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「Olive」と「PayPay」が相互に連携 キャッシュレス大連立
2025年5月15日 13:02
三井住友グループの個人向け金融サービス「Olive」と「PayPay」が連携する。Oliveを推進する三井住友フィナンシャルグループと三井住友カードが、ソフトバンクが包括提携し、AIやキャッシュレスなどの推進で相互に連携していく。キャッシュレスにおいては、OliveとPayPayを相互に接続する。
提携の内容は、Oliveとソフトバンクのデジタルサービス連携による非金融サービス拡大と、データ活用や生成AIでの連携、PayPayや三井住友カードにおけるアプリやポイント連携など。各施策は2025年度中に順次実施していく。
「OliveにPayPayを標準搭載」 ポイントも相互連携
キャッシュレスにおいては、OliveとPayPayが相互に連携する。カードとコード決済のナンバーワン企業による「決済における大連立」(三井住友フィナンシャルグループ 中島 達CEO)とする。
Oliveを使ってVisa加盟店で支払いする場合、Oliveによるクレジットカードやデビットカードでの支払いのほか、「PayPay残高」での支払いが可能になる。Oliveのフレキシブルペイ(支払い方式を選べる機能)に「PayPay残高払い」が追加される形だ。
また、PayPayの残高確認や三井住友銀行口座とPayPay残高のチャージ・出金がOliveアプリで実行できるようになり、PayPay残高から三井住友銀行口座への出金手数料も無料。「OliveにPayPayを標準搭載する」(三井住友カード 大西 幸彦CEO)という。
さらにPayPayアプリのクレジットカード紐づけでも三井住友カードを優遇。PayPayは、2025年夏以降にPayPayカード以外のクレジットカードによる決済で、ユーザーに手数料の費用負担などを求める方針だが、今夏以降も三井住友カードのクレジットカードは無料で利用継続できる。また、三井住友カードNLやOlive以外の、ANAカード(Visa/Mastercard)やAmazon Mastercardなどの提携カードも無料の対象となる予定。
ポイントサービスにおいても連携。VポイントとPayPayポイントを相互に交換可能とする。これらのOlive/PayPay連携施策は25年度中に順次追加していく。
会員数6,900万のPayPayと国内カード市場トップシェアの三井住友カードが提携し、ポイント連携することで、三井住友カードとPayPayの相互の利便性と“お得”を強化する。
ヘルスケアや人流データで協力
ソフトバンクとの提携においては、Oliveの非金融サービスを強化。金融の枠組みを超えるスーパーアプリとしてOliveを強化していく。
第1弾として25年度中に三井住友カードの会員向けに、データ活用により人々の健康増進を促すヘルスケアテクノロジーズが「ヘルスケアポータル」を提供。これにより、Olive会員がアプリを介してシームレスに健康/医療サービスを利用でき、時間や場所の制約を受けずに医療者のサポートを受けられるようにする。
保険商品についてもソフトバンク子会社のリードインクスが、三井住友カードのデジタルチャネルから申し込めるよう、保険ポータルの整備や商品ラインナップの拡充を行なう。これらヘルスケアサービスは、Oliveだけでなく、三井住友カードの法人会員向けにも展開予定。
決済データと人流統計データを組み合わせたデータ活用でも協力する。
三井住友カードが保有する決済データと、ソフトバンクのグループ会社が持つ人流統計データやその他外部データを組み合わせた、新たな顧客分析ツールに向けて、両社共同で検討を進める。
三井住友カードは、決済データを活用したマーケティング支援を加盟店向けに展開しており、決済データは、クレジットカード会員の属性データと、加盟店の属性データの二つを把握でき、購買行動を詳細に理解できるポテンシャルを持つ。
このデータに、位置情報を活用したビッグデータ事業を手掛けるAgoopが持つ、人流統計データを組み合わせることで、自社店舗や周辺への来訪者数などの来訪と、購買の動向を掛け合わせた分析を実現。未獲得顧客層の把握や、各種施策の集客と購買への寄与効果の確認などが可能となる見込み。
また、決済データや人流データ、気象データなどを、ソフトバンクが開発したAIアルゴリズムで分析し、小売り・飲食などの加盟店店舗や周辺エリアにおける将来需要の予測も行なう。三井住友カードでは、Vポイントをフックとした加盟店向けの送客サービスも提供しており、これらを組み合わせたビジネス展開なども想定している。
コンタクトセンターをAIエージェントで24時間稼働
また、三井住友カードのAI導入においてソフトバンクが協力していく。
三井住友カードでは、「Olive」などのデジタルサービスについて、AIを活用したUI/UXの抜本的なレベルアップやパーソナライズされたサービスなどの検討を進めている。提携を機に、三井住友カードの顧客基盤や保有アセットに、ソフトバンクのAIサービスを組み合わせ、日々の利用シーンにおける顧客体験の向上を目指す。あらゆる領域でのAI活用を想定しているという。
協業の第1弾として、三井住友カードのコンタクトセンターに、ソフトバンク子会社のGen-AXが開発を進める、音声生成AIを活用した自律思考型AIサービスを導入。自律思考型AIにより、最適な対応を提供し、「いつでもつながる」コンタクトセンターの運営を目指す。
現在の三井住友カードのコンタクトセンターは、AIは人間を補助する形で使われているが、2025年度中にはAIエージェントによる24時間365日のユーザー対応を実現する。「3年以内に問い合わせの対応の半分をAIオペレータにしていく」(三井住友カード 大西CEO)という。
三井住友カードとソフトバンクの提携は、PayPayを第1弾とし、第2弾がヘルスケアやデータなどの非金融事業とAI導入、そして第3弾以降はLINEやヤフー、さとふる、ZOZOなどソフトバンクグループ各社との連携も模索していくという。現時点では、シェアサイクルやタクシー配車などが、すでに実現に向けて動き出している。
三井住友カードとPayPayを持っていれば大丈夫
三井住友フィナンシャルグループの中島 達CEOは、「契約の当事者は三井住友カードだがSMBCグループにとっても戦略的に大きな意義がある」と切り出し、デジタルサービスでの連携と、PayPayとの決済領域での連携のそれぞれの目的を説明。
2年間で500万口座を超えたOliveは、グループのリテール事業の中核となるだけでなく、デジタル事業全体を牽引しており、三井住友銀行による法人サービス「Trunk」もOliveの基盤を活用している。今回の提携により、Olive起点のリテールビジネスを強化するだけでなく、非金融サービスを拡大していく。
Oliveでは、カナダのHoppoerと協力した旅行サービス「Vトリップ」など、非金融サービスも強化しているが、そこにソフトバンクグループの各サービスを導入予定。また、「ソフトバンクとの提携は、リテールビジネスにとどまらず、三井住友グループ全体に広げていきたい」とした。
「競合」とみられるOliveとPayPayの連携の狙いについて、中島CEOは「クレジットカード対コード決済といった事業者の目線では『競合』とみられるかもしれない。しかし、お客様目線で、三井住友カードとPayPayを持っていれば大丈夫、という社会を実現していきたい」と説明。両社とユーザーにメリットがある取り組みだと強調した。
ヘルスケアを売り込んだらOliveと提携することになった
ソフトバンクの宮川 潤一社長は、ソフトバンク側からみた提携の意義として、「ソフトバンクの経済圏は子会社が約300社。この経済圏をOliveとTrunkの利用者に融合していきたい」と説明。そのきっかけとして、PayPayとOliveの連携を行なうとする。
宮川社長は、「6,900万人のPayPayと3,900万人の三井住友カードが連携する。第1弾は決済・ポイント、第2弾として、先進デジタルサービスで連携する。ソフトバンクのヘルスケアとデジタル保険をサービス提供し、OliveとTrunkの会員にシームレスな環境でデジタルサービスを使ってもらう。これがソフトバンクからみた提携の意義」とする。実際、今回の提携のきっかけは、ソフトバンク宮川社長が三井住友カード大西社長にヘルスケアサービスをOliveで採用してほしいと営業したことがきっかけとのこと。結果として、より多くの事業で相互に協力する形となったという。
またAIコールセンターにおいても、これまでのAIが「助手」となるケースから、自律的に行動する「変革型」に変わってきたと説明、これにより、24時間稼働のコールセンターを実現できるという。
なお、今回の三井住友カードとの提携により、ソフトバンクの料金プラン「ペイトク」などでもカード優遇を行なうか? との問いに、宮川社長は「議論のスコープに上がっていないが、いいアイデアなので検討したい。今度営業に行きます(笑)」と言及。「ドコモ・auが料金を値上げしている中で、我が社にも注目されているかもしれないが、いろいろな検討を進めている。通信料金以外で収益を上げられれば、値上げをしなくても済む構造を作れるかもしれない」と語った。
コード決済VSカードではない 「AI-Olive」始動
三井住友カードの大西社長は、デジタルサービスとAI活用をアピール。OliveとVpass会員向けに、ヘルスケアテクノロジーと共同でヘルスケアポータルを展開し、日頃の健康管理や、健康医療相談チャット、オンライン診療などを提供していくという。これはOliveだけでなく法人向けにも展開予定。
Oliveでは、証券会社はSBI証券、保険はライフネット生命など、「グループ内にこだわらずにベストなサービスを選んでいる」と説明。ヘルスケアや保険のほか、モビリティサービスなどの展開も予定しているという。
また、「AI活用の本丸」として、「AI-Olive」の構想についても言及。利用者の資産状況やサービス利用状況などから、「マネーライフ」をアシスト。住宅ローンの繰上返済や、海外旅行計画、NISA投資などの「選択」を支援して、Olive内の各サービスにつなげていく。
三井住友カードではマネーフォワードと提携し、Olive内で他行の口座やカードの残高・利用履歴確認し、資金移動やローン返済を行なう機能を開発中。こうしたデータを活用し、ローンの返済や資産運用、旅行の助言などをOlive上で行ない「Oliveを未来型のスーパーアプリにしていく」という。
OliveとPayPayの連携については、「コード決済VSカードではなく、お客様視点で必要なことを考えた」と説明。実際にクレジットカードとPayPayを使い分けるユーザーは多く「キャッシュレス(普及)も後半戦で、必要な取り組み」とした。
VポイントとPayPayポイントは相互交換に対応する。このポイント連携により、「我が国最大のポイント経済圏になる。PayPayの経済圏と世界中で使えるオープンなVポイント。どこでもつかえて貯められるポイントを本当の意味で実現できる」と説明した。なお、VポイントとPayPayポイントの統合については「予定はない」とのこと。