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オープンソースのプロ
セスアセスメント
Process Assessment for
Open source projects	
 
技術士(情報工学)・博士(工学)
小川清
名古屋市工業研究所
Dr. OGAWA Kiyoshi
Gifu University
今日の伝言	
  よくある質問
  オープンソースって何?
  なんでオープンソースをやっているの?
  オープンソースに参加するとどんないいことがあ
るの?
  作業診断の視点で返答を
  設計書(計画書)
  分析
  すばらしい人に知り合える
質問1:オープンソースって何?	
  ソースコードを公開しているソフトウェア
  配布団体ごとに定義・権利・義務はいろいろ
  代表的なオープンソース
  GCC, LLVM/Clang(コンパイラ、下の2つも利用)
  BSD, Linux(共にTCP/IP等ネットソフト同梱)
  Apache, nginx(Web Server)
ソースコードって何?	
  計算機の動作の設計(design)/計画(program)
  言語によって書ける事に制約がある
  何でも書けるのがアセンブラとC言語
  図があるとわかることがある
  状態遷移(state)、時系列(sequence)、刻字(timing)
  UMLの図を自動生成してくれるソフトEnterprise Architectは有償ソフ
ト(ソース非公開)
  図から自動生成するソフトMath Lab/Simlinkは有償ソフト(ソース
非公開)
  オープンソースでこのあたりの道具が揃うと完備
  挑戦例:Toppers_ASPカーネルとScilab による組込みメカトロニク
ス制御シミュレーション(第4回TOPPERS活用アイデア・アプリ
ケーション開発コンテスト金賞)塩出武	
 (個人)テスト応募資料と
ソースコードがWEBにあります。https://www.toppers.jp/docs/
contest/2014/shiode.pdf(応募資料)
33つの設計図  
  状態遷移図(state chart)	
 
  時系列図(sequence chart)	
 
  刻時図(timing chart)
質問2:なんでオープンソース

をやっているの?	
  言語、OS、通信規約を勉強するのに、オープンソース
以外だと契約金額が高すぎて手がでない(Unixのソース
コードライセンス百万円以上だった)
  8ビットCPUでは逆アセンブルでもコードが理解できる
量のソフトがあった。32ビットCPUでは逆アセンブルし
ても訳若布。
  大企業が競争相手に対抗するためにオープンソースにお
金・人を投入して改良
  企業が保守しきれないソフトをオープンソースで公開
  優秀な技術者の技術が実時間で並行して理解できる
企業がソフトをオープンにする時	
  特定の企業向けのifdefが多いと公開できない。
  削る費用が半端なく断念した事業があれこれ…
  ソフトウェアの保守には、何も機能を変えなくても膨大な
手間と経費がかかります。
  新しいCPUへの対応
  それまでのCPUではうまく動作していたものが、時間処理
の違いにより異なる動作をすることがあります
  OSの新しい版への対応
  新しいOSが従来の機能を無くしてしまったら、大変。一回
は暫定的に残す期間があることが多いとはいえ。
  言語の新しい版への対応
  OS同様、機能が無くなると大変。セキュリティは新しい版
でしか対応しないことがあるため無視できない。
33つの分析方法  
  FTA (Fault Tree Analysis)
  FMEA (Failure Mode and Effect Analysis)
  HAZOP (Hazard and Operability) study
HAZOP	
 
  想定外をなくすための手法
  時間・空間の質・量の上限・下限を超えた場合
の対応を検討。23=8通りは必須。無・逆は存在
と方向の反対なのであたりまえ。合計10種類
の誘導語は外せない。他はそれ以外を入れる大
事な箱
  他はTRIZを用いると便利(安全工学シンポジウ
ム2016 7/8発表予定)
ちょけねこ	
 
  Line	
 のクリエータスタ
ンプ
  HAZOPの11の魔法の言
葉(誘導語)を説明
  作業診断でもHAZOPを
利用
質問3:オープンソースを使う・参
加でとどんないいことがあるの?

	
  技術的な質問への回答がある(母集合がおおきいので
英語の方が確率が高い)。
  直接コードを書かなくても、試験、内容確認に参加す
ると技術的なことをいろいろ教えてもらえる。
  直接コードを書くと、参考になる資料、試験結果など
をつぎつぎ教えてもらえる。
例えば…	
  兵藤嘉彦:VZエディタ。発売元のビレッジセンター
はGNUなどを応援していて、現在のオープンソース
の流れを主導。
  N5200(NEC)に移植
  戸村哲: Emacsの多言語対応Muleなど。現在は標準化
委員会等で…
  OBJのシンタックスチェッカを作成
  高田広章: オープンソースのリアルタイムTOPPERS/
OS。自動車向けのISO OSEK対応で突出。
  FTA, FMEA, HAZOPの三分析手法を駆使して自動車向
けの品質を確保
プロセスアセスメント(作業診断)	
  ある組織が競合相手よりも納期が遅れたことを改善
  費用、品質には必ずしも着目していないことに注意
  複雑な作業を、いくつかの窓(視点)を設けて分析
する方法
  窓(視点)ごとに、過去にやっててよかったこと
(Best Practice)を事前に整理しておく
  実際の作業が過去のやってたことと比較して、どの
程度かを確認する
  新しいやり方をしている場合には、新しいやり方が
過去のやり方とどういう関係にあるかを対応づける
(Mapping)
オープンソースで使う訳	
  優秀な人材を集め、すばらしい言語で開発をは
じめたのに、納期に間に合わなかったという失
敗が出発点
  オープンソース関連の事業でもありがちなこと
  競合する製品に対する競争力を持ち続けるため
に課題を洗い出すのに使える
  改善のきっかけ作りに役立つ
過去の診断例	
  Automotive SPICEを例にしたアセスメントモデルに対する評価指標,
河野文昭, 足立久美, 小川清, 北野敏明, 込山俊博,電気関係学会東海支
部連合大会, 2006年9月	
 
