高い利回りと手軽さから、新たな資産運用の選択肢として注目を集めていた不動産小口化投資商品「みんなで大家さん」。だが2024年6月に行政処分を受け、25年7月に分配遅延が発覚するなど、運営事業者やサービスをめぐるトラブルが話題になっている。今回はその内容について、過去記事から振り返ってみる。

トラブルが相次ぐ「みんなで大家さん」

 「みんなで大家さん」とは、不動産特定共同事業法に基づく不動産小口化商品だ。運営会社は共生バンクグループに属する都市綜研インベストファンド(大阪市)と、みんなで大家さん販売の2社で、100万円から参加できる手軽さなどから人気を集めてきた。

 一方、近年は契約書面の記載や説明の不備等を理由とする行政処分をきっかけとする解約が相次ぎ、さらに、みんなで大家さんの商品「成田シリーズ」の分配金の支払い遅延が判明するといったトラブルが発生し、事業者側が釈明に追われている。

 この記事では、みんなで大家さんをめぐる騒動とその影響について、最近の記事から注目していく。

「みんなで大家さん」行政処分で初日に400以上の解約請求

 24年6月17日に「みんなで大家さん」運営元への行政処分が公表された。理由は不動産特定共同事業法(不特法)違反だ。販売会社は東京都を相手に処分の取り消しを求める裁判を起こしているが、処分公表からわずか24時間で、470人あまりの投資家が解約を申し入れたという。

「みんなで大家さん」業務停止が再発効、行政側の即時抗告で

 「みんなで大家さん」側の訴えに対し、東京高裁は6月28日、大阪高裁は7月5日に、それぞれ行政処分の追認を決定。これにより運営会社の都市綜研インベストファンドと、みんなで大家さん販売は、7月20日まで資金募集活動を停止することとなった。

みんなで大家さん、2000億円投資マネーの行方

 みんなで大家さん販売が、24年7月31日にロンドン株式市場の上場承認を得たという。行政処分の解除からわずか10日、しかも行政訴訟や解約請求が続く渦中での上場だ。だが解約申し入れの総額は100億円を優に超えると見られているが、今後の財務状況への影響は不明瞭なままだ。

「みんなで大家さん」デラウェア資本登場の不可解、個人投資家の悲鳴は届かず

 投資家からの解約請求に対して、「みんなで大家さん」側の反応は鈍い。「担当者の対応からは全く誠意が感じられない。本当に返す気があるのかも疑わしくなってくる」という声も聞かれる中、運営会社からは返金の連絡はおろか、説明会の開催予定もないままだという。

みんなで大家さん、成田プロジェクト売却の遅れを釈明

 米ファンドへの売却を目指していた、「みんなで大家さん」の成田プロジェクトだが、24年12月19日時点で交渉は難航している。都市綜研インベストファンドは投資家に対し、「取引が成立しない場合もある」とメールで通知したという。

「みんなで大家さん」成田借地問題、迷走と先送りの顛末(てんまつ)

 混乱が続く「みんなで大家さん」の成田プロジェクト。借地契約期間満了が25年3月末に迫り、プロジェクトの中止も懸念されていた。地権者の成田国際空港株式会社は契約延長を決定したが、延長期間はわずか8カ月に過ぎない。

「みんなで大家さん」成田ファンドの配当を停止

 混乱続きの「みんなで大家さん」の成田プロジェクトで、25年7月31日、新たに分配金の支払い遅延というトラブルが発覚した。事業者側は「早ければ8月に再開を目指す」と説明するものの、実現は不透明な状況だと見られている。

みんなで大家さん、成田ファンド配当再開は見通せず

 「みんなで大家さん」を運営する共生バンク代表の栁瀨健一氏は投資家向けに、動画メッセージを25年8月22日深夜に公開。成田プロジェクトの分配金遅延問題について謝罪した。そこで「配当の原資として今月の支払いに間に合うように、最善の努力を続けている」とした。一方で、解約については、申し込みが多発しており、一時的に受け付けていないと説明した。

最後に

 行政処分にプロジェクト中止の危機、分配金の支払い遅延など、次から次へとトラブルに見舞われる「みんなで大家さん」。投資家の中からは不安や不満、怒りの声も聞かれる。事業者側の対応はもちろん、関連する企業や行政の動きにも、引き続き注目していきたい。

  • みんなで大家さん、成田ファンド配当再開は見通せず

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