そうならないように、みんなが分野横断型の思考を持つ。それは今日、誰にとっても必要なマインドなのです」

◆迷うのは当然であり、迷うからこそ遠くに行ける

では、課程制ではどのような授業スタイルになるのか。「分野横断」といわれると、何を履修したらいいか、逆に迷う学生も出てくるのではないだろうか?
「心配はいりません。新たなシステム理工学部では自分の進むべき道を見つけるためのカリキュラムとして『学際科目』という科目群を用意しており、『キャリアデザイン』『SDGs』『システム工学』『アントレプレナーシップ』について学ぶことができます。これらを学びながら自分と社会をつなぐ分野横断型の学びについて理解を深めることができ、その後の専門科目の学びにつなげていくのです。システム理工学部改組のキャッチフレーズは『迷うから、遠くに行けるんだ。』。複雑化した社会で何を学んだらよいのか、10代の皆さんが迷うのは当たり前です。私たちはその迷いをプラスに変えてほしいと思っています。そのために多種多様な科目の中から、自分だけの『やりたいこと』を見つけてほしい。迷ったらいくらでも相談に乗りますよ」

(図版提供:芝浦工業大学)

履修計画は、「こうなりたいという人材像」を大まかに想定するところからスタートする。その実現に向けて科目を選択していくのだが、途中で進路や履修計画を変更することも可能だ。新たなシステム理工学部は5課程11コースで編成され、各コースに設けられた科目群を「モジュール」と呼んでいる。自身が所属するコース(主専攻)のみを履修し完成させる「主専攻型」、自コースと他コース(副専攻)にわたって履修し完成させる「副専攻型」など、自分の目的に合ったモジュールを自由に組み合わせて学修計画を立てるのだ。

澤田学部長は自身の専門である建築を例に、次のような履修例を紹介してくれた。

「例えば建築コースの学生が、『健康や福祉に関連した建物に関わる技術者になりたい』と考えているとします。その場合、自コースの建築学を学ぶのと並行して、人々の健康増進の視点から『スポーツ健康工学コース』のモジュールを選択してもいいし、地域産業の市場を調べる方法として『データサイエンスコース』のモジュールを履修するのもいい。このように、目的や好奇心に合ったモジュールを選択して学ぶことができるのです。また、卒業研究も現在は4年次に実施していますが、3年次からスタートする構想を持っています。どの研究室を選ぶか迷う学生も多いと思うので、スタート前に一定の猶予期間を設けることも考えています」

◆オープンキャンパスで保護者からの共感の声が

システム理工学部では、このほかにもグローバル教育に力を入れており、2017年から「国際プログラム」を実施している。入学後に本人の希望で選択し、半期以上の海外留学、英語での卒業研究が必須となるが、休学などせず4年間での卒業が可能で、留学先の授業料などは学費に含まれる。履修学生向けに英会話やTOEICなどの授業も準備されており、「国際的に活躍できる人材」を目指す学生にはおすすめだ。

留学生と共に課題解決型のプログラムに積極的に取り組む(写真提供:芝浦工業大学)

澤田学部長は、保護者や受験生の手応えをすでに感じているという。

「最近は保護者と一緒にオープンキャンパスに来る高校生が増えていますが、課程制への移行の話をすると、保護者の方の多くがうなずいてくれるのです。ある男性の保護者の方は話が終わると私のところに来て、『分野横断型の学びは今の社会に絶対に必要です。どの大学にも取り入れてほしい』とおっしゃっていました。仕事を通じて社会の変化を実感している保護者ならではの感想だと思いました。またある高校生からは、『初めて聞く話で、すごく勉強になった』と言ってもらえました。私はまず、受験生や保護者の方に、分野横断型の思考がいかに大事なのかを知ってもらいたい。そのことが皆さんのよりよい大学選びにつながれば、これほどうれしいことはありません」

【卒業生に聞きました。学生時代に学んだことは何ですか?】

◆大学で学んだのは、「問題解決のための思考プロセス」です――佐々木周さん(2003年機械工学専攻修了)

コンサルティング会社・フューチャー株式会社で約8年間働いた後、芝浦工業大学システム工学部(現・システム理工学部)の後輩が創業した自然電力に入社。現在、同社事業企画部部長。西日本鉄道株式会社と立ち上げたジョイントベンチャー、西鉄自然電力合同会社の共同代表も務める(写真提供:芝浦工業大学)

私は芝浦工業大学の附属高校出身ということもあり、あまり深い考えを持たずにシステム工学部を選びました。2年生まではそれほど勉学に打ち込んでいませんでしたが、それが変わったのは3年次に始まった演習の授業です。ある先生の発案で「最適な流体の構造を作る」というコンテストをやりました。私はサメの構造をもとに作品を設計したところ、それが高く評価され、これが勉学の成功体験となりました。同時に、授業では「こうした課題に対する正解は一つではない。正解はいくらでもあり、仮説検証を繰り返すサイクルそのものが大事なのだ」と学びました。

その後、大学院の修士課程まで進み、多くの論文を書き、国内外の学会で発表する機会にも恵まれました。そんな私が大学で学んだのは、「問題解決のための思考プロセス」です。就職先でも頭の使い方はまったく同じでした。自然エネルギーを作る会社に出会い、12年間、一貫して新規事業の開発をしてきました。新しいことを始めることに面白みを感じていられるのは、芝浦工業大学での成功体験が影響しているように思います。

<詳しくはこちらへ>
芝浦工業大学 システム理工学部 改組特設サイト
https://newsystems2026.shibaura-it.ac.jp/

取材・文/狩生聖子 撮影/今村拓馬 制作/朝日新聞出版メディアプロデュース部ブランドスタジオ

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