建造年は1969年。場所は米オハイオ州NASAグレン研究センターの一角にあるプラムブルック基地。高さ約37m、直径30.48mのSPFは押しも押されぬ世界最大の真空室です。
元々は原子力宇宙船と通常エネルギーの宇宙船両方の熱真空・電磁障害に対する強度実験(まだ核実験は一度も行われていませんが)、高エネルギー実験、ロケット・フェアリング分離など行うために造られたものですが、NASA新開発の宇宙推進システム(コンステレーション級の宇宙船オリオンの動力源など)や火星探査に以前使われたローバー2台のエアバッグ着陸システムのテストにも対応できるよう、最近改築しました。
こうした実験もできるほど、宇宙と同じ真空状態をかなり忠実に再現できる、その秘密は真空室の構造にあります。
SPFは言うなれば巨大なアルミニウムのサイロで周りをもっと大きなコンクリートのドームで囲ってあるんですね。このアルミニウム試験室(Aluminum Test Chamber)の建材は気密性のType 5083型アルミ板。NASAによると、これで「中性子吸収断面積を小さく」しながら室温を摂氏マイナス195度に保っているんだそうですよ。
15.24m四方の二重真空扉から最大272トンの機材を搬入可能。中には4-MWクオーツの熱ランプが備えられており、それで太陽放射を再現します。また、400-kWのアークランプで太陽のスペクトル、これも再現できます。
で、このアルミニウム試験室を取り囲むのが、その名もズバリな「コンクリート製チェンバーエンクロージャー(Concrete Chamber Enclosure)」 (NASAのネーミングは直球ですね)。直径39.6m、高さ45.7m)、厚さ1.8~2.4mで、中にはクオーツランプからの放射が外部に漏れるのを防ぐスチール製の密封バリアが埋め込まれており、これで外の自然放射の侵入を同時に防いでいるんですね。2つ合わせて全体で10^-6トルの真空状態を実現できます。これは標準の地球大気の約1億分の一に相当します。
最初の実験室に加え、NASAがこのほど新設したのはオリオンのエンジンが打ち上げ時の振動と音に耐えられるかテストするサイロ2つ。振動実験室では、約5万6700kgの物体をテーブルに吊り下げて揺らし、離陸時のすさまじい振れを再現しています(機材はテーブル上に置いてテストする)。
一方、SPFの音響試験室はこの種のものとしては世界最強です。大小様々なサイズ(と周波数)のホーン24台を総動員して離陸時の轟音を再現し、音でボルトが緩まないかチェックするんですよ。「まるでジェットエンジンの隣に耳を当てて10倍うるさくしたようなものだ」と宇宙パワーファシリティのマネージャー、ジェリー・キャレックしさんは話しています。具体的にどの周波数が使われているかわ未だにわからないけど、きっとものすごくうるさいブブゼラみたいなんでしょうねー。
[NASA 1, 2, 3 - Wikipedia - Image: Sandusky Register]
ANDREW TARANTOLA(原文/satomi)