  最小セットOS開発の作業改善と診断,後藤健太郎、柏原一雄、市川
知典、三輪田寿康、川口直弘、斎藤直希、堀武司、竹下千晶、小川
清、	
 情報処理学会組込み研究会, 2009年7月	
 	
 
  作業モデルと診断モデルの分析と仕立てについて,村上孝, 北野敏明,
小川清,電気関係学会東海支部連合大会, 2011年9月	
 
  SPEAK-IPA を用いた設計指向による 公開アセスメントの試行, 佐藤克,
福田仁志,村上孝,小川清,山内一資, 石津和紀,倉田智穂,近藤聖久,北野
敏明,第12 回WOCS2, 2015年1月	
  プロセスアセスメントの分類とアセッサ教育,村上孝, 福田仁志, 石津和紀,
近藤聖久, 小寺浩司, 小川清, 佐藤克, 第13回JAXA/IPA WOCS2, 2016
年1月
事例1	
 
  SPEAK-IPA を用いた設計指向による 公開
アセスメントの試行, 	
 佐藤克,福田仁志,村上孝,小川清,山内一資,
石津和紀,倉田智穂,近藤聖久,北野敏明,	
 第12 回WOCS2, 2015年1月	
  http://www.ipa.go.jp/files/000043915.pdf
事例2	
 
  プロセスアセスメントの分類とアセッサ教育	
 村上孝, 福田仁志, 石津和紀, 近藤聖久,  
小寺浩司, 小川清, 佐藤克	
 第13回JAXA/IPA WOCS2, 2016年1月	
  http://www.ipa.go.jp/files/000050244.pdf
これまでの活動の課題	
  オープンソースを無意識に利用している
  オープンソースの効果的な利用が企業の技術水準と効
率的な投資に役立つことを意識していない
  意識してオープンソースの活動に参加していない
  無意識に不具合の報告を挙げている可能性はある
  プロセスアセスメント(作業診断)が競合製品(他
者)との比較の道具だと意識していない可能性がある
  納入条件の意味を深堀すればわかるはず
次のオープンソースの診断(作業中)	
  主要な事業と身近な事業の合計5事業を比較
  GCC
  Linux
  Apache
  TOPPERS
  mruby
比較	
事業名	
 
GNUプロジェ
クト	
 
The Linux
Kernel
Organization	
The Apache
HTTP Server
Project	
トッペRSプロ
ジェクト	
 
mrubyプロ
ジェクト	
 
URL	
http://
www.gnu.org	
https://
www.kernel.org	
https://
httpd.apache.or
g/	
http://
toppers.jp/	
http://
forum.mruby.or
g/	
事業種
別	
   	
   	
   	
 
特定非営利活
動法人(日本)	
特定非営利活
動法人(日本)	
出資	
 
Free software
foundation	
Linux
foundation	
Apache
software
foundation	
  	
   	
 
URL	
http://
www.linuxfound
ation.org/	
http://
events.linuxfoun
dation.org/	
http://
www.apache.or
g/	
  	
   	
 
事業開
始	
  1987IGCC)	
 1991(Linux)	
 1995	
 2002	
 2012	
会員数	
 たくさん	
  たくさん	
  たくさん	
  116組織+76人	
 17組織+9人	
 
人	
  たくさん	
  たくさん	
 
Brian
Behlendorf	
 T, H, N, M,…	
 M, T…
診断(assessment)するには	
 
  公開情報に基づく調査
  WEBの情報を全部評価
  人力で難しければ、全部ダウンロードして単語の
出現頻度を計算
  技術用語または専門用語で出現の多い項目に焦点
  事業の目的・目標・競合他製品(サービス)との
比較
  関連組織との連携状況
  人、物、金
診断方法	
 
  定量的な方法と定性的な方法を組合せる
  一件価値の低そうなデータも他のデータと組合
せると分かることがある。
人名検索	
 
  人数の多い方は別人の存在を確認
何に役立てたいか	
 
  人材の確保
  必要な作業の洗い出し(やる気の持てることは
なにか)
  作業分担(誰がやるとうまくいくか)
現在の診断状況	
 
  未確認の事項があります。
  口頭のみとさせてください。
  IPAの関連資料を2冊無償配布します。
  会場からの質問にお答えします。(たとえば)
  どのプロセスを診断するとよいか
  何をもって証拠とするか
  現在記録として残っていないもので大事なものは
何か
ここまでのまとめ	
 
  オープンソースに参加して診断するとより細か
いことが判定できる
  オープンソースの利用者の視点で診断すると、
競争力が高まるかもしれない
  プロセスアセスメントは経営(工)学領域であ
るため、人・組織・技術の3つの視点での均衡
を図るとよい
  現在、人・技術の面が、、、
これからの予定・課題	
 
  比較を始めた5つの事業をより細かく診断し、
TOPPERSプロジェクト、mrubyプロジェクトに報告
  優秀なアセッサは優秀なアセッサを育てられないと
いう呪縛から解き放つ
  オープンソース事業について地元企業から依頼があ
れば、簡易診断は無償(予定)で実施
A Report on process Assessment for open source projects

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