強引さを繕うように自画自賛を並べたてたが、国民生活に直結する新年度予算案の成立を後回しに、なぜ総選挙なのか。「大義」は見えなかった。
高市早苗首相がきのう、23日召集の通常国会の冒頭で衆院を解散すると表明した。27日に公示、2月8日の投開票は、解散から16日後で戦後最短になる。
政権が、初めて編成した新年度予算案や施政方針さえ国会で示さないままの解散は、極めて異例の事態である。
高市氏は記者会見で、理由について、日本維新の会と連立した政権枠組みの変更や、「積極財政」など重要政策の「大転換に国民の信を問う」と説明。「与党で過半数」を目標に掲げて「進退をかける」とした。
肝心のなぜ今かは釈然としない。昨秋の新たな連立時から「経済優先」を掲げ、野党の減税策ものみこみ「一日も早い効果実感を」としてきたはずだ。
解散で約1カ月も「政治空白」が生じ、年度内の予算成立は困難になる。先月の補正予算成立で、物価高対策など「万全の態勢を整えた」と言うが、生活関連施策に遅れや混乱が生じることは避けられまい。
何より問題なのは、政権の「不安定な現状を痛いほど実感した」としながら、なぜそうなったかの原因と対応に、相変わらず向き合わないことである。
衆・参院選で与党が大敗したのは、自民党裏金事件が招いた政治不信が大きい。全容解明にも、再発防止のための法改正にも高市氏は後ろ向きのままだ。
自身が代表の自民支部が上限を超える企業献金を受けていたと判明。不正の温床となった資金パーティーを6県連が再開、「裏金議員」公認や比例重複立候補も解禁する方向という。
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係を巡る疑惑を含め、国会審議での追及を避け、不意打ちの選挙で「みそぎ」にするつもりとしか見えない。
通常国会の冒頭解散は、過去に1966年の佐藤栄作首相の「黒い霧解散」のみ。歴代政権は予算審議と執行を重視して避けてきた。憲政の常道から外れ、国会軽視と言うほかない。
首相交代の刷新感や期待先行で支持率が高く、野党の態勢が整わないうちに政権強化を狙う党利優先が目に余る。
対する立憲民主党と公明党は新党「中道改革連合」を結成した。綱領で「生活者ファースト」を掲げ、食料品の消費税廃止などを盛る。
この動きを高市氏は「国民不在、選挙目当て、永田町の論理」と批判したが、そのまま跳ね返ってこよう。
与党側でも連立合意の時限的な食料品非課税の制度設計に意欲を示し、与野党で減税合戦の様相さえある。財源なき拡張財政への懸念から市場の国債売りが進む。将来の選択肢や災害への財政余力を確保する責任ある公約と論戦が求められよう。