「生成AI(人工知能)への社内の関心が薄い」「ユーザー部門の技術力やリテラシーが不十分」「現行の仕事のやり方を変えたくないという風潮がある」――。生成AIの活用が遅れていると感じる日本企業の従業員がこうした不満を多く抱えていることが、日経BPによる調査で分かった。
調査は日経BPの各種媒体の読者など1450人を対象とし、2025年7月に実施した。本特集の第1回で紹介したように、日本企業の従業員が「我が社の生成AI活用は非常に進んでいる/進んでいる」と感じる割合は14.4%、「遅れている/非常に遅れている」と感じる割合は34.1%である。本調査ではそれぞれの回答者に、生成AI活用が進んでいる要因、遅れている要因も聞いている。
生成AI活用が「非常に進んでいる/進んでいる」とした回答者が「生成AI活用が進んでいる要因(複数回答可)」として挙げたのは、「作業が楽になるとの認識の広がり」が54.0%、「経営者のリーダーシップ・熱意」が52.0%、「成功事例(成功部署)の社内情報共有」が41.0%だった。
調査では「生成AIを活用して得られた成果や、期待できると感じた経験談」を聞いているので、生の声を紹介しよう。
プログラミングやソフトウエア開発で成果が上がったとの声
成果として最も多く挙げられたのは「プログラミングやソフトウエア開発支援」に関する経験談で、79件あった。
プログラミング初心者からは「Excel上のVBAをよく作成している。簡単なものなら10分程度で作れる」「マクロさえ作ったことがない社員でも、生成AIを使ってGAS(Google Apps Script)を作り業務を自動化している」といった活用事例が寄せられた。
さらに進んだ本格的な応用事例も寄せられている。「Cursorによってシステム構築の速度が著しく向上した」「コーディングAIエージェントがかなり良い精度で(プログラムの)改修作業を自律的に行っている」「古い開発言語で書かれ、読めなかったコードを刷新できた」「エラーコードの分析から解決までの作業効率化が実現した」といった内容だ。
「文書作成・要約」に関しては「メールの返信作成に使っている。文字で説明するのが難しく、文章にするのに苦慮していた内容であっても、まずGeminiに返信案を作らせ、それを修正することで作業が楽になった」「得意先への提案のベースとして活用している。そのままでは使えないが方向性や視座など参考になる点が多い」といった声が寄せられた。
「業務効率化・時間短縮」に関しては「Deep Researchによる調査業務は、自分で作業するのに比べて数時間単位での工数削減につながると期待を持てた」「FAQ(よくある質問)はAIを利用し、自動化、無人化した対応がされており、現在も部門ごとに積極的に採用が進んでいる」「人事労務への問い合わせ削減、AIが回答してくれる」といった声があがった。
翻訳や文章のチェックが大幅に効率化
「翻訳・語学支援」に関しては、「海外取引先へ英語でメールを送る際、Google翻訳などでは直訳になってしまいがちだが、生成AIでは『こういう内容でこういうニュアンスを伝えたい』とリクエストすれば英文を作成してもらえる。『もっと短く』『ビジネス向けに』などの追加リクエストで修正してもらえるのも助かった」と、具体的な使い方とその効果に関するコメントが寄せられた。
他にも「英文ドキュメントの和訳だけでなく、日本語のドキュメントやメールの英訳などにも役立つ」「専門論文の和訳や要約、引用元の提示で活用している」「海外企業との契約書において、内容を要約したり、懸念事項を列挙したり、知りたい箇所を探してくれたり、とにかく便利。英語が得意でなくても日本語でやり取りできる」などの声があった。
「文章の修正・推敲(すいこう)」に関しては「生成AIは十分に実用性が高く、質の向上に寄与していると感じた。表現の調整や構成の見直しなど、客観的な視点を得られる点が特に有効」「文章を批判的に評価する短評を生成させることで、 致命的なミスに気付けるようになった」「複数のAIを使用することで、内容を比較してより良い文章や内容へ作り替えることができた」という声が寄せられた。