デヴィッド・カープが、シリコンバレーのイデオロギーに基づくプロジェクトについて書くときのコツとして、明らかに不真面目なアイデアを真剣に書いてみせることと言い、これを「カーティス・ヤーヴィン問題」と呼んでいて笑ってしまった。
それはともかく、彼はこの文章で、『実在とは何か ――量子力学に残された究極の問い』(asin:4480860924)の邦訳があるアメリカのサイエンスライターであるアダム・ベッカーの新刊 More Everything Forever を取り上げている。
「AI オーバーロード、宇宙帝国、そして人類の運命を握るシリコンバレーの聖戦」という副題からもうかがえるが、シリコンバレーを思想的にけん引するエリエゼル・ユドコウスキー、ニック・ボストロム、レイ・カーツワイルといった人たちの「ビッグなアイデア」、そしてそれを支援するマーク・アンドリーセン、イーロン・マスク、サム・アルトマン、ピーター・ティールなどテックオリガルヒの主張をひとつひとつ丁寧に否定しているというのだ!
カープはこの本を、ティムニット・ゲブルとエミール・P・トーレスがTESCREALバンドルと呼ぶものを実にエレガントに解説していると評価している。
アダム・ベッカーは宇宙理論学の博士号を持っており、シリコンバレー思想の不真面目さを本気で潰さなければならないと危機感を持ったのではないか。そうした意味で、(カープも引き合いに出しているが)元々は宇宙への移住は可能というアングルで書き始めたが、調べれば調べるほど難しいというのが分かり、そういう結論になったケリー・ウィーナースミスとザック・ウィーナースミスの新刊に近いのかもしれない。
調べてみると、やはりエミコヤマさんが書評を書いていた。