エンジニアキャリアと敗者のゲームと勝者のゲーム
前置き
こんにちは。さすらいのデータエンジニアのこみぃです。
秋がギリギリその体面を保ちつつ、でも冬に移りつつある昨今ですが、いかがお過ごしでしょうか?
秋の夜長はポエムを読みたくなる季節ということで、今日は一風変わった記事をお届けしましょう。
勝者のゲームと敗者のゲーム
さて、まずはいきなり見慣れない概念から始めていきましょう。世の中には勝者のゲームと敗者のゲームという、2つのゲーム観の概念が存在します。
これは書籍「敗者のゲーム」に出てくる概念です。作中の例でそのまま解説します。
敗者のゲームとは、プレイヤーのどちらかがミスをして敗着を指すことで勝敗が決するゲームで、アマチュアのテニスがこれにあたります。プレイヤーはお互いにラリーを続けていきますが、どこかで一方がミスをすることで、ミスをしなかった方にポイントが入ります。この場合はいかにミスをしなかったかで勝負が決まることになり、敗者がゲームの結果を決めることになります。
勝者のゲームとは、プレイヤーが勝利をしにいくためにリスクを取った行動をし、それが実ることで勝敗が決するゲームです。プロのテニスはこれにあたります。プレイヤーは単純なラリーを続けている限りミスをすることはないので、どちらかがどこか(もしくは最初から?)でリスクを取ってスマッシュを打ち、それにより勝利を掴み取ることになります。この場合は勝者の行動がゲームを決定づけることになります。
ミスをしないように戦うことと、リスクを取って勝ちに行くこと。この2つの戦術はどちらかの戦術が優れているわけではなく場に応じて使い分ける必要があります。
ボードゲームは勝者のゲームか?それとも敗者のゲームか?
ここでボードゲームのお話をしてみます。
ボードゲームを行うと、あるゲームは完全にどちらかのゲームであることもありますが、大抵は2つの要素が同居しています。ここはテニスの例と同じですね。
ポーカーなどをイメージするとわかりやすいかもしれません。ポーカーはまずはセオリー通りにミスなくプレイすることで勝率が上がる敗者のゲームの要素を持ちつつ、そこに状況に応じて勝ちに行くためにリスクを取る勝者のゲームの要素が加わっていきます。
初心者と中級者がポーカーをやれば中級者は初心者の無理なレイズを冷静に咎めるだけで勝てるでしょうが、上級者同士の戦いではリスクを取ったブラフなどが勝敗を分けることでしょう(エアプです)
このように大抵のボードゲームの本質には勝者のゲームと敗者のゲームがあります。
私は趣味でマジック・ザ・ギャザリングというカードゲームをプレイするのですが、いつもそこそこの成績で終わっていた凡庸なプレイヤーだったのがある程度強豪くらいまでにはなれたのはこの考えに出会ったおかげです。
相手のミスを待ってカウンターを構えて負けるゲームのいくつかは積極的なタップアウトが実って勝利するゲームに変わり、勝率が上がっていったのです。他にもいっぱい改善したことはありますが、この記事ではこのくらいにしておきましょう。
このあたりは茂里さんという元プロプレイヤーの方の記事がありますので、そちらを読んでみてください。
ちなみに彼が最近出した著書もとてもおすすめです。興味があればこちらも手にとってみて下さい。
赤ずきんは眠らない
ボードゲームの例として、自分の体験で一番記憶に残っているものを挙げてみましょう。
「赤ずきんは眠らない」というゲームがあります。
このゲームは狼以外のプレイヤーは狼の襲撃に備えて罠を張るか、襲撃されてポイントを奪われるリスクを許容して眠ることでポイントを得るかを選びます。罠を張った場合には狼に襲撃されると撃退できますが、それ以外ではポイントを得られません。
敗者のゲームとしてプレイするなら罠を張って飛び込んでくる狼のミスを待つ戦術になりますし、勝者のゲームとしてプレイするならリスクを許容して眠る選択肢になるでしょう。
みんなでこのゲームをプレイしていると、プレイヤーによって勝者のゲームと敗者のゲームのどちらを志向するかが如実に現れます。
自分は過去に友人とプレイしたときに、1人だけ敗者のゲームとしてプレイしており、他のプレイヤーにリスクを取れない男だと大いにバカにされたことがあります。
もちろんそのゲームは盛大に負けました。誰も私を襲撃せず、にも関わらずせっせと罠を張り続けた私は一向に得点を得られなかったのです。
エンジニアキャリア
さて、いよいよ本題に入ります。
この概念は勝敗のあるゲームに寄らず一般的な事柄に広く適用できます。エンジニアのキャリア形成にも敗者のゲームと勝者のゲームが存在すると私は考えています。
エンジニアキャリアにおける敗者のゲームは尊敬できる上司のもとに師事し、与えられたタスクをこなしながら基礎的な知識を身につけていくような状況です。自分の能力を大きく超えるようなタスクに手を挙げることはしません。堅実である一方で見方によっては消極的でもあるでしょう。
エンジニアキャリアにおける勝者のゲームは未知の領域の仕事に手を上げたり、キャリアアップのために転職をしたりといった能動的なアクションをしてキャリアを切り開いていくことです。手痛い失敗をすることもあるでしょうが、うまく行けば良い未来が得られることでしょう。
転換点を見極める
過去の私が仕事でもマジック・ザ・ギャザリングでもそうだったという話なのですが、この敗者のゲームと勝者のゲームの転換点に気づかず、勝者のゲームをしなければ勝てない場面になっているのに敗者のゲームをしていて成果が出ない人をよく見ます。
こうなるとかなりつらい状況です。自分では正しくミスなく業務を行っているはずなのにどんどん状況が悪くなっていくのです。
でもこれはテニスに例えたらわかりやすい話です。相手のミスを待ってラリーを繰り返していても、相手がミスをしないレベルに到達していたらそのミスは一向に訪れません。そして相手のスマッシュをあなたが取れない可能性は、相手がスマッシュをミスする可能性よりも高いのです(相手はそう思ってるからスマッシュを打ってくるわけですから)
これまでのやり方で上手く行かなくなってきた、勝てなくなってきたのであれば、それはゲームの本質が変わっているのに気づいていないのかもしれません。
- 堅実に仕事をこなしているはずだが、何故か上司は物足りなそうな目でこちらを見る。
- 着実に与えられた業務はこなしているが、いまいちスキルが伸びずにキャリアに行き詰まりを感じる
そんな体験を自分自身がしていたり、している人を見かけたりしませんか?
繰り返しになりますが、どちらかの戦術が優れているとかではありません。この2つの要素を意識して行動を決めることが大切だということが言いたいのです。
学歴社会と敗者のゲーム
日本における高学歴という概念は、敗者のゲームの要素が強いと考えられます。自分自身も学歴社会に身をおいてきたので非常によくわかります。
大学受験は各大学ごとに正攻法の攻略法が存在するため、堅実にそれらを身につけてミスを減らした人が合格します。合格最低点よりも上の点数を取ればよいので、リスクを取って首席を狙いに行く必要はないのです。
社会に出てから「高学歴なのに使えないやつ」みたいなレッテルを貼られるパターンは、自他ともにこの転換点に気づいていないパターンであることが多いです。
会社や業界によってどちらのゲームを志向したほうが成果が出しやすいことが往々にしてあります。会社の理念やバリューとしてどちらかを求めてることもあります。
マッチしない戦術を取ってしまうとその会社ではパフォーマンスを発揮しづらいことになります。例えばベンチャー企業では勝者のゲームとしての振る舞いをしたほうが良いでしょうし、老舗の大手企業では敗者のゲームとしての振る舞いが好まれるかもしれません。
ボードゲームのすゝめ
さて、ここで再びボードゲームに話を戻しましょう。
今回お話している敗者のゲームと勝者のゲームは概念を理解した瞬間に明日から行動を変えられるというものではありません。勇気を持ってスマッシュを打てとベンチから指示が出たとしても、大抵の人はそんなことはできずラリーを続けてしまいます。
ボードゲームはこのような考え方を短い時間で体験し、試行錯誤を繰り返せるツールです。ボードゲームで負けたところで何も失うわけではないですし、結果としてうまくいったりうまくいかなかったりといったフィードバックもすぐに得られます。
感想戦ができるような相手であれば、強気にプレイしたらどうなっていたかなどを訪ねてみるのも良いでしょう。たまには相手が対抗策を持っていて通らないこともあるでしょうが、思ったよりもうまくいくことが多いことに気づくと思います。
それが強気な選択肢を選び、勝利を掴みに行く行動への慣れにつながります。
ボードゲームは他にも、情報が完璧じゃない状態で意思決定をする練習になったりなど学べる要素がたくさんありますので、非常におすすめです。
単純に人との交流にも良いツールで、ネットワーキングにも役立ちます。エンジニアはボードゲームが好きな人が多いので、ぜひ近くのコミュニティを探してボードゲームをしに行ってみて下さい。
もしくは声をかけてくれれば遊びに行きます。誘ってね。
弊社truestarでの働き方は?
さて、先程は会社や業界によってどちらのゲームを志向したほうが良いか変わることがあると述べたが、私の現職のtruestarではどうでしょうか(個人の感想です)。
弊社はまだまだ小さい会社で、自分の役割を守るというよりは落ちているボール(タスク)を積極的に拾ったりという姿勢が求められます。これは勝者のゲームの考え方に近いと思います(個人の感想です)。
個人的には、弊社に参画したときから勝者のゲームをしにいくつもりで転職していて、今のところはそのアプローチで楽しくやれています(個人の感想です)。
そんなtruestarに興味があれば、ぜひ求人に応募するかXなどで直接ご連絡をください。
ポエムあるいは一人語り(ここからは本当に100%個人の意見です)
ここまで「どちらかの戦術に優劣はない」という旨の話を書いていましたが、個人としてはエンジニアのキャリア形成はどこからか、それも早い段階で勝者のゲームになっていくと思っています。
- 日々生まれてくる新しい技術へのキャッチアップのために仕事に手を挙げるべきか?
- どの領域で自分の強みを持っていくか?
- 既存の強強エンジニアと自分の差別化をどうするか?
- どの会社で働くか?
このように能動的に自分から動かないといけないことが多く、これらの選択は勝利を掴みに行く勝者のゲームに性質が近いと言えます。
水星の魔女のスレッタのセリフである「逃げたら一つ、進めば二つ、手に入る」はだいたいそのとおりで、進んだほうが得るものが多い場面が多いと感じます。
これはエンジニアだけじゃなくてキャリア全般そういうものかもしれないのですが、そこは各業界のアニキアネキたちの考察に譲ろうとおもいます。ご意見待ってます。
私自身も、今はとにかく行動決定の基準を勝者のゲームに寄せています。
- 日々何もわからないタスクに手を挙げる(事業部のリーダーなので自分がやらないとどうしようもないですが、、、)
- 死ぬほど批判されるかもしれないけどブログを書いて自分の考えを公開する
- 海外のカンファレンスのCfPを出す
- 自分の英語があっているか自信がないけど堂々と発言する
このブログも、実は最初は12月の会社のアドベントカレンダーの記事として書いていたのですが、そのままストックとして保持しておくのは記事のネタを失わない安全な選択肢で弱者のゲーム、今とっとと出してしまってアドベントカレンダーには違う記事を書けばいいやと考えるのが勝者のゲームだと読みかえ、公開することにしました。

この記事公開時点で2025/11/12。まあ1ヶ月あればなんかネタくらい生まれるでしょう。
少なくともエンジニアは日々のキャリア形成において敗者のゲームと勝者のゲームという概念を認識し、どちらの行動も取れるようにしたほうがいいと思います。
そして、日頃から練習しておかないと勝者のゲームな行動を取れるようにならないので、ボードゲームなどの自分の趣味の領域から徐々に慣れていくのを本当におすすめします。
この文章を通じて本当に伝えたいこと
この文章を通じて本当に伝えたいのは、
あなたが勝者のゲームをするのが最善の状況にいるのかはわからないけれど、
あなたがもしなにか現状のキャリアに行き詰まりを感じていたり、このままだとだめだという不安だけは漠然とあるけど何をしていいかもわからないとしたら、
多分あなたは今までずっと敗者のゲームをプレイしていて、
勝者のゲームへの転換が必要な時期に、今まさに来ているんじゃないかな?
最後に
最後に改めて宣伝を。
truestarで私と一緒に勝者のゲームをしてみたいという方がいたら、ぜひ連絡をください。待っているよ。
本日のまとめ
そんなわけで、本日のまとめはこちらです。
進めば二つ
結びの言葉
本日はいつもの記事とは少し違うテイストでお届けしました。画面の前のアニキアネキたちのキャリア形成の考え方について参考になれば幸いです。
本日はこのあたりで。
それじゃあ、バイバイ!