鮮やかなピンク色をしたロゼワインはランチやカジュアルなパーティーのときに飲む手軽なワインとのイメージがあり、値段も比較的手ごろなものが多い。しかし、ことシャンパーニュに限れば、ロゼはしばしばメゾン(生産者)の顔の役割を果たし、値段も他のキュヴェ(銘柄)に比べて高いという例が珍しくない。もちろん、それには正当な理由がある。そして、その理由こそロゼシャンパーニュの魅力の源泉でもある。
2024年秋の話になるが、大手メゾンの1つ、ルイ・ロデレールの最高幹部2人が来日し、試飲会を開いた。最高幹部の1人は現当主のフレデリック・ルゾーさん。もう1人は副社長兼醸造責任者のジャン・バティスト・レカイヨンさんだ。来日の目的は同メゾンの最高峰「クリスタル・ロゼ」の誕生50周年に合わせ、同キュヴェの魅力を日本のワイン愛好家に改めて伝えることだった。

「クリスタル・ロゼ」を手にしたルイ・ロデレールのフレデリック・ルゾー当主(左)とジャン・バティスト・レカイヨン副社長
ロシア皇帝に寵愛されたシャンパーニュ
クリスタルは言わずと知れたルイ・ロデレールのプレステージキュヴェ(最高級銘柄)。ルイ・ロデレールのシャンパーニュを寵愛(ちょうあい)していたロシア皇帝アレクサンドル2世が自身の力を誇示するため、ルイ・ロデレールの創業100周年に当たる1876年に造らせたのがクリスタルだった。
以来、クリスタルはシャンパーニュを代表するワインの一つとして市場に君臨してきた。当然、値も張る。「クリスタル2015(白)」は、日本では1本5万7200円(税込み)で売られている。しかし、そのクリスタルを上回るキュヴェがルイ・ロデレールにはある。それがクリスタル・ロゼだ。「クリスタル・ロゼ2014」は1本11万4400円(同)とクリスタルの2倍もする。

ルイ・ロデレールの「クリスタル・ロゼ」
口の中で消えない余韻 和食にも合う
値段は伊達ではない。試飲会ではコースの和食料理に合わせてビンテージ(生産年)が違う3種類のクリスタル・ロゼ「クリスタル・ロゼ2014」「クリスタル・ロゼ2008マグナム」「クリスタル・ロゼ1996マグナム」が順に提供された。マグナムは容量が通常の2倍、1500ミリリットルのボトルだ。

和食にも合う「クリスタル・ロゼ」
3本はいずれも熟した果実の香りがぎっしりと詰まり、シャンパーニュ特有のブリオッシュの香り、熟成から来るトリュフやナッツのような複雑な香りが味わいに厚みを加え、口の中でなかなか消えない余韻が印象的なワインだった。その中でも最も驚かされたのは1996年のビンテージだった。