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長い序は危険だ。本の精神は序のなかにあらわれてしまうが、本の精神を述べて説明することはできないからだ。もしも、ある本が少数の人のためだけに書かれているのなら、そのことが明らかになるのは、まさに、少数の人しかその本を理解しないという事実によってである。本というものは、それを理解する者と、理解しない者とを、自動的に区別してしまう。序もまた、まさに、その本を理解する人のために書かれるものである。 ある人にむかって、その人の理解できないことを言うのは、ナンセンスである。「あなたにはわからないだろうが」とつけ加えるとしても。(大好きな人にたいして、こういうことはよくあるが。) 特定の人に部屋に入られたくなければ、その人がもっていない錠をつるせばよい。だが、そのことをその人と話すのは無意味である。ただし、外から部屋をほめてもらいたい場合は別だけれど。 行儀よくありたいなら、錠を工夫することだ。つまり、開けることのできる人の注意だけを引いて、そのほかの人の注意を引かないような錠を、扉の前につるせばいい。

ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタイン / 丘沢静也訳 / 反哲学的断章ーー文化と価値(青土社)p38-39 (via hainooto)

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