
創業以来、一般廃棄物を手がける寝屋川興業と、廃棄物収集運搬業を扱うエンタープライズ山要。変革が進みづらいと言われがちな従来型の業種ではあるが、組織カルチャー変革に成功し、リクルート主催の「第11回 GOOD ACTION AWARD」(2025年)最優秀賞を受賞。ここ数年は早期退職者もゼロ、採用面も大きく変化したという。妹の奈緒さんと共に大胆な改革を進めてきた山口玉緒代表取締役。その具体的な取り組みを追った。
最初の一歩は「理念」と「指針」の言語化

1967年に祖父が創業し、その後、父が継いだ同社は、かつては昭和型のワンマン経営で知られていた。「目も当てられないほど離職率が高く、従業員のモチベーションも低かった」と山口さん。2016年、母の判断で姉妹に経営が託され、改革が始まった。
「幼い頃は“ゴミ屋”と揶揄されたこともありましたが、今では地域に不可欠な仕事だと誇りを持っています。従業員の生活も守らねばなりませんでした」
最初に取り組んだのは、経営理念と行動指針の言語化だった。
「人が辞めていく、望む人材を採用できない、そんな組織から脱却したいというのが最初の思いでした。高額な求人広告を出しても人は集まらず、入っても1カ月で辞めてしまう。廃棄物業者は公衆衛生の向上を目的とした認可事業で、本来ならプライドをもってできる仕事。根本的に、企業としての意義と働く価値を定める必要がありました」
経営理念は「私たちはゴミ処理サービスを通じて、笑顔を提供する企業です」と定め、5つの行動指針も明文化。「プライベートの充実/自分の頭で考える/とことん話し合う/他者を尊重する/楽しい雰囲気や環境をつくる」の5つを定め、社内の方向性を可視化した。
「大企業では当たり前に見えるかもしれませんが、産廃業の現場では、働く人の背景や意識もさまざま。理念や行動指針を明確にしたことで、少しずつ行動や雰囲気に変化が現れはじめました」
「1人1タスク」のチーム制で、意識を変える
次に始めたのは、「社会的責任」をテーマにした6つのチーム体制の構築だ。「地域の役に立つ企業でありたい」という意識を育てるために、社員一人ひとりが関わる仕組みをつくった。「お客様満足度チーム」「エコアクションチーム」など全員に“1人1タスク”を担ってもらうことで、自発性と小さな成功体験が育まれた。

たとえば、CSRチームは「こどもミュージアムプロジェクト」として、子どもの絵をラッピングしたゴミ収集車を走らせる活動を展開。また、業務紹介動画「GO! ME! チャンネル」は、YouTubeで国内外から注目される存在に。
以前は冷ややかだった社内の反応も変わり、今では地域連携や防災訓練、サンタ姿でのゴミ収集など、各チームが自主的に取り組んでいる。
評価制度も全員参加。360度の公平な評価を実現
評価制度も改革した。導入したのは「360度評価」。
「上司だけでなく、同僚や部下、他チームのメンバーなど、社員全員からフォームを介して匿名でフィードバックをもらう人事評価制度です。以前は昇給に明確な根拠がなく、面談で自己評価が高すぎる人や、逆に地味に頑張っている人が過小評価されてしまうことも。だからこそ数値化し、公平に評価する必要がありました」
評価はボーナスにも反映。上位者は公表されるようにした。
「今では、評価コメントに同僚への応援メッセージが添えられることも増えました。よい循環が生まれていると感じます」
お客さま対応にも変化。企業イメージを変えた

従業員の意識変革は、対外的な対応にも現れた。
ある日、管轄外の地域から問い合わせを受けた際、以前なら「できません」で終わっていたところを、従業員が自発的に代替業者の紹介まで対応したという。
「従業員の意識が変わってきたことが嬉しかった。お客さまからの信頼が高まったと感じます。こうした対応の積み重ねが、いいお客さまに恵まれる循環にもつながっています」
ホームページには社長ブログやチーム活動報告がずらりと並ぶ。SNSやYouTubeを通じて、企業の「等身大の姿」が広がっている。
「“喜んでいただくこと”が、これからの組織には必要だと思います。私たちのようにゴミを扱う企業こそ、自ら定義し、ブランディングしていかなければなりません」
目指すのは「自律型のチーム」
山口さんは、組織を「船」のようなものだと例える。
「会社の舵取りが私の役割。毎日ゴミを回収してお客さまを笑顔にするのが、ドライバーの役割。それぞれが150%を目指してほしい。課題の多かった組織を脱却し、今は“自律した集団”を目指すステージにきています」
産業廃棄物収集運搬業は、地域に欠かせない“エッセンシャル”な仕事。だが、これまで“人気職”ではなかった。しかし、山口さん姉妹が経営する2社は大きく変わった。SNSでは楽しそうに働く従業員の姿が見られ、従業員満足度も向上。ファンすら生まれつつある。地域企業の変革の好例として、注目に値する取り組みだ。
(取材・文:島田ゆかり、Mashing Up編集部)





















