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 福岡県広川町は2025年9月に総合行政システムで一時障害が発生し、住民票の写しをはじめとする証明書の発行や住民異動など、同システムを使う全ての窓口業務ができなくなったと発表した。9月2日午前9時ごろからシステムにログインできない状態となったものの、同日正午には復旧したという。

 RKKCSは2025年7月に、広川町や熊本県の球磨村、相良村の3自治体で標準仕様に準拠したシステムがガバメントクラウドに移行して稼働したと発表していた。日経クロステックの取材で、同じくRKKCSが開発・提供して先行稼働していた球磨村も同様のシステム障害が発生していたことが分かった。

 広川町と球磨村はいずれもRKKCSが新規に開発した「新総合行政システム」を利用している。新総合行政システムはガバメントクラウドの1つである米Oracle(オラクル)のクラウドサービス「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」上で稼働する。

 RKKCSは単純な既存システムの標準化やガバメントクラウドへの移行ではなく、標準仕様に準拠したシステムを新規開発してガバメントクラウドに最適化した構成が売りだ。デジタル庁が開発ベンダーに促してきた「モダン化」したシステムとして、コスト面からも「優等生」とみなされてきた。

 広川町は公表資料でシステム障害の原因について、「総合行政システムを運用しているクラウドを提供しているサービス事業者のサービスに起因する可能性があるという情報を得ていますが、調査中」と表現している。システム障害の原因がOCIにあることを示しているが、「可能性」「調査中」にとどまり、断定はしていない。

 日経クロステックの取材に対してRKKCSは「CSP(クラウドサービス提供者)の対応で復旧している」と回答する一方で、「復旧活動については、弊社からお答えすることはできない」とした。

 一方で、CSPである日本オラクルはOCIについて「事案は把握しているが、現在調査中」と回答した。住民からはどんな原因でシステム障害が起きたのか分かりにくい状態だ。