三菱電機が組み込みソフトウエア開発への生成AI(人工知能)活用を進めている。ソフトウエア開発に関連する過去数十年分のドキュメントの要約文を生成AIにより作成。これを検索用のインデックスとして使うことで、エンジニアの作業工数を最大40%削減できると見込む。
2024年6月20日に開催されたアマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)の年次イベント「AWS Summit Japan」で、PoC(概念実証)の成果として明らかにした。今後は実用上必要最小の機能を備えたサービスであるMVP(Minimum Viable Product)として、従業員向けのアプリケーションを開発する予定だ。
三菱電機の組み込みソフトの開発部門では、製品開発部門から改修依頼を受けると、改修対象のソフトウエアの仕様書を検索して改修内容に関連する記述を確認。それを基にソフトウエアのソースコードを確認し、ソースコードの中で改修依頼の内容に影響する範囲を特定している。従来は仕様書の影響範囲の調査に最もエンジニアの時間を取られていたという。
今回の取り組みでは、仕様書や設計書を含むソフトウエア開発関連のドキュメントを生成AIに解析させ、要約を出力させている。これをメタデータとして各ドキュメントに付与してPDFファイルとしてまとめた。こうすることで、改修内容に影響するドキュメントを特定する際の検索精度を向上させ、所要時間の短縮につなげた。
ドキュメントの要約には米Anthropic(アンソロピック)が開発した、テキストや画像などに対応するマルチモーダルのAIモデル「Claude 3」を用いた。Claude 3には米Amazon Web Services(AWS)の生成AIサービス「Amazon Bedrock」を通じてアクセスしている。
AWSのワークショップを通じて取り組みが本格化
三菱電機は2023年7月ごろから、生成AIを組み込みソフトウエアの開発に生かしたいという構想をAWSに伝えていた。生成AIを「ものづくりの領域に展開しようと考えた」(同社の田中昭二AI戦略プロジェクトグループプロジェクトマネージャー兼DXイノベーションセンター副センター長)ためだ。
取り組みが本格化したのは2023年11月ごろだ。AWSから、生成AIの用途などを検証する「生成AIディスカバリーワークショップ」の提案を受けた。
ワークショップではまず関係者へのヒアリングを通じて作業プロセスを洗い出し、課題やありたい姿を整理した。次に、誰がどの作業にどれだけの時間を掛けているかを定量的に算出した。そして、生成AIによって改善が見込める用途を絞り込んでいった。
検討の結果、最初のケースとして選んだのが、上述したソフトウエア改修時の修正対象の列挙や影響範囲の特定だった。2024年1月にPoCを始めた。