いわゆる“独身税”が炎上している。

 2026年4月から導入予定の「子ども・子育て支援金制度」について、「私たちは負担だけで恩恵がない!」と独身者や子育てを終えた世代が反発。7.3兆円もの予算がありながら、こども家庭庁が新たな税負担を強いることに納得がいかない人たちは、「少子化対策失敗のつけを払うのに独身者を巻き込むな!」と息巻く。

 一方で、三原じゅん子こども政策相は25年6月10日の記者会見で、「こども家庭庁としては『独身税』を導入することは考えてない」と否定した。いわく「子どもたちはいずれ大人になり、社会保障の担い手となる。独身の方を含めた全ての世代にメリットがある」らしい。

 ついにここまで来てしまったか、というのが個人的な実感である。

 政府が13年3月に「少子化危機突破タスクフォース」なるものを立ち上げて以来、若い女性たちは「働けや産めや」と結婚十訓(1939年に政府が発表した優生政策)並みの圧をかけられ、かたやある大物女性作家は「出産したら女性は会社をお辞めなさい」とワーキングマザーを糾弾した。

 16年には某中学校の校長先生が「女性にとって最も大切なことは、子どもを2人以上生むことです」などと発言し、某局のアナウンサーの女性は「もう子どもを授からない私たちは、社会の良い“捨て石”となるしかない」と涙を浮かべ訴えた。最近では「子持ち様」という言葉が、子育てのため会社を頻繁に休んだり早退したりする社員をやゆする言葉として使われている。

 子どもを授かること、子どもを産むこと、子どもを育てること。どれもこれも尊い、かけがいのない幸せな経験なのに、なぜ、こんなにもバトルが繰り返されてしまうのか。しかも、30代の女性たちから聞こえてくるのは、決して職場では言えない個人的な悲鳴や葛藤ばかり。その深刻度が以前より増しているように思えてならない。

 むろん「家事・育児・仕事もできて当たり前」の時代に生きる男性の悲鳴もある。が、それらの多くは家庭と職場の板挟み問題がほとんどで、「大変ね、がんばって!」と笑って励ませばなんとかなるレベルといえよう。なんてことを書くと「若い男性の気持ちを分かってない!」と怒られそうだが、今回は「若い女性が決して会社では言えない“問題”」について、あれこれ考えてみる。

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