日本と中国の緊張状態が続いている。ICU教授(政治学・国際関係)のスティーブン・R・ナギさんは「2026年も中国は日本に圧力をかけ続けるだろう。その内容は、日本人の生活経済に大きなダメージを与えるインパクトを持つ。日本人はかつての阪神淡路、東日本といった大震災での被災の知恵も生かして、備蓄をするべきだ」という――。
令和7年10月31日(現地時間)、APEC首脳会議に出席するため韓国を訪問中の高市総理は、中華人民共和国の習近平総書記(国家主席)と首脳会談を行った
令和7年10月31日(現地時間)、APEC首脳会議に出席するため韓国を訪問中の高市総理は、中華人民共和国の習近平総書記(国家主席)と首脳会談を行った(写真=内閣官房内閣広報室/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

追い詰められた中国が外に牙を剥く可能性

2025年の暮れを迎え、習近平体制下の中国は歴史的な経済危機の真っ只中にある。

国際金融協会(IIF)の最新報告によると、習近平が権力を握った2012年以降、中国から流出した資本は実に15兆2000億ドル(約2300兆円)。2024年だけでも1兆3000億ドル(約195兆円)が国外へ逃げた。若者の失業率は政府発表でさえ20%を超え、かつてGDPの3割を占めた不動産セクターは、今や政府主導で解体が進んでいる。

こうした内憂を抱える中、習近平の対日姿勢は日増しに強硬になっている。2026年、この地域にかつてない緊張が走る可能性は決して低くない。

すでにその兆候は表れている。

高市早苗首相が「台湾の安全は日本の安全に直結する」という至極まっとうな認識を示しただけで、北京の反応は異常だった。大阪の中国総領事は「首相の首を切り落とす」と脅迫まがいの発言をし、中国国営メディアは突如として沖縄の主権に疑義を呈し始め、12月の日中間フライトは4割も削減された。

これらは通常の外交的抗議の域を超えている。明らかに計算されたエスカレーションであり、日本の覚悟を試すと同時に、中国国内の混乱から目をそらさせる狙いが透けて見える。

ハーバード大学のラナ・ミッター教授は近著で、経済的に追い詰められた時の中国は「戦略的忍耐」を失いやすいと分析している。GDP成長率が5%を割り込み、地方政府の債務が1500兆円を超える今、習近平は戦略家たちが「不安の悪循環」と呼ぶ状況、つまり内政の失敗が対外強硬策を誘発する負のスパイラルに陥っているのかもしれない。