SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

Developers X Summit 2024 セッションレポート

旭化成のDXエキスパート 西野大介氏が語る、大企業で働くITエンジニアの生存戦略

【Session4】大企業で働くエンジニアの生存戦略~技術選定スキルとビジネスに飛び込むキャリア~


  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 大企業における技術選定は、単なる判断ではなく、組織全体に影響を及ぼす戦略的なスキルである──2024年11月14日に開催した大企業で働くITエンジニアを対象とした「Developers X Summit 2024」で登壇した旭化成株式会社の西野大介氏は、「大企業で働くエンジニアの生存戦略」をテーマに、エンジニアが持つべき技術選定の軸とその社内への浸透方法、さらにそれがもたらすキャリアパスへの効果について、具体的な事例を交えながら詳しく解説した。

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

わずか7%……「企業にはIT部門が不可欠」と言えないワケ

 旭化成は1922年設立の大手総合科学メーカーで、売上高約2兆7000億円、従業員数約4万人を誇る。「マテリアル領域」「住宅領域」「ヘルスケア領域」の3本柱で事業を展開し、「サランラップ」や「ヘーベルハウス」などの製品を手がけている。2016年から同社が進めるDXでは2021年以降4年連続で「DX銘柄」に選定されるなど高い評価を得ている。西野氏は2023年に旭化成に入社し、DX推進を担い、デジタル開発支援や人材育成を実施するエキスパートとして活躍している。

従業員全員のデジタル人材化を目指す旭化成
従業員全員のデジタル人材化を目指す旭化成

 西野氏は、大企業で働くエンジニアの生存戦略を語るにあたり、まずIT部門の課題を挙げた。ある調査によれば、多くの経営トップがIT部門を「ビジネス拡大に寄与していない」と見なしており、「不可欠な存在」と考える人はわずか7%、「利益を生み出すプロフィットセンター」と評価する人は3%にとどまった。この結果は、IT部門が依然としてコストセンターとみなされ、経営拡大への関与が限定的である現状を示している。西野氏は、これが「IT部門不要論」といった否定的な意見を招いていると指摘した。

旭化成株式会社 デジタル共創本部 DX経営推進センター デジタルタレント戦略部 DX企画推進グループ長/エキスパート(デジタルイノベーション領域)西野 大介氏
旭化成株式会社 デジタル共創本部 DX経営推進センター デジタルタレント戦略部 DX企画推進グループ長/エキスパート(デジタルイノベーション領域)西野 大介氏

 次に、その一因として「丸投げ体質」を挙げた。多くの大企業では、ビジネス部門がIT部門に業務を任せ、さらにIT部門が外部委託先に作業をそのまま依頼する構造が根強く残っている。この結果、過剰なカスタマイズが生じ、コストが膨らみ、IT部門がプロフィットセンターとして評価されにくくなっている。

 西野氏はエンジニアの失業率が高水準に達している現状にも言及した。転職サービスで「キャリアの棚卸し」が取り上げられる一方、大企業で働くエンジニアは外部依存や自社固有の業務に偏りがちで、スキルの可搬性が低い。その結果、自分のスキルがわからず、「何ができるのか」と悩む声も多い。

専門領域である技術選定から社内浸透をする活動を経てキャリアパスにつながる
専門領域である技術選定から社内浸透をする活動を経てキャリアパスにつながる

 西野氏は、生存戦略の3ステップとして、エンジニアが持つべき「技術選定」の軸、それを「社内浸透」させるプロセス、そしてその結果形成される「キャリアパス」があると述べた。また、「技術選定やキャリアパスのテーマでは議論が広がりがちですが、その中で『何を軸として持つべきか』というエッセンシャル思考が重要です。この後度々出てきますが、キーワードは『原点に立ち返る』ということです」と話を進めた。

会員登録無料すると、続きをお読みいただけます

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

次のページ
ゼロトラストは2世紀前からあった? 技術選定の軸を歴史に学ぶ

この記事は参考になりましたか?

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
Developers X Summit 2024 セッションレポート連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務やWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業。編集プロダクション業務においては、IT・HR関連の事例取材に加え、英語での海外スタートアップ取材などを手がける。独自開発のAI文字起こし・...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

山出 高士(ヤマデ タカシ)

雑誌や広告写真で活動。東京書籍刊「くらべるシリーズ」でも写真を担当。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)

CodeZineは、株式会社翔泳社が運営するソフトウェア開発者向けのWebメディアです。「デベロッパーの成長と課題解決に貢献するメディア」をコンセプトに、現場で役立つ最新情報を日々お届けします。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

  • X ポスト
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
CodeZine(コードジン)
https://codezine.jp/article/detail/20617 2025/05/29 12:09

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

CodeZine編集部では、現場で活躍するデベロッパーをスターにするためのカンファレンス「Developers Summit」や、エンジニアの生きざまをブーストするためのイベント「Developers Boost」など、さまざまなカンファレンスを企画・運営しています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング