ビッグサイズな時計のブームは沈静化し、昔ながらの小ぶりのケースが時計界のトレンドとなっていることはご承知の通りです。中でも最近センスのいい人たちの袖口で目立つのが、アールデコスタイルのドレッシーな角形時計です。
時計好き、洋服好きの双方から支持される東京・吉祥寺のアンティーク時計店「江口時計店」の店主、江口大介さんも次のように語ります。
装いをモダンに彩る 直線的なデザイン
「昔は1本目の時計に角形を選ぶ人は少なかったのですが、当店ではカルティエの古いタンクなどを最初の本格時計として選ぶ人が増えています。時計の主流は懐中時計の時代からラウンドケース。だからいい意味での違和感があり、個性を表現したい方々にはそこが刺さるのかもしれません。直線基調のミニマルなデザインは、装いにスマートさやモダンさを添えるアクセントにもなります。服好きの方々はそうしたファッション的な側面からも角形時計に注目しているようです」
小ぶりでも一定の主張感があり、着用者を知性的に、あるいはどこかアーティスティックな雰囲気に見せてくれるのも角形時計のいいところ。カルティエのタンクを愛したアラン・ドロンにならえば、大人の色気を醸すアイテムとしても活躍してくれそうです。
おそらく読者には丸型ケースの時計しか持っていないという方が大半でしょう。簡単に非凡なセンスを見せつけられるドレスな角形時計、狙ってみませんか?
ドレスな角形時計 おすすめ5選
マスキュリンかつフェミニンな魅力際立つ新たな「フランセーズ」
カルティエ
タンク フランセーズ

「タンク フランセーズ」 ケース:32×27㎜、ステレンレススチール、日常生活防水、駆動装置:クオーツ、ブレスレット:ステンレススチール、価格:66万円
角形時計の傑作として多くの人が真っ先に思い浮かべるのが、ルイ・カルティエのデザインにより1917年に生まれた「タンク」でしょう。英軍の戦車(タンク)からインスパイアされた直線基調のケースは明らかに当時の最先端を突っ走ったもので、上流階級の間でたちまち大ヒット。後にアールデコと呼ばれる新たな芸術様式の先駆けとなりました。以後多彩なバリエーションを生みながら、王侯貴族をはじめ、政治家、芸術家、俳優にスポーツ選手と、時代時代の各界セレブリティーたちを次々と虜(とりこ)にしていったのです。
「タンク フランセーズ」は、そんな「タンク」に初めてメタルブレスレットを装着したコレクションです。1996年の誕生以来、ずっとスタイルを変えていませんでしたが、2023年ついにフルモデルチェンジを敢行。従来は、どちらかといえば女性好みの美麗なブレスレットウオッチのイメージだったのに、3サイズすべてが一回りサイズアップしたほか、随所のディテールを細やかにアップデートしたことで、「マスキュリン(男性的な)にしてフェミニン」というタンク本来の魅力が一層際立つ仕上がりとなっています。エンドピースの改良によって絶妙に丸みをもたせたケースとブレスがシームレスにつながったことで、ちょっとはやりのラグジュアリースポーツ時計のような雰囲気をたたえているのもいいですね。
ちなみに上で紹介したのは32×27㎜のミディアムモデル。自動巻き搭載のラージモデル(36.7×30.5㎜)も魅力ですが、手首をより今らしく彩りたいのなら、ジェンダーレスなこのサイズ感がベストと筆者は考えます